この記事でわかること
- F分布表の列(分子の自由度)と行(分母の自由度)の読み方
- 5%表と1%表の使い分けと、自由度を入れ替えたときに起きること
- 分散分析と分散の比の検定での使い方と、ExcelのF.INV.RT・F.DIST.RTで同じ値を求める手順
📌 前提知識:t分布表の見方|自由度と両側・片側の読み方とExcelを読んでいると理解しやすくなります
焼入れの温度を3通りに変えて、それぞれ5個ずつ部品の硬さを測りました。分散分析表を作ると、F0 の欄は7.12。教科書の巻末のF分布表と比べれば結論が出るはずですが、表を開くと自由度が縦にも横にも並んでいて、どこを見ればよいのか迷います。
F分布表は、t分布表と違って自由度が2つあります。どちらを行に、どちらを列に当てるかを間違えると、まったく違う値を読んでしまいます。この記事では、F分布表の読み方を例題の数字で確かめ、Excelで同じ値を出す手順まで整理します。
F分布表を使う場面
F分布表は、2つの分散の比が偶然の範囲かどうかを判断するための表です。次のような場面で使います。
- 分散分析で、因子の効果があるかを判定するとき。分散分析表の F0(因子の分散÷誤差の分散)と比べます
- 2台の設備、2つのロットなどで、ばらつきに差があるかを調べるとき
- 回帰分析で、回帰式全体に意味があるかを確かめるとき
2つのグループの平均の差を調べるときは、F分布表ではなくt分布表を使います。3つの分布の使い分けの全体像はχ²・t・F分布の使い分け|検定でどれを使う?にまとめています。
F分布表の読み方|列は分子、行は分母の自由度
F分布表は、列が分子の自由度 \( \phi_1 \)、行が分母の自由度 \( \phi_2 \) になっている形が一般的です。表の中の数字は、その自由度のF分布で上側の確率がちょうど5%になる値(上側5%点)です。次は上側5%点の一部です。
| φ2(分母)\φ1(分子) | 1 | 2 | 3 |
|---|---|---|---|
| 5 | 6.608 | 5.786 | 5.409 |
| 8 | 5.318 | 4.459 | 4.066 |
| 10 | 4.965 | 4.103 | 3.708 |
| 12 | 4.747 | 3.885 | 3.490 |
| 15 | 4.543 | 3.682 | 3.287 |
| 20 | 4.351 | 3.493 | 3.098 |
| 30 | 4.171 | 3.316 | 2.922 |
読み方は3ステップです。
- 分子の自由度 φ1 で列を選ぶ。分散分析なら因子の自由度(水準の数−1)です
- 分母の自由度 φ2 で行を選ぶ。分散分析なら誤差の自由度です
- 有意水準に合った表を使う。F分布表は5%と1%で別の表(別のページ)になっているのが普通です
φ1=2、φ2=12 なら、5%表の値は 3.885 です。F0 がこれより大きければ、5%で有意と判断します。1%表では同じマスが6.93です。
分子と分母を入れ替えると値がまったく違う
F分布は、分子と分母の自由度を入れ替えると別の分布です。φ1=2・φ2=12 の上側5%点は3.885ですが、φ1=12・φ2=2 では19.41です。表を縦横逆に読むと、判断を誤ります。この例のように、本当は有意な結果を「有意でない」としてしまうことがあります。
分散分析表では、F0 の分子が因子、分母が誤差です。「列は因子、行は誤差」と覚えておくと間違えません。ただし、表によっては行と列が逆のものもあるので、表の見出しの φ1・φ2 の位置を最初に確かめてください。
表にない自由度(たとえば φ2=25)のときは、前後の行の値から見当をつけるか、Excelで正確な値を出します。φ1=2・φ2=25 の上側5%点は3.385で、φ2=20 の3.493と φ2=30 の3.316の間に入ります。
例題1|分散分析のF0を表と比べる
冒頭の焼入れの例で、実際に表を使ってみます。3つの温度条件で硬さ(HRC)を5個ずつ測った結果です。
| 条件 | 硬さ(5個) | 平均 |
|---|---|---|
| A1 | 57.8, 58.2, 58.0, 57.6, 58.4 | 58.0 |
| A2 | 58.6, 58.9, 58.3, 59.0, 58.7 | 58.7 |
| A3 | 58.1, 58.5, 57.9, 58.6, 58.4 | 58.3 |
総平均は58.333です。条件の違いによる平方和 S_A は1.2333、各条件の中のばらつき(誤差)の平方和 S_E は1.0400です。自由度はそれぞれ 3−1=2 と 15−3=12 なので、分散と F0 は次のとおりです。
\[ F_0 = \frac{V_A}{V_E} = \frac{1.2333 / 2}{1.0400 / 12} = \frac{0.6167}{0.08667} = 7.12 \]
Excelでは、データを3列に並べて「データ分析」の「分散分析: 一元配置」を使うと、この F0 が表に出ます。V_A と V_E がわかっていれば =0.6167/0.08667 でも求まり、p値は後の節の =F.DIST.RT(7.115,2,12) で出せます。手順はExcelで分散分析で解説しています。
φ1=2・φ2=12 の5%表の値は3.885、1%表の値は6.93です。F0=7.12 はどちらよりも大きいので、1%で有意、つまり焼入れの温度によって硬さが変わるといえます。結論の書き方は、5%と1%の両方を比べて「1%で有意」と書くのが品質管理の報告では一般的です。
分散分析の計算の流れは一元配置分散分析を例題で解説で詳しく扱っています。
例題2|2台の設備のばらつきを比べる
2台の研削盤で加工した軸の外径を測ると、設備Aは10個で標準偏差0.042mm、設備Bは8個で0.025mmでした。Aのばらつきは本当に大きいのでしょうか。
分散の比の検定では、大きいほうの分散を分子に置きます。自由度は φ1=10−1=9、φ2=8−1=7 です。
\[ F_0 = \frac{s_A^2}{s_B^2} = \frac{0.042^2}{0.025^2} = \frac{0.001764}{0.000625} = 2.82 \]
Excelで生データから出すなら =VAR.S(Aの範囲)/VAR.S(Bの範囲)、今回のように標準偏差しかわからないときは =0.042^2/0.025^2 で F0 が求まります。
ここで注意が要ります。「AとBでばらつきが違うか」を調べるのは両側の検定なので、5%で判断するなら上側2.5%点と比べます。φ1=9・φ2=7 の上側2.5%点は4.823で、F0=2.82 はそれより小さいため、5%で有意な差があるとはいえません。標準偏差で1.7倍の差があっても、10個と8個では偶然の範囲に入るということです。
手元に上側5%点の表しかないときに、その値と比べて判断すると、両側5%ではなく片側5%の検定をしたことになる点に注意します。「Aのほうがばらつきが大きいか」を事前に決めて調べるなら片側でよいのですが、データを見てから大きいほうを分子に置いた場合は両側で判断します。ばらつきの比較のしかたはF検定とt検定の違いと使い分けで解説しています。
ExcelでF分布表の値を求める
Excelを使えば、表を開かずに同じ値が出せます。表にない自由度でも正確な値が出るので、実務ではこちらが便利です。
| 求めたいもの | Excelの式 | 結果 |
|---|---|---|
| 上側5%点(φ1=2、φ2=12) | =F.INV.RT(0.05,2,12) | 3.885 |
| 上側1%点(φ1=2、φ2=12) | =F.INV.RT(0.01,2,12) | 6.927 |
| 上側2.5%点(φ1=9、φ2=7) | =F.INV.RT(0.025,9,7) | 4.823 |
| F0=7.115 の上側確率(p値) | =F.DIST.RT(7.115,2,12) | 0.0092 |
F.INV.RT関数は(上側の確率, 分子の自由度, 分母の自由度)の順に指定します。表と同じく、自由度の順番を入れ替えると別の値が返ります。F.DIST.RT関数で出したp値が0.05より小さければ5%で有意、0.01より小さければ1%で有意です。例題1のp値は0.0092で、表で判断した「1%で有意」と一致します。
両側の検定のp値は、上側確率を2倍して出します。例題2なら =2*F.DIST.RT(2.82,9,7) → 0.185 で、0.05より大きいので有意ではありません。元のデータが2列に並んでいれば、=F.TEST(範囲1,範囲2) で両側のp値を直接出すこともできます。
よくある質問
Q. F分布表の列と行は、どちらがどちらの自由度ですか?
A. 列が分子の自由度 φ1、行が分母の自由度 φ2 の表が一般的です。分散分析なら、列は因子の自由度、行は誤差の自由度です。表によっては逆のものもあるので、見出しの φ1・φ2 の位置を最初に確かめてください。
Q. F分布表に下側の値が載っていないのはなぜですか?
A. 下側の値は、分子と分母の自由度を入れ替えた上側の値の逆数で求まるからです。φ1=9・φ2=7 の下側2.5%点は、φ1=7・φ2=9 の上側2.5%点4.197の逆数で約0.238です。大きいほうの分散を分子に置けば、上側の表だけで判断できます。
Q. 表にない自由度のときはどうしますか?
A. 前後の行の値から見当をつけるか、Excelの F.INV.RT 関数で正確な値を出します。φ1=2・φ2=25 の上側5%点は3.385で、φ2=20 の3.493と φ2=30 の3.316の間に入ります。
Q. 5%表と1%表はどう使い分けますか?
A. 有意水準をあらかじめ決めておき、その表で判断するのが基本です。品質管理の報告では、F0 を5%と1%の両方の値と比べ、「5%で有意」「1%で有意」と書き分けることがよくあります。
📚 この記事の内容をもっと深く学ぶ
まとめ
- F分布表は、列が分子の自由度 φ1、行が分母の自由度 φ2 で、中の数字は上側の確率に対応する値(上側5%点など)
- 分子と分母を入れ替えると値が大きく変わる。φ1=2・φ2=12 は3.885、φ1=12・φ2=2 は19.41
- 例題1の分散分析では F0=7.12 が5%表の3.885、1%表の6.93のどちらも超え、1%で有意だった
- ばらつきの比較は両側の検定。大きいほうの分散を分子に置き、上側2.5%点と比べる。例題2は F0=2.82<4.823 で有意ではない
まとめると、分散分析の判定は5%表と1%表で、ばらつきの比較は上側2.5%点で、表にない自由度やp値はExcelの F.INV.RT・F.DIST.RT で、という使い分けです。手元の分散分析表の F0 を、まず自由度の向きを確かめてから表と比べてみてください。
同じシリーズの表の読み方は正規分布表の見方|上側確率の読み方とExcelでの求め方とt分布表の見方|自由度と両側・片側の読み方とExcel、自由度の考え方は自由度とは、1つの母分散の検定は母分散の検定・推定|χ²分布とExcel計算で解説しています。

