この記事でわかること
- t分布・χ²分布・F分布それぞれの成り立ちと形
- 「何を調べるか」で分布を選ぶ使い分けの原則
- 各分布に対応するExcel関数と検定の早見表
t検定を勉強したと思ったら、次は分散の検定でχ²分布が出てきて、分散分析ではF分布。「結局どの場面でどの分布を使うのか」が混乱してきた——統計を学び始めた人が必ず通る壁です。QC検定の試験でも、検定統計量がどの分布に従うかを問う問題は定番です。
実は、選び方の原則はシンプルです。平均を調べるならt分布、分散を調べるならχ²分布、分散の比を調べるならF分布。この記事では、3つの分布の成り立ちをざっくりつかんだうえで、対応する検定とExcel関数を1枚の早見表に整理します。
3つの分布が必要になる場面
正規分布に従う母集団からサンプルを取ると、サンプルから計算した統計量(平均・分散など)も確率的にばらつきます。この「統計量が従う分布」を標本分布と呼びます。検定は、統計量が標本分布のどの位置に落ちたかで珍しさを判断する仕組みなので、統計量ごとに正しい標本分布を知っている必要があります。
母集団の標準偏差σが分かっていれば標準正規分布(z)で済みますが、実務ではσは未知で、サンプルから推定します。その推定の影響で分布の形が変わったものが、t・χ²・Fの3つです。つまり3つとも「正規分布の親戚」で、何を調べるかによって登場する親戚が違うだけです。
それぞれの分布の成り立ちと形
t分布:平均の検定で使う
サンプル平均 x̄ を標準化するとき、σの代わりにサンプルの標準偏差sを使うと、推定の不確かさのぶんだけ値が余計にばらつきます。その結果できるのがt分布です。形は標準正規分布に似た左右対称の山ですが、裾がやや厚いのが特徴です。自由度は n−1 で、nが大きくなるほど正規分布に近づきます。
t = (x̄ − μ) / (s / √n)
Excelでは両側5%の限界値を =T.INV.2T(0.05, 自由度) で求められます。具体的な手順はt検定とはで解説しています。
χ²分布:分散の検定・度数の検定で使う
標準正規分布に従う値を2乗して足し合わせたものがχ²分布に従います。2乗の和なので0以上の値しか取らず、右に裾を引いた非対称な形です。サンプル分散s²を含む統計量 (n−1)s²/σ² が自由度n−1のχ²分布に従うため、母分散の検定・推定で主役になります。分割表のカイ二乗検定(独立性・適合度)も、同じχ²分布を別の用途で使った検定です。
Excelでは下側の限界値を =CHISQ.INV(α, 自由度)、上側を =CHISQ.INV.RT(α, 自由度) で求めます。非対称なので、両側検定では上下で別の値を使う点に注意してください。
F分布:分散の「比」で使う
2つの独立な分散推定値の比 V₁/V₂ が従うのがF分布です。χ²と同じく0以上で右に裾を引いた形で、分子・分母それぞれの自由度を持ちます。2群のばらつきを比べるF検定のほか、分散分析のF値(要因の分散 ÷ 誤差の分散)もこの分布で判定します。
Excelでは上側の限界値を =F.INV.RT(α, 自由度1, 自由度2) で求めます。
使い分け早見表
「何を調べたいか」から分布・Excel関数・検定を逆引きできるように整理しました。
| 調べたいこと | 分布 | 主なExcel関数 |
|---|---|---|
| 平均が基準値・他群と違うか(σ未知) | t分布 | T.INV.2T / T.TEST |
| 分散が基準値と違うか | χ²分布 | CHISQ.INV / CHISQ.INV.RT |
| 分割表の度数に偏りがあるか | χ²分布 | CHISQ.TEST |
| 2つの群の分散が違うか | F分布 | F.INV.RT / F.TEST |
| 3群以上の平均に差があるか(分散分析) | F分布 | F.INV.RT・分析ツール |
覚え方はやはり「平均はt、分散はχ²、分散の比はF」です。なお3つの分布は無関係ではなく、たとえば自由度mのt分布に従う値を2乗すると、自由度(1, m)のF分布に従います。実際、t分布(自由度10)の両側5%点2.228を2乗すると 4.96 で、F分布(自由度1, 10)の上側5%点4.96と一致します。t検定と分散分析が深いところでつながっている証拠です。
まとめ
3つの標本分布のポイントを整理します。
- t・χ²・Fは、正規母集団からのサンプル統計量が従う標本分布の仲間
- 平均はt分布(左右対称・裾厚め・自由度n−1)
- 分散はχ²分布(0以上・右裾・両側検定は上下別の限界値)
- 分散の比はF分布(0以上・右裾・自由度2つ。分散分析もこれ)
- Excelの限界値関数は T.INV.2T/CHISQ.INV(.RT)/F.INV.RT
どの検定を選ぶか自体に迷うときは統計的検定の選び方(フロー図付き)が入口になります。各分布の用語と公式は統計・実験計画法の用語と公式まとめで、QC検定2級の分野別の学習順はQC検定2級 手法編の攻略ロードマップで確認できます。

