この記事でわかること
- 直交表の「割り付け」で何を決めているのか(交絡を避ける配置)
- L8の交互作用の現れ方と、線点図の点・線の意味
- 因子4つ+交互作用2つをL8に割り付ける手順(例題)
📌 前提知識:直交表の早見表|L4〜L27の選び方で直交表の基本を確認できます
L8直交表に因子を割り付けて実験したのに、解析してみると「効果が大きい」と出た列が、実は因子Dと交互作用A×Bの両方を背負っていた。どちらが効いたのか分からず、実験8回がやり直しに——直交表実験で一番痛い失敗が、この交絡です。
交絡を避けて因子と交互作用を列に配置する作業が割り付けで、その設計図になるのが線点図です。この記事では、L8を例に線点図の読み方と割り付け手順を解説します。
線点図を使う場面
- 調べたい交互作用が事前に決まっている直交表実験を計画するとき
- 因子数と交互作用数から、L8で足りるかL16が必要かを判断するとき
- 「この列に割り付けて大丈夫か」を確認するとき
逆に、技術的な知見から交互作用をすべて無視できる場合は、線点図は不要で全列に因子を詰め込めます(交互作用なしの2水準直交表)。線点図が必要になるのは交互作用ありの直交表実験です。
前提|L8では交互作用が「決まった列」に現れる
2水準直交表では、2つの列に割り付けた因子の交互作用が、必ず別の特定の列に現れます。L8(列1〜7)の主な対応は次のとおりです。
| 因子を割り付けた列 | 交互作用が現れる列 |
|---|---|
| 列1 × 列2 | 列3 |
| 列1 × 列4 | 列5 |
| 列2 × 列4 | 列6 |
| 列3 × 列4 | 列7 |
つまり列1と列2に因子A・Bを置いたら、列3は「A×B専用」か「空けておく」かのどちらかにすべきで、そこに別の因子Dを置くとDとA×Bが交絡します。この対応関係を図の形で覚えやすくしたのが線点図です。
線点図の読み方|点は因子、線は交互作用
線点図のルールは2つだけです。
- 点(●)=因子を割り付ける列
- 点と点を結ぶ線=その2因子の交互作用が現れる列
L8の代表的な線点図は、点1・2・4を三角形に結んだ形です。辺には3(1と2を結ぶ線)・5(1と4)・6(2と4)の番号が付き、点7は独立しています。
読み方はそのままで、「点1と点2に因子を置くと、その交互作用は辺3の列に出る」。だから交互作用を推定したい2因子は線で結ばれた点のペアに置き、その線の列は空けておく(または交互作用の推定に使う)わけです。L8にはもう1つ、点1を中心に点2・4・7へ放射状に線3・5・6が伸びる「一点集中型」の線点図もあり、1つの因子が他の3因子すべてと絡む場合に使います。
割り付けの手順|例題で確認
例題: 因子A(成形温度)・B(保持時間)・C(金型温度)・D(材料ロット)の4因子と、交互作用A×B・A×Cを調べたい。L8で足りるでしょうか。
必要な自由度で確認します。2水準因子は1列ずつ、交互作用も1列ずつ必要なので、4因子+交互作用2つ=6列。L8は7列あるので、1列を誤差に残して割り付け可能です。手順は次のとおりです。
- 要求の線点図を描く: 点A・B・Cのうち、AはBともCとも線で結ばれる必要がある(A×B・A×C)。Dはどことも結ばれない独立点
- L8の線点図に重ねる: 三角形タイプで A=点1・B=点2・C=点4 と置くと、A×B=辺3・A×C=辺5 が確保できる
- 残りの列を決める: 独立因子Dは、使っていない点7へ。辺6(B×C)は調べない交互作用なので空け、誤差列とする
| 列 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 割り付け | A | B | A×B | C | A×C | 誤差 | D |
やってはいけないのは、空いて見える列3や列5にDを置くことです。列3にはA×Bが現れるため、DとA×Bが交絡し、冒頭の失敗になります。「空き列」に見えても、線点図上で使った線の列は埋まっていると考えてください。
割り付けが済んだら、各列の水準組み合わせに従って8回の実験を(順序はランダム化して)実施し、列ごとの効果を分散分析で評価します。解析の実際はエクセルでL8直交表で手順を追えます。
L8で足りないとき
調べたい交互作用が多く、線点図がL8に収まらない場合はL16以上に上げます。逆に交互作用をすべて捨てて因子数を優先するなら、L8に7因子まで詰め込めます。この「交互作用を犠牲にして因子数を稼ぐ」設計の考え方は一部実施要因配置実験(2^k-p計画)として体系化されています。どの直交表を選ぶかの目安は直交表の早見表にまとめています。
現場のミニ事例|「空き列」に置いた因子の交絡
冒頭の失敗を、もう少し具体的に見ておきます。ある接着工程でA(硬化温度)・B(硬化時間)・C(塗布量)・D(表面処理)の4因子をL8で実験した際、担当者はA=列1・B=列2・C=列4と置いたあと、「列3が空いている」としてDを列3に割り付けました。
解析の結果、列3の効果が最大。「表面処理Dが効く」と結論して工程を変更しましたが、効果は再現しませんでした。列3に現れていたのは実際にはA×B(温度×時間の交互作用)で、Dはほぼ無関係だったのです。接着の世界で温度×時間の交互作用は技術的にもありそうな話で、線点図を1枚描いていれば「列3はA×Bの線」と気づけた失敗でした。
教訓は2つです。①割り付け前に、技術知識から「ありそうな交互作用」を必ず洗い出す。②その交互作用の列(線点図の線)には因子を置かない。実験8回は節約できても、交絡した結論のやり直しコストはその何倍にもつきます。
よくある質問
Q. 3水準の直交表(L9・L27)にも線点図はある?
A. あります。ただし3水準系では2因子の交互作用が1列ではなく2列に分かれて現れるため、線点図の線には2つの列番号が付きます。L9は交互作用を1組調べるだけで列を使い切るので、交互作用を見たい3水準実験は実質L27からです。3水準の解析は3水準直交表(交互作用あり)で解説しています。
Q. どの交互作用を「調べる」と決めればいい?
A. 統計ではなく技術で決めます。反応機構・物理的なメカニズムから「この2因子は絡みそうだ」と言えるものだけを線点図に載せ、それ以外は無視する(誤差に入れる)のが実務の割り切りです。全部の交互作用を調べようとすると実験回数が要因配置と変わらなくなり、直交表を使う意味がなくなります。
Q. 割り付けた誤差列の効果が大きく出たら?
A. 危険信号です。誤差列に現れるのは本来ランダムな変動だけのはずなので、そこが大きいときは「無視した交互作用が実は存在する」か「管理できていない外乱がある」可能性があります。結論を急がず、その列がどの交互作用に対応するか(線点図で確認)を点検し、必要なら追実験で確かめてください。
まとめ
- 割り付け=交絡を避けて因子と交互作用を列に配置する作業
- 2水準直交表では、2列の交互作用は決まった列に現れる(L8: 1×2→3など)
- 線点図は「点=因子の列・線=交互作用の列」。要求の図をL8の図に重ねて割り付ける
- 線として使った列に因子を置くと交絡する。「空き列に見えても埋まっている」
- 収まらなければL16へ、交互作用を捨てるなら7因子まで詰められる
調べたい交互作用があるなら線点図から、交互作用を無視できるなら詰め込み割り付け、が基本の使い分けです。実験全体の流れは実験計画法とはもあわせてご覧ください。

