この記事でわかること
- 在庫回転率と回転日数の意味と計算式(Excel対応)
- 全体の回転率が、品目ごとの回転率の単純平均にならない理由
- 発注の回数を変えて回転率を上げる計算
📌 前提知識:安全在庫と発注点|標準偏差から必要量を計算するで、在庫の量の決め方を押さえておくと理解しやすくなります
経理から「部品の在庫が多すぎる。在庫回転率を上げてほしい」と言われました。資材の担当者は、部品の棚を見ても、どれが多すぎるのか分かりません。そもそも、在庫回転率がいくつなら良いのか、どう計算するのかもはっきりしません。
在庫回転率は、在庫がどれだけ速く入れ替わっているかを1つの数字で表します。ただし全体の数字だけを見ると、どこに手を打てばよいかが見えません。この記事では、計算式と回転日数への換算を押さえたうえで、部品3品目の例で品目別に見る理由と、発注の回数を変えたときの効果を計算します。
在庫回転率を使う場面
在庫回転率とは、一定期間(ふつうは1年)に、在庫が何回入れ替わったかを表す指標です。次のような場面で使います。
- 在庫が多すぎないかを確かめるとき。同じ品目の前年や、似た品目と比べます
- 在庫を減らす品目の順番を決めるとき。品目ごとに回転率を出すと、動きの遅い在庫が分かります
- 改善の効果を測るとき。発注の回数や安全在庫を見直した前後で比べます
NG例(△)として、回転率は高ければ高いほど良いわけではありません。在庫を減らしすぎると欠品が起き、ラインが止まります。欠品にどこまで備えるかを決めたうえで、その範囲で回転率を上げるのが基本です。
在庫回転率と回転日数の計算式
在庫回転率は、期間中に出ていった量(金額)を、期間中の平均在庫で割って求めます。
\[ \text{在庫回転率(回)} = \frac{\text{期間中の出庫金額}}{\text{平均在庫金額}} \]
部品や材料の在庫なら、分子は期間中に使った(出庫した)金額です。財務会計で会社全体の在庫回転率を出すときは、分子に売上原価を使うことが多くなっています。平均在庫は、期首と期末の在庫の平均か、月末在庫の12か月の平均で求めます。期末の1点だけで計算すると、季節で在庫が増減する品目では値が大きくぶれます。
回転率を日数に直したものが回転日数で、在庫が平均して何日分あるかを表します。
\[ \text{回転日数(日)} = \frac{365}{\text{在庫回転率}} = \frac{\text{平均在庫金額}}{\text{1日あたりの出庫金額}} \]
Excelでは、B列に年間の出庫金額、C列に平均在庫金額を入れて、=B2/C2(回転率)と =365/D2(回転日数、D列に回転率)です。数量で計算しても同じ考え方ですが、品目をまとめて見るときは金額にそろえます。
例題|部品3品目の回転率を出す
冒頭の工場の部品を、使う金額の大きい順に3品目にまとめました。
| 品目 | 年間出庫金額 | 平均在庫金額 | 回転率 | 回転日数 |
|---|---|---|---|---|
| A | 2,400万円 | 200万円 | 12.00回 | 30.4日 |
| B | 1,200万円 | 300万円 | 4.00回 | 91.3日 |
| C | 1,200万円 | 600万円 | 2.00回 | 182.5日 |
| 全体 | 4,800万円 | 1,100万円 | 4.36回 | 83.6日 |
全体の回転率は単純平均にならない
3品目の回転率を単純に平均すると (12+4+2)÷3=6.00回です。ところが全体の回転率は、出庫金額の合計を平均在庫の合計で割った4.36回です。在庫を多く抱えている品目ほど、全体の回転率に強く効くからです。全体の数字を品目の数字からまとめるときは、合計どうしで割ります。値ごとの重みを考えて平均する考え方は加重平均とは|Excelでの求め方と使いどころで解説しています。
Excelでは、=SUM(B2:B4)/SUM(C2:C4) が全体の回転率です。=AVERAGE(D2:D4) は全体の回転率ではないので注意します。
どの品目に手を打つか
表を見ると、品目Cは出庫金額がBと同じなのに、在庫はBの2倍あり、182.5日分(約半年分)を抱えています。全体の在庫1,100万円のうち、Cだけで600万円です。手を打つなら、まずCです。使う金額の大きさで品目を分けて管理を変える方法はABC分析とは|Excelでのやり方と在庫・不良への使い方で解説しています。
発注の回数を変えると回転率はどう変わるか
平均在庫は、おおまかに次の式で考えられます。1回に発注した量は、使われるにつれて減っていくので、平均すると発注量の半分が残っている計算です。
\[ \text{平均在庫} \approx \frac{\text{1回の発注量}}{2} + \text{安全在庫} \]
品目Cは、年2回・1回600万円分を発注し、安全在庫を300万円持っていました。平均在庫は 600÷2+300=600万円で、表の値と合います。これを年4回・1回300万円分の発注に変えると、平均在庫は 300÷2+300=450万円です。
| 変える前 | 変えた後 | |
|---|---|---|
| 品目Cの平均在庫 | 600万円 | 450万円 |
| 品目Cの回転率 | 2.00回(182.5日) | 2.67回(136.9日) |
| 全体の平均在庫 | 1,100万円 | 950万円 |
| 全体の回転率 | 4.36回(83.6日) | 5.05回(72.2日) |
発注を年2回増やすだけで、在庫が150万円減り、全体の回転日数は11日ほど短くなりました。その代わり、発注や受入の手間は増えます。安全在庫を同じ300万円に保っているので、欠品への備えは同程度です。安全在庫そのものを減らしたい場合は、需要のばらつきと納入までの日数から必要な量を計算し直します。
よくある失敗
- 全体の回転率だけを見る。例題のように、品目ごとに見ないと手を打つ場所が分かりません
- 品目の回転率を単純に平均する。全体は合計どうしで割ります
- 期末の在庫だけで計算する。季節で増減する品目では、月末在庫の平均を使います
- 回転率を上げるために安全在庫を削りすぎる。欠品でラインが止まれば、在庫の削減額を上回る損失が出ます
- 古い在庫が残ったまま新しい在庫を使う。回転率が高くても、奥に古い材料が眠っていることがあります
古い在庫から先に使う運用は先入れ先出し(FIFO)とは|期限切れ材料を防ぐ運用で解説しています。
よくある質問
Q. 在庫回転率の目安はどのくらいですか?
A. 業種や品目で大きく違うため、一律の目安はありません。同じ品目の前年や、同じ工場の似た品目と比べて、急に下がっていないか、ほかより極端に低い品目がないかを見るのが実用的です。
Q. 在庫回転率と在庫回転日数はどちらを使えばよいですか?
A. どちらも同じことを表しています。改善の会議では「在庫が何日分あるか」が伝わりやすいので、回転日数がよく使われます。回転日数=365÷回転率で、いつでも換算できます。
Q. 金額と数量のどちらで計算しますか?
A. 1つの品目の動きを見るなら数量でも構いません。複数の品目をまとめて見るときは、単位がそろう金額で計算します。
Q. 回転率を上げるにはどうすればよいですか?
A. 1回の発注量を減らして発注の回数を増やす、安全在庫を必要な量まで見直す、使われていない在庫を処分する、の3つが基本です。どれも手間や欠品のしやすさと引き換えになるので、例題のように前後の数字を計算して比べます。
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まとめ
- 在庫回転率=期間中の出庫金額÷平均在庫金額。回転日数=365÷回転率で、在庫が何日分あるかを表す
- 全体の回転率は、品目の回転率の単純平均ではなく、合計どうしで割って求める(例題では6.00回ではなく4.36回)
- 品目ごとに見ると、手を打つ品目が分かる。例題では在庫の半分以上を抱える品目C
- 品目Cの発注を年2回から年4回にすると、全体の回転率は4.36回から5.05回へ上がり、在庫は150万円減った
まとめると、在庫の多さを1つの数字で見るなら全体の回転率、手を打つ場所を探すなら品目別の回転率、という使い分けです。まずは在庫金額の大きい品目から、回転日数を出してみてください。
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