統計的仮説検定

3シグマとは|68-95-99.7ルールと工程能力・管理図

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この記事でわかること

  • 平均±1σ・±2σ・±3σに入る確率(68-95-99.7ルール)
  • ±3σの外がなぜ0.27%(約1000個に3個)になるのか
  • 3シグマが工程能力Cpと管理図の±3σ管理限界の共通の土台であること
  • シグマレベルと不良率(ppm)の対応

📌 前提知識:正規分布の基礎標準偏差・分散を知っていると理解がスムーズです

工程能力の話をすると「規格の幅が±3σに収まっているか」と言われ、管理図を引くと「管理限界は平均±3σ」と言われます。品質管理では、なぜか何をやっても「3σ(3シグマ)」が顔を出します。

この「3」の正体は、正規分布の性質にあります。平均から±3σの範囲に、データの99.73%が入る——この一点さえ押さえれば、工程能力も管理図も同じ土台の上に立っていることが見えてきます。

この記事では、3シグマと68-95-99.7ルールの意味を確認し、それが工程能力と管理図にどうつながるのかを、製造業の数値例で解説します。

3シグマが出てくる場面

3シグマの考え方は、品質管理の中核をなす2つの手法の土台になっています。次のような場面では、知らないうちに68-95-99.7ルールを使っています。

  • 工程能力指数を評価するとき:規格の幅が工程のばらつき(±3σ)に対して十分かを見る。Cp=1がちょうど±3σに相当する。
  • 管理図で工程を監視するとき:管理限界を平均±3σに引く。正常な工程なら、点はほぼこの範囲に収まる。
  • 不良率を見積もるとき:規格外に出る確率を、正規分布の裾の面積として計算する。

逆に注意したい点もあります。

(△)68-95-99.7ルールが成り立つのは、データが正規分布に近いときです。分布が大きく歪んでいる場合、±3σに99.73%が入るとは限りません。
(△)3シグマは「ばらつき(σ)」の話で、データ数(n)とは別物です。標本平均のばらつきである標準誤差 σ/√n とは混同しないでください。

68-95-99.7ルールとは

正規分布では、平均 μ を中心に標準偏差 σ の何倍の範囲を取るかで、その中に入るデータの割合が決まっています。これを68-95-99.7ルール(経験則)と呼びます。

範囲 入る割合 外に出る割合
μ ± 1σ 約 68.27% 約 31.73%
μ ± 2σ 約 95.45% 約 4.55%
μ ± 3σ 約 99.73% 約 0.27%

ポイントは3σです。平均±3σの範囲に99.73%が入るということは、その外に出るのはわずか0.27%。割合でいうと約1000個に3個です。

この確率はExcelで確認できます。標準正規分布で±3の範囲に入る確率は、NORM.S.DIST関数で計算します。

=NORM.S.DIST(3, TRUE) - NORM.S.DIST(-3, TRUE)
→ 0.9973

外側(両側)の割合は 1 − 0.9973 = 0.0027、つまり0.27%です。

製造業の数値例:規格外に出る確率

ある部品の長さが、平均 μ = 100mm、標準偏差 σ = 2mm の正規分布に従っているとします。規格が 94〜106mm のとき、規格外になる確率を求めます。

規格の上下限を標準化すると、\( (106-100)/2 = +3 \)、\( (94-100)/2 = -3 \) で、ちょうど平均±3σです。したがって規格内に入る割合は99.73%、規格外は0.27%です。

不良率をppm(100万個あたりの個数)で表すと、

\[ 0.0027 \times 1{,}000{,}000 = 2{,}700\ \text{ppm} \]

100万個作れば約2,700個が規格外、という水準です。Excelでは規格外の確率を次のように出せます(対称なので片側を2倍)。

=2 * (1 - NORM.DIST(106, 100, 2, TRUE))
→ 0.0027

工程能力Cpとのつながり

工程能力指数Cpは、規格の幅が工程のばらつき(6σ=±3σ)に対してどれだけ余裕があるかを表します。

\[ C_p = \frac{USL – LSL}{6\sigma} \]

先ほどの例(規格94〜106・σ=2)なら、\( C_p = (106-94)/(6 \times 2) = 12/12 = 1.0 \)。Cp=1.0 とは、規格の幅がちょうど±3σに一致する状態です。このとき不良率は0.27%(2,700ppm)です。

ばらつきを小さくして σ=1.5 に改善すると、\( C_p = 12/(6 \times 1.5) = 1.33 \)。規格の幅が±4σぶんに広がり、不良率は約63ppmまで下がります。Cpの値と±何σ・不良率の対応は次のとおりです。

Cp 規格幅 不良率(両側・中心が規格中央のとき)
1.00 ± 3σ 約 2,700 ppm
1.33 ± 4σ 約 63 ppm
1.67 ± 5σ 約 0.6 ppm

現場でCp≧1.33が目安とされるのは、±3σ(Cp=1.0)では不良が2,700ppmと多すぎるためです。Cpと偏り(Cpk)の詳しい計算は工程能力指数の記事で解説しています。

管理図の±3σ管理限界とのつながり

管理図の上方・下方管理限界(UCL・LCL)も、中心線から±3σの位置に引きます。理由は68-95-99.7ルールにあります。

工程が正常(安定)なら、点が±3σの管理限界を超える確率はわずか0.27%です。つまり、限界を超える点が出たら「たまたま」ではなく「工程に異常が起きた」と判断してよい、という設計です。

もし管理限界を±2σと狭くすると、正常でも4.55%の確率で限界を超えてしまい、異常でないのに異常と判定する「あわてものの誤り(第1種の誤り)」が増えます。±3σは、この誤警報を0.27%まで抑えるための設定です。管理図の異常の見つけ方は管理図の異常判定ルールで詳しく扱っています。

シグマレベルと不良率(ppm)

「±何σぶんの余裕があるか」をシグマレベルと呼びます。シグマレベルが上がるほど、不良率は急激に下がります。

シグマレベル 規格外の割合(両側) ppm
± 1σ 約 31.73% 317,300 ppm
± 2σ 約 4.55% 45,500 ppm
± 3σ 約 0.27% 2,700 ppm
± 4σ 約 0.0063% 63 ppm

なお「シックスシグマ」で有名な不良率3.4ppmは、工程の平均が長期的に1.5σぶんずれることを見込んだ値で、±6σそのものの確率(両側で約0.002ppm)とは別の定義です。ここでは「σが増えるほど不良は桁違いに減る」という感覚を押さえておけば十分です。

QC検定での問われ方とミニ例題

QC検定では、3シグマは正規分布・工程能力・管理図のいずれの分野でも問われます。とくに±1σ・±2σ・±3σの確率(68.27%・95.45%・99.73%)と、±3σの外が0.27%という数値は暗記事項です。

よく問われるポイントは次の3つです。

  • μ±3σに約99.73%が入り、外に出るのは約0.27%
  • Cp=1.0は規格の幅が±3σに一致する状態(不良2,700ppm)
  • 管理限界±3σを超える確率0.27%=あわてものの誤り(第1種の誤り)を抑える設計

ミニ例題:ある製品の重量が平均200g・標準偏差1.0gの正規分布に従う。規格が197〜203gのとき、(1) 規格内に入る割合は約何%か。(2) この工程のCpはいくらか。

解答:規格上下限を標準化すると (203−200)/1.0 = +3、(197−200)/1.0 = −3 で、平均±3σです。(1) よって規格内は約99.73%。(2) Cp = (203−197)/(6×1.0) = 6/6 = 1.0。±3σ=Cp=1.0=99.73%という対応を、この計算で確認しておきましょう。

よくある質問(FAQ)

Q. 68-95-99.7ルールは覚え方のコツはありますか?

A. 「±1σでおよそ7割、±2σで95%、±3σでほぼ全部(99.7%)」と3段階で覚えるのが定番です。厳密には68.27・95.45・99.73%ですが、QC検定でも「約68%・約95%・約99.7%」で通じます。

Q. データが正規分布でない場合も使えますか?

A. そのままは使えません。68-95-99.7ルールは正規分布を前提とした割合です。分布が歪んでいるときは、ヒストグラムや正規性の検定で形を確認してから判断します。

Q. なぜ2σや4σではなく3σが標準なのですか?

A. 2σだと正常でも4.55%が限界を超え、誤警報が多すぎます。逆に4σ以上にすると異常の見逃しが増えます。3σは誤警報を0.27%に抑えつつ異常を捉えられる、実用的なバランス点として広く使われています。

まとめ

3シグマは、正規分布のひとつの性質から、工程能力と管理図の両方を支えている考え方です。要点を整理します。

  • 正規分布では μ±1σに約68.27%、±2σに約95.45%、±3σに約99.73%が入る
  • ±3σの外はわずか0.27%(約1000個に3個・2,700ppm)
  • Cp=1.0は規格幅が±3σに一致する状態。Cp≧1.33が目安なのは±3σでは不良が多いから
  • 管理限界±3σは、正常時の誤警報を0.27%に抑えるための設計

使い分けの一言:ばらつきの範囲を語るなら±3σ(99.73%)、その余裕を規格と比べるのがCp、時間で監視するのが管理図。すべての根っこに68-95-99.7ルールがあります。

3シグマの土台となる正規分布は正規分布とはで、規格との比較は工程能力指数(Cp・Cpk)で詳しく解説しています。あわせて読むと、品質管理の数字のつながりが見えてきます。

そもそも多くのばらつきが正規分布に近づく理論的な理由は、中心極限定理とはで解説しています。

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