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CpkとPpkの違い|短期・長期の工程能力の使い分け

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この記事でわかること

  • CpkとPpkの違い(群内ばらつきと全体ばらつき)
  • 両者の計算手順と、差が意味すること(工程のドリフト)
  • ExcelでのPpk計算と、PPAPでPpkが求められる理由

📌 前提知識:工程能力指数(Cp・Cpk)の計算とExcelでの求め方を読んでいるとスムーズです

顧客への初回量産承認(PPAP)の資料で「Ppk 1.33以上を提出」と指定され、社内で普段管理しているCpkとは別物だと気づいて慌てた。自動車部品などの現場でよくある場面です。CpkとPpkはどちらも工程能力を表しますが、使うばらつきが違い、値もずれます。

結論を先に言うと、Cpkは群内(短期)のばらつき、Ppkは全体(長期)のばらつきで計算します。そして両者の差は、工程が時間とともにどれだけドリフトしたかを表します。この記事では、加工寸法の群データを使って計算の違いと解釈を整理します。

CpkとPpkを使う場面

使い分けの原則は次のとおりです。

  • Cpk(工程能力指数):工程が安定している前提で、その工程の「実力(ポテンシャル)」を評価するとき。日常の工程管理で使うのはこちら
  • Ppk(工程性能指数):一定期間の全データをまとめて、実際に出た「performance(実績)」を評価するとき。PPAP・初期流動・工程監査で求められることが多い

ここで前提条件に注意が必要です。Cpkは工程が統計的管理状態にある(管理図で異常がない)ことが前提です。管理外れの工程でCpkだけ見ると、実力を過大評価します。一方Ppkは管理状態を前提としないので、ドリフトや異常も含んだ「ありのまま」の性能を示します。

工程が安定しているかどうかは、まずX-R管理図で確認します。管理図で安定を確認してからCpk、というのが正しい順番です。

違いは「どの標準偏差を使うか」

CpkとPpkの式は同じ形で、分母の標準偏差だけが違います。

\[C_{pk} = \min\left(\frac{USL-\bar{\bar{x}}}{3\sigma_{within}}, \frac{\bar{\bar{x}}-LSL}{3\sigma_{within}}\right)\]

\[P_{pk} = \min\left(\frac{USL-\bar{\bar{x}}}{3\sigma_{overall}}, \frac{\bar{\bar{x}}-LSL}{3\sigma_{overall}}\right)\]

Cpk(群内・短期) Ppk(全体・長期)
使う標準偏差 群内ばらつき σwithin 全体ばらつき σoverall
σの求め方 R̄ ÷ d₂(群の範囲から推定) 全データの標本標準偏差
捉えるもの その瞬間の工程の実力 ドリフトも含んだ実績

σwithinは各群(同じ時間帯にまとめて取ったデータ)の中のばらつきだけを見ます。群と群の間の変動(時間経過による平均の移動)は含みません。一方σoverallは全データをひとまとめにするので、群間の移動も丸ごとばらつきとして拾います。

だから工程が時間とともにドリフトしていると、σoverall > σwithin となり、Ppk < Cpk になります。

計算例|加工寸法の群データ

ある切削工程の外径(規格 50.00±0.30mm、USL=50.30・LSL=49.70)を、5個ずつ5群測定しました。

測定値(mm) 範囲R
1 49.95 50.05 49.98 50.08 50.02 0.13
2 50.02 50.12 50.06 50.15 50.09 0.13
3 49.88 49.98 49.92 50.02 49.95 0.14
4 50.06 50.16 50.10 50.19 50.13 0.13
5 49.92 50.02 49.96 50.05 49.99 0.13

全体平均は \(\bar{\bar{x}}\) = 50.034mm です。

群内ばらつきからCpk

範囲の平均 R̄ = (0.13+0.13+0.14+0.13+0.13) ÷ 5 = 0.132。群サイズn=5の係数d₂=2.326を使います。

\[\sigma_{within} = \frac{\bar{R}}{d_2} = \frac{0.132}{2.326} = 0.0567\]

\[C_{pk} = \frac{50.30 – 50.034}{3 \times 0.0567} = \frac{0.266}{0.170} = 1.56\]

(上限側と下限側の小さい方を採用。下限側は (50.034−49.70)/(3×0.0567)=1.96なので、上限側の1.56がCpk)

全体ばらつきからPpk

25個全部の標本標準偏差を求めると σoverall = 0.0815 です。Excelの =STDEV.S(全データ範囲) で計算できます。

\[P_{pk} = \frac{50.30 – 50.034}{3 \times 0.0815} = \frac{0.266}{0.245} = 1.09\]

指標 σ 評価
Cpk(短期) 0.0567 1.56 合格(±4σ超)
Ppk(長期) 0.0815 1.09 ぎりぎり(要改善)

Cpkの合格基準(1.33)や不良率との対応は工程能力指数の目安一覧(Cp1.33の根拠)で解説しています。

ExcelでのPpk計算とd₂係数

Ppkは全データの標準偏差だけなので、Excelで完結します。全データがA2:A26にある場合の式です。

平均 =AVERAGE(A2:A26) → 50.034
σ_overall =STDEV.S(A2:A26) → 0.0815
Ppk =MIN((50.30-AVERAGE(A2:A26))/(3*STDEV.S(A2:A26)), (AVERAGE(A2:A26)-49.70)/(3*STDEV.S(A2:A26))) → 1.09

Cpkの σwithin はR̄をd₂で割って求めます。d₂は群サイズで決まる係数です。

群サイズn 2 3 4 5 6
d₂ 1.128 1.693 2.059 2.326 2.534

この係数はX-R管理図の管理限界の計算でも使うものです。管理図の作り方はX-R管理図の作り方と見方にまとめています。

差の解釈|CpkとPpkの関係で工程を診断する

2つの値の関係から、工程の状態を読み取れます。

  • Cpk ≈ Ppk:群間のドリフトが小さく、工程が安定している。理想的な状態
  • Cpk ≫ Ppk(今回の例):瞬間の実力はあるのに長期では劣化。工具摩耗・ロット差・段取り差など時間的なドリフトが疑われる
  • 両方とも低い:そもそものばらつきが大きい。設備・方法の見直しが必要

今回の例はCpk 1.56に対しPpk 1.09。短期の実力は十分なのに、群をまたぐと平均が動いていることを示します。改善は「ばらつき削減」ではなくドリフトの原因(工具摩耗の進行など)を抑えることが先決です。具体的な改善アプローチはCp・Cpk改善の手順を参照してください。

まとめ

  • Cpkは群内(短期)ばらつき、Ppkは全体(長期)ばらつきで計算する
  • 式は同じ形で、分母の σ が σwithin(R̄/d₂)か σoverall(全データのSD)かだけが違う
  • 工程がドリフトするとPpk < Cpkになる。差はドリフトの大きさを表す
  • Cpkは管理状態が前提。PPAP・工程監査ではありのままのPpkが求められる
  • Cpk≫Ppkなら、ばらつき削減よりドリフト原因の除去が先

日常管理と工程の実力評価はCpk、顧客提出や長期実績の評価はPpk、と覚えておけば迷いません。基本の計算は工程能力指数(Cp・Cpk)の計算とExcelでの求め方、合格基準は工程能力指数の目安一覧をあわせてご覧ください。

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