この記事でわかること
- 抜取検査を使う場面と、全数検査との使い分け
- 合格確率を二項分布で求める手順(ExcelのBINOM.DIST関数)
- OC曲線の作り方と、生産者危険α・消費者危険βの読み方
📌 前提知識:二項分布・ポアソン分布を読んでおくと、合格確率の計算が理解しやすくなります。
購入した部品が1ロット5,000個。全数を検査する時間はないけれど、不良の多いロットは受け入れたくない——受入検査の現場でよくある悩みです。こんなとき、ロットから一部を抜き取って合否を判断するのが抜取検査です。
ただ、抜き取りである以上「良いロットをうっかり不合格にする」「悪いロットを見逃して合格させる」リスクはゼロになりません。そのリスクの大きさを1本の曲線で表したものがOC曲線です。この記事では、合格確率の計算からOC曲線の読み方までを、Excelの手順つきで解説します。
抜取検査を使う場面・使わない場面
抜取検査は、ロットから抜き取ったサンプルの不適合品数で、ロット全体の合否を決める方法です。次のような場面で使います。
- ロットが大量で、全数検査に時間やコストがかかりすぎるとき
- 破壊検査(試験するとその製品が使えなくなる)で、全数検査が原理的に不可能なとき
- 連続して届くロットを、受入時に効率よくふるい分けたいとき
逆に、1個でも不良が許されない重要保安部品や、検査コストが極めて低い場合は、全数検査の方が適しています。抜取検査は「見逃しのリスクを一定量受け入れる代わりに、検査の手間を減らす」方法だと理解しておきましょう。
抜取検査の基本(n と c)
もっとも基本的な計数規準型の一回抜取検査は、2つの数字で決まります。
- n:ロットから抜き取るサンプルの個数
- c:合格と判定する不適合品数の上限(合格判定個数)
n個を抜き取り、その中の不適合品数がc個以下ならロット合格、c個を超えたら不合格とします。たとえば n=50・c=2 なら、「50個中、不適合品が2個までなら合格」という検査です。
合格確率の計算(二項分布)
ロットの不適合品率を p とすると、抜き取ったn個のうち不適合品がちょうどk個出る確率は二項分布で表せます。
\[ P(k) = {}_n C_k \, p^k (1-p)^{n-k} \]
ロットが合格するのは「不適合品数が c 個以下」のときなので、合格確率 L(p) は k=0 から c までの確率を足し合わせたものになります。
\[ L(p) = \sum_{k=0}^{c} {}_n C_k \, p^k (1-p)^{n-k} \]
Excelでは二項分布の累積確率を返す BINOM.DIST関数 で一発で求められます。第4引数を TRUE にすると「c個以下」の累積確率になります。
合格確率 L(p): =BINOM.DIST(c, n, p, TRUE) 例(n=50, c=2, p=0.04): =BINOM.DIST(2, 50, 0.04, TRUE) → 0.6767
中身を分解すると、不適合品が0個・1個・2個になる確率の合計です。1個ずつ確認したいときは第4引数を FALSE にします(=BINOM.DIST(0,50,0.04,FALSE) など)。
| 不適合品数 k | 確率 P(k)(p=0.04) |
|---|---|
| 0個 | 0.1299 |
| 1個 | 0.2706 |
| 2個 | 0.2762 |
| 合計(=合格確率 L(0.04)) | 0.6767 |
不適合品率が4%のロットでも、この検査(n=50, c=2)では約68%の確率で合格します。「抜き取りだと、それなりに不良のあるロットも通ってしまう」ことが数字で見えてきます。
なお n が大きく p が小さいときは、平均 λ=np のポアソン分布で近似できます(=POISSON.DIST(2, 2, TRUE) → 0.6767 と、ほぼ同じ値です)。手計算では近似が便利です。
OC曲線の作り方
OC曲線(検査特性曲線)は、横軸にロットの不適合品率 p、縦軸に合格確率 L(p) を取ったグラフです。pをいくつか変えて L(p) を計算し、点をつなぐだけで描けます。
| 不適合品率 p | 合格確率 L(p) |
|---|---|
| 1% | 0.9862 |
| 2% | 0.9216 |
| 4% | 0.6767 |
| 6% | 0.4162 |
| 8% | 0.2260 |
| 10% | 0.1117 |
Excelでは、A列にpを並べ、B列に =BINOM.DIST(2,50,A2,TRUE) を入れて下までコピーし、散布図(平滑線)にすれば完成です。pが大きくなるほど合格確率がなだらかに下がる、右肩下がりの曲線になります。
この曲線の「下がり方」が検査のきびしさです。理想は良品ロットでストンと高く、不良ロットでストンと低くなる垂直に近い形ですが、nを増やさない限り、現実には傾いたS字になります。
生産者危険α と 消費者危険β
OC曲線から、検査につきまとう2種類のリスクを読み取れます。
- 生産者危険 α:本来は合格にしたい良いロット(不適合品率 p₀)が、誤って不合格になる確率。α = 1 − L(p₀)
- 消費者危険 β:本来は不合格にしたい悪いロット(不適合品率 p₁)が、誤って合格してしまう確率。β = L(p₁)
先ほどの検査(n=50, c=2)で、良品の目安を p₀=1%、不良の目安を p₁=8% とすると、次のように計算できます。
生産者危険 α = 1 − L(0.01) = 1 − 0.9862 = 0.0138(約1.4%) 消費者危険 β = L(0.08) = 0.2260(約22.6%)
良いロットを落とす確率は約1.4%と低めですが、不適合品率8%のロットを見逃す確率は約22.6%もあります。消費者危険を下げたいなら、サンプル数nを増やす、合格判定個数cを小さくするなど、検査の設計を見直す必要があります。AQL(合格品質水準)やLTPDといった基準は、このα・βを実務で扱いやすくしたものです。
まとめ
- 抜取検査は n(サンプル数)と c(合格判定個数)で決まり、不適合品がc個以下なら合格
- 合格確率 L(p) は二項分布で計算でき、Excelの
=BINOM.DIST(c, n, p, TRUE)で求められる - OC曲線は p と L(p) のグラフ。生産者危険 α=1−L(p₀)、消費者危険 β=L(p₁) を読み取れる
使い分けの一言:見逃し(消費者危険β)を減らしたいならnを増やす、過剰な不合格(生産者危険α)を減らしたいならcの設定を見直す——どちらを重視するかで検査の設計が変わります。
合格確率の土台となる分布は 二項分布・ポアソン分布 で、不良率そのものを検定したいときは 母比率の検定(不良率の検定) が使えます。工程の不良率を継続して監視するなら p管理図・np管理図 も合わせてご確認ください。QC検定2級の手法編全体の学習は QC検定2級 手法編の攻略ロードマップ に分野別の地図をまとめています。

