品質管理

直行率(RTY)とは|工程を通した歩留まりの計算

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この記事でわかること

  • 直行率(RTY)と最終歩留まりの違い
  • 工程ごとの歩留まりから直行率を求める手順(計算例)
  • 手直しによって見えなくなる損失の測り方
  • 直行率をどこから改善するかの判断

📌 前提知識:不良率の計算方法|%・ppm・DPMOの違いと換算を読んでいると、後半の指標の話が理解しやすくなります

月次の品質報告で「最終検査の良品率99.5%」と報告した。数字だけ見れば優秀です。ところが現場では毎日どこかの工程で手直しが発生していて、残業も減らない。報告書の数字と現場の実感が合わない——製造現場でよくあるずれです。

このずれを説明するのが直行率(RTY:Rolled Throughput Yield)です。この記事では、手直しを一度もせずに全工程を通り抜けた割合という指標の意味と計算手順を、5工程の例で確認します。

直行率を使う場面

直行率が効くのは、次のような条件がそろっているときです。

  • 工程が複数に分かれている:単工程では最終歩留まりと直行率が一致するため、差が出ません
  • 途中の工程に手直しや再検査がある:手直しで救った分が最終検査に現れないため、損失が隠れます
  • 各工程の初回通過率を記録できる:工程ごとの投入数と一発合格数が取れることが前提です

逆に、手直しがまったく発生しない工程や、不適合品をすべて廃棄している工程では、最終歩留まりだけで実態をつかめます(△)。この場合に直行率を持ち出しても、新しい情報は増えません。

直行率と最終歩留まりの違い

最終歩留まり直行率(RTY)
数えるもの最終検査に合格した数一度も手直しせず通った数
手直し品の扱い合格に含める含めない
見えるもの客先へ出せる量工程の実力

どちらが正しいという話ではなく、見ている対象が違います。最終歩留まりは出荷できるかどうかの指標で、直行率は工程が計画どおり流れているかどうかの指標です。手直しという工数を投じて救った分は、最終歩留まりでは合格側に入りますが、直行率では落ちた側に入ります。

直行率の計算(計算例)

5つの工程を通る製品で、各工程の初回通過率(手直しなしで次の工程へ進んだ割合)が次のように記録されているとします。

工程初回通過率
工程1(切削)99%
工程2(穴あけ)98%
工程3(表面処理)97%
工程4(組立)99%
工程5(検査)98%

直行率は、各工程の初回通過率をすべて掛け合わせて求めます。

\[ RTY = 0.99 \times 0.98 \times 0.97 \times 0.99 \times 0.98 = 0.9130 \]

Excelでは次のように計算します。

=PRODUCT(B2:B6)

結果は91.30%です。ここで注意したいのが、5つの数字の単純平均は98.20%だという点です。平均で見れば「どの工程も98%前後」という印象を受けますが、掛け算で積み上がる実態は91.30%で、6.90ポイントの開きがあります。

1000個を投入したときの流れを追うと、差の意味がはっきりします。

工程投入数初回通過手直しへ回る数
工程11000.0990.010.0
工程2990.0970.219.8
工程3970.2941.129.1
工程4941.1931.79.4
工程5931.7913.018.6

一発で通り抜けたのは913個で、これが直行率91.30%の中身です。手直しに回った数は合計で87個あります。

隠れた工場:手直しが見えなくする損失

この工程の最終検査での良品率が99.5%だったとします。手直しした87個のうち、ほとんどが修正されて合格しているためです。ここで2つの数字を並べます。

  • 最終歩留まり:99.5%(報告書に載る数字)
  • 直行率:91.30%(工程が一発で流れた割合)

差は8.20ポイントです。この差の分だけ、手直しの工数・再検査の時間・仕掛品の滞留が発生していますが、最終歩留まりの数字には表れません。この見えない損失を指して隠れた工場と呼びます。工場の中にもうひとつ、手直しだけをしている工場が動いているという意味です。

NG例(△):最終歩留まりが高いことを根拠に、工程は安定していると判断することです。手直しで吸収している限り最終歩留まりは高く保てるため、この指標だけでは工程の実力が上がったのか、手直しの腕が上がったのかを区別できません。

工程数が増えるほど、この効果は強く出ます。仮にすべての工程が99%だとしても、10工程なら90.44%、20工程なら81.79%まで落ちます。1工程あたりの数字が良く見えても、工程数が多い製品ほど直行率は下がるという関係です。

直行率を上げる考え方

  • 最も低い工程から手を付ける:掛け算なので、97%の工程を99%にする効果が最も大きくなります。上の例では工程3が該当します
  • 工程数そのものを見直す:工程を統合できれば、掛ける回数が減ります。QC工程図で流れを俯瞰すると、分割されすぎた工程が見つかることがあります
  • 手直しの工数を記録する:直行率だけでは損失の大きさが金額で見えません。品質コスト(PAFモデル)の失敗コストとして集計すると、改善の優先順位を金額で議論できます
  • ばらつきを抑える:初回通過率が低い工程は、規格に対して工程のばらつきが大きい場合が多くあります。工程能力指数(Cp・Cpk)で実力を確認してから対策を決めます

直行率はシックスシグマのプロジェクトで現状把握によく使われる指標です。改善前後で比べると、手直しを含めた工程全体の変化が1つの数字で追えます。

よくある失敗

  • 各工程の平均で語ってしまう:上の例のように、平均98.2%と直行率91.3%では受け取り方がまったく変わります。工程をまたぐ指標は掛け算で求めます
  • 手直し品を初回通過に含めて数える:手直し後に合格した分を初回通過率に入れると、直行率は最終歩留まりに近づき、指標の意味がなくなります
  • 工程数の違う製品どうしを直行率で比べる:工程が多い製品は構造的に不利です。比べるなら同じ製品の時系列か、工程あたりに換算した値で見ます

よくある質問(FAQ)

Q. 直行率と歩留まりは同じ意味ですか?

A. 違います。歩留まりは通常、最終的に合格した割合を指し、手直しで救った分も含みます。直行率は手直しを一度も経ずに通った割合なので、手直しがある工程では直行率のほうが低くなります。

Q. 直行率は何%あればよいのですか?

A. 業種や工程数によって水準が大きく変わるため、一律の合格ラインはありません。同じ製品の推移を追い、改善前後で比較する使い方が実務的です。

Q. 廃棄した分と手直しした分は区別しますか?

A. 直行率の計算上はどちらも「初回で通らなかった」に入るため区別しません。ただし損失の性質は違うので、金額で評価するときは廃棄と手直しを分けて集計します。

Q. 直行率はQC検定で出題されますか?

A. 用語として直接問われる頻度は高くありませんが、工程能力や不良率と合わせた工程管理の考え方として関連します。掛け算で積み上がるという構造を理解しておくと応用が利きます。

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まとめ

  • 直行率(RTY)は各工程の初回通過率を掛け合わせた値で、手直しなしで通った割合を表す
  • 各工程98%前後でも5工程で91.30%まで落ち、単純平均98.20%との差は6.90ポイントに達する
  • 最終歩留まり99.5%との差8.20ポイントが、手直しで吸収されている隠れた損失にあたる
  • 掛け算のため、最も低い工程を改善する効果が最も大きい

まとめると、客先へ出せる量を見るなら最終歩留まり、工程の実力と手直しの負担を見るなら直行率、という使い分けです。

手直しを減らす議論を金額に換算したい場合は品質コスト(PAFモデル)、規格を外れた品物の処置そのものを整理したい場合は特別採用(特採)もあわせてご確認ください。工程の流れ全体を短くする視点はリーンシックスシグマで扱っています。

工程ごとの歩留まりを掛け合わせて総合歩留まりを出す手順と、不良の数ではなく損失金額で改善の順番を決める方法は歩留まりとは|計算式とExcelでの求め方で解説しています。

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