実験計画法

実験計画法とは?3原則と手法の選び方を例題で解説

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「温度・圧力・添加剤の3因子を各3水準で試したい。全部やると27通りになる——どこまで削れるのか?」こんな場面で力を発揮するのが実験計画法です。

この記事では、実験計画法の基本的な考え方と代表的な手法の概要を解説します。フィッシャーの3原則、実験の種類の選び方、そして実験計画の組み方の流れまで、製造業・研究開発の現場を想定した例を使って説明します。

この記事でわかること
  • 実験計画法が何を解決するのか
  • フィッシャーの3原則(反復・無作為化・局所管理)の意味
  • 単一因子実験と要因実験の違い
  • 直交表・応答曲面法・タグチメソッドの使い分けの概要

結論:実験計画法は「この3つ」を押さえれば動かせます

  1. 目的はシンプル。少ない実験回数で「結果に何が効いているか」を見抜くための方法です。
  2. カギは段取り。調べたい要因(因子)とその設定値(水準)を決め、直交表で組み合わせを賢く絞ります。
  3. 計算は足し算・引き算で十分。各条件の平均の差を取るだけで、どの要因がどれだけ効くか(主効果)が読めます。難しい数学は後回しでかまいません。

”実験計画法”とは

実験計画法(Design of Experiments、略してDOE)とは、最小の実験回数で最大の情報を引き出すための手法の体系です。

実験回数を減らすだけなら、適当に条件を省けばいい——そう思うかもしれません。ただし、やみくもに実験を減らすと「どの因子が効いているか判断できない」「偶然の影響を因子の効果と混同してしまう」といった問題が起きます。実験計画法は、こうした落とし穴を避けながら効率よく実験を設計するための考え方です。

扱う主な概念はこうです。

用語意味
因子(Factor)応答変数に影響を与えると思われる変数焼入れ温度、炭素量、保持時間
水準(Level)因子の設定値・カテゴリ850℃・900℃・950℃の3水準
応答変数(Response)実験で測定する結果引張強度(MPa)、硬さ(HRC)
主効果ある因子が応答に与える直接的な効果温度を50℃上げると強度が+30MPa
交互作用2因子の組み合わせが生む追加効果高温×高炭素の組み合わせだけ効果が大きい

交互作用があると「温度の効果は炭素量によって変わる」ため、一度に1因子ずつしか変えない実験では見落とします。実験計画法を使う大きな動機の一つがこの交互作用の検出です。

フィッシャーの3原則

実験計画法の基礎を築いたR.A.フィッシャーは、信頼性の高いデータを得るための三つの原則を提唱しました。この3原則は今も実験設計の出発点として使われています。

反復の原則(Replication)

同じ条件の実験を複数回繰り返すことです。目的は二つあります。一つはランダムな変動(測定誤差・材料のばらつき)の影響を統計的に推定すること。もう一つは、検出力(本当の効果を検出できる確率)を確保することです。

何回繰り返せば十分かは、検出したい効果の大きさや許容するリスクで決まります。この計算についてはサンプルサイズの決め方で詳しく解説しています。

無作為化の原則(Randomization)

実験の順序をランダムに決めることです。時間とともに変化する要因(機械の温まり具合・作業者の疲れ・原材料のロット差など)が、特定の実験条件に偏って影響するのを防ぎます。

「順番を決めるのが面倒」という理由で条件を固定する実験をよく見ますが、それだと系統的な誤差が結果に混入します。乱数を使って順序を決めるだけで、この問題はかなり抑えられます。

局所管理の原則(Blocking)

実験環境の既知のばらつきをブロックとして整理し、そのばらつきが結果を歪めないよう管理することです。たとえば「機械が2台ある、どちらを使うかで結果が変わるかもしれない」なら、各条件を両方の機械で試して機械の違いを誤差から分離します。

ブロック化がうまくいくと、誤差が小さくなり、検出力が上がります。二元配置分散分析でブロック因子を扱う方法は二元配置分散分析を例題で解説を参照してください。

実験の組み方:どの手法を選ぶか

単一因子実験

「一度に一つの因子だけを変える」実験です。他の因子はすべて固定します。シンプルで解釈しやすいですが、交互作用は見えません。因子が少なく(2〜3因子程度)、交互作用が疑われない場合に向いています。

たとえば、因子Aと因子Bの2つの最適な組み合わせを決定したい場合、①因子Bを固定して因子Aの最適水準を決定⇒②最適な因子Aで固定して因子Bを実験する。このように一度の実験で因子を1つずつ取り上げる実験方法を単一因子実験(一元配置実験)といいます。

しかし、単一因子実験では誤った結論を導き出すことがあります。

因子Aが3水準(A1,A2,A3)と因子Bが2水準(B1,B2)の場合を考えてみます。”真のデータ”は以下のグラフとします。実験手順を以下とする場合の結論はどうでしょうか?

上の図から”交互作用がある場合”ではA2,B2の組み合わせが最も高い値を示すにも関わらず間違った結論を出してしまうことがわかります。

詳しくは要因実験と単一因子実験を参照してください。

要因実験(完全実施配置実験)

複数の因子のすべての組み合わせを実験します。2因子各3水準なら9通り、3因子各2水準なら8通りです。主効果と交互作用をすべて推定できますが、因子・水準が増えると実験数が急増します。

因子数各水準数全実験数
224
328
4216
3327
53243

因子が多い場合は、実験数を削減するために次の手法を組み合わせます。

実験計画法の”実験の組み方”を説明するうえでまずは”単一因子実験”と”要因実験”について理解しましょう。

一部実施配置実験(直交表)

全組み合わせのうち、統計的に偏りなく情報が取れる一部だけを実施します。たとえばL8直交表なら、7因子各2水準を8回の実験で主効果を推定できます(ただし高次の交互作用は見えなくなります)。直交表の使い方は2水準直交表(交互作用なし)から入るとわかりやすいです。

交互作用も考慮した直交表の割り付けは2水準直交表(交互作用あり)を参照してください。

応答曲面法(RSM)

最適条件を数値的に探索したい場合に使います。因子と応答の関係を2次式でモデル化し、最適点を推定します。「強度が最大になる温度・時間の組み合わせは?」という問いに答えるのに向いています。詳細は応答曲面法(RSM)の基礎と実践で解説しています。

タグチメソッド(ロバスト設計)

「ばらつきを小さくする」ことを目的とした設計手法です。制御因子(調整できる)とノイズ因子(調整できない)を分けて実験し、ノイズに強い条件を探します。SN比の計算と直交表の使い方はタグチメソッド(ロバスト設計)の基礎で解説しています。

すが、交互作用がない場合はこのように一部の実験で主効果を推定することが可能です。

実験データの解析

実験計画法で取得したデータを解析する代表的な手法は分散分析(ANOVA)です。各因子の主効果と交互作用が統計的に有意かどうかを判断します。

一元配置分散分析(1因子)は一元配置分散分析を例題で解説、2因子以上の場合は二元配置分散分析を例題で解説、ExcelでのANOVA操作はExcelで分散分析を参照してください。

分散分析で因子の有意性がわかったら、次は多重比較法で水準間の差を調べます(TukeyのHSD法を例題で解説)。

実験計画の進め方

実際の実験計画はこの流れで進めます。

  1. 目的を明確にする:何を知りたいか(最適値の探索?効果の大きな因子の特定?ばらつきの低減?)
  2. 応答変数を決める:何を測定するか。測定方法の誤差も確認する(→ゲージR&Rで測定システムを評価)
  3. 因子と水準を決める:ブレインストーミングで因子を洗い出し、現実的な水準範囲を設定する
  4. 実験計画を設計する:実験数の予算に合わせて完全実施か一部実施かを決め、直交表や計画を選択する
  5. サンプルサイズを計算する:検出したい効果の大きさから必要な繰り返し数を決める(→サンプルサイズの決め方
  6. 実験を実施する:ランダム化した順序で実験を行い、データを記録する
  7. データを解析する:分散分析・多重比較・残差確認を行う
  8. 結論を出す:最適条件を決定し、確認実験で検証する

実験計画法の具体例|3因子の実験を効率化する

冒頭の「温度・圧力・添加剤の3因子」の話に戻りましょう。ここまでの流れを、収率を上げる実験を例に具体的にたどってみます。

取り上げる3つの因子と水準は次のとおりです。それぞれ2水準(低い側・高い側)で設定します。

  • 因子A:温度(160℃ / 180℃)
  • 因子B:圧力(低 / 高)
  • 因子C:添加剤(無 / 有)

3因子×2水準のすべての組み合わせは 2³=8通りです。この8通りをすべて実施するのが「完全実施(要因実験)」で、まずはこの形で考えます。実験結果(収率)は次のようになりました。

No.温度A圧力B添加剤C収率(%)
116080
218086
316083
418089
516081
618087
716084
818090

各因子の効果は「高水準のときの収率の平均」から「低水準のときの収率の平均」を引いて求めます。これを主効果と呼びます。温度Aを例にすると、次のようになります。

  • 温度180℃のとき(No.2,4,6,8)の平均:(86+89+87+90)÷4 = 88.0%
  • 温度160℃のとき(No.1,3,5,7)の平均:(80+83+81+84)÷4 = 82.0%
  • 温度Aの主効果:88.0 - 82.0 = +6.0%

同じ計算を圧力B・添加剤Cでも行うと、主効果は次のように整理できます。

因子主効果影響の大きさ
温度A+6.0%
圧力B+3.0%
添加剤C+1.0%

収率にもっとも効くのは温度で、次が圧力、添加剤の影響は小さいとわかります。3因子をすべて高水準にしたNo.8の収率90%が最良で、最適条件は「温度180℃・圧力高・添加剤あり」と読み取れます。最後に、この条件をもう一度実験する確認実験を行えば、計画は完了です。

この主効果の差が「偶然のばらつき」では説明できないほど大きいかどうかは、分散分析で統計的に確かめます。今回は3因子8通りなのですべて実施できましたが、因子が増えると全通りの実験は現実的でなくなります。そこで実験数を絞るのが一部実施要因配置実験(直交表)です。たとえばL8直交表を使えば、本来もっと多くなる実験を8回に収められます。要因実験の基本は要因実験と単一因子実験で解説しています。

実験計画法の手法一覧

このサイトでは実験計画法の各手法を個別に解説しています。目的に応じた記事を参照してください。

📘 次のステップ

次は具体的な実験の組み方へ。要因実験と単一因子実験の違いから。→ 要因実験と単一因子実験

まとめ

実験計画法は「闇雲に試す」のではなく、「何をどの順番で、何回試せば目的の情報が得られるか」を設計する考え方です。

  • フィッシャーの3原則(反復・無作為化・局所管理)が信頼性の基盤
  • 因子数・水準数・実験予算に合わせて完全実施→直交表→RSMと手法を選ぶ
  • ばらつき低減が目的ならタグチメソッドが有効
  • 取得したデータは分散分析と多重比較で解析する

次のステップとして、まず要因実験と単一因子実験で基本的な実験の組み方を確認し、直交表か応答曲面法かを検討してみてください。

統計・実験計画法の全体的な学習の流れは学習ロードマップにまとめています。

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