この記事でわかること
- VE(価値工学)の意味と、価値=機能÷コストの考え方
- 機能定義・機能評価・代替案作成の手順
- 機能ごとの価値指数と削減余地の計算(Excel対応)
📌 前提知識:QCDとは|品質・コスト・納期の測り方と優先順位でコストを品質・納期と並べて見る考え方を押さえておくと理解しやすくなります
ポンプを固定するブラケット組立品の原価を、来期までに2割下げるよう求められました。購買からは「材料を安い鋼板に替える」「めっきの業者を替える」といった案が出ています。どれも数十円は下がりそうですが、2割には届きません。そもそも、この部品のどこにお金がかかっているのでしょうか。
部品ではなく「この部品は何をしているか(機能)」から見直し、機能ごとにコストが見合っているかを数字で比べる。これが VE(価値工学)です。この記事では、考え方と手順を、ブラケット組立品で価値指数を計算する例まで追います。
VEを使う場面
VE(Value Engineering、価値工学)は、製品やサービスの機能とコストの比を「価値」とし、必要な機能をより少ないコストで果たす方法を、チームで組織的に探す手法です。次のような場面で使います。
- 大きな原価低減が求められているとき。材料や購入先の変更だけでは届かない幅を、機能の果たし方から見直します
- 新製品の設計段階。コストの大半は設計で決まるので、図面が固まる前に使うほど効果が大きくなります
- 過剰品質が疑われるとき。使い方に対して必要以上の仕様になっている部分を、機能の要求レベルから見つけます
NG例(△)として、安全や法規にかかわる機能を削る目的には使いません。VEは機能を守ったまま方法を変える手法で、品質を下げて安くするのとは違います。変更案はFMEAとは|RPNの計算とワークシートの書き方・例で故障の影響を確かめてから採用します。
価値=機能÷コストの考え方
VEでは、価値を次の式で表します。
\[ V = \frac{F}{C} \]
V は価値(Value)、F は機能(Function)、C はコスト(Cost)です。機能を金額で表すため、F には「その機能を果たすのに必要な最低限のコスト」を見積もって使います。これを機能評価値と呼びます。C は現状でその機能にかかっているコストです。V が1より小さいほど、機能に対してお金をかけすぎていることを示します。
この式から、価値を高める代表的な形は次の4つです(機能を少し下げてコストを大きく下げる形を加えて、5つとする資料もあります)。
| 形 | 機能 F | コスト C | 例 |
|---|---|---|---|
| 1 | そのまま | 下げる | 同じ性能のまま部品点数を減らす |
| 2 | 上げる | そのまま | 同じ原価で寿命を延ばす |
| 3 | 上げる | 下げる | 一体成形で強度を上げつつ組立工数を減らす |
| 4 | 大きく上げる | 少し上げる | わずかなコスト増で使い勝手を大きく改善する |
コストを下げるだけでなく、機能を上げる方向も価値の向上に含まれるのが VE の特徴です。どの機能を「上げる」と顧客が喜ぶかは、狩野モデルとは|魅力的品質と当たり前品質の分類で見当をつけられます。
VEの手順|機能定義・機能評価・代替案作成
- 機能定義:対象が果たしている機能を「名詞+動詞」の短い言葉で書き出す(例:荷重を支える、位置を決める)。機能どうしを「目的と手段」の関係でつなぎ、機能系統図にまとめる
- 機能評価:部品ごとのコストを機能に割り振って現状コスト C を出し、機能評価値 F と比べる。価値指数 V=F÷C と削減余地 C−F で、見直す機能の順番を決める
- 代替案作成:順番の高い機能について、同じ機能を果たす別の方法をチームで出し合い、評価して具体案にまとめる
手順1で「部品」ではなく「機能」を書き出すのが要です。「ピンを安くする」と考えると改善はピンの中に閉じますが、「位置を決める」と書けば、ピンをなくして別の方法で位置を決める案まで視野に入ります。
VEを行う時期は、企画段階(ゼロ・ルックVE)、開発設計段階(ファースト・ルックVE)、量産中の改善(セカンド・ルックVE)に分けて呼ばれます。早い段階ほど変えられる範囲が広く、効果も大きくなります。
例題|ブラケット組立品の価値指数を計算する
冒頭のブラケット組立品は、1個あたり1,200円です。設計・製造・購買・品質保証のメンバーで、まず部品ごとのコストを機能に割り振りました。
| 部品(コスト) | 荷重を支える | 位置を決める | 振動を抑える | 錆を防ぐ |
|---|---|---|---|---|
| 本体・鋼板プレス(520円) | 380 | 140 | ||
| 位置決めピン2本(160円) | 160 | |||
| 防振ゴム(240円) | 240 | |||
| 亜鉛めっき(180円) | 180 | |||
| ボルト類(100円) | 100 | |||
| 機能別の現状コスト C | 480 | 300 | 240 | 180 |
本体の520円は、荷重を支えるための板厚・形状の分(380円)と、ピンを通す穴の加工や精度の分(140円)に分けています。割り振りの比率はチームの見積もりで、厳密な正解はありません。
機能評価値と価値指数を出す
次に、それぞれの機能を最も安く果たすならいくらかかるかを見積もり、機能評価値 F とします。社内の類似品の実績や、他の方法の見積もりを使います。
Excelでは、A列に機能、B列に現状コスト C、C列に機能評価値 F を入れ、2行目に次の式を入れて下へコピーします。
=C2/B2(D列:価値指数 V)
=B2-C2(E列:削減余地 C−F)
| 機能 | 現状コスト C | 機能評価値 F | 価値指数 V=F÷C | 削減余地 C−F |
|---|---|---|---|---|
| 荷重を支える | 480 | 420 | 0.875 | 60 |
| 位置を決める | 300 | 150 | 0.500 | 150 |
| 振動を抑える | 240 | 200 | 0.833 | 40 |
| 錆を防ぐ | 180 | 60 | 0.333 | 120 |
| 合計 | 1,200 | 830 | 0.692 | 370 |
価値指数が最も低いのは「錆を防ぐ」(0.333)ですが、削減できる金額が最も大きいのは「位置を決める」(150円)です。価値指数だけで並べると、金額の大きい改善を後回しにしてしまいます。この例では、V が低く、かつ C−F も大きい2つの機能を優先しました。
代替案を出して効果を確かめる
- 位置を決める:ピン2本と穴加工をやめ、本体のプレスで位置決めの突起を同時に成形する。300円→150円
- 錆を防ぐ:使われるのは屋内の筐体の中で、求められるのは「出荷から組み込みまでの3か月、錆びないこと」と確認した。亜鉛めっきを防錆油の塗布に変える。180円→60円
錆の機能では、まず要求のレベルを確かめたのがポイントです。屋外で何年も使う部品と同じ防錆を、屋内の部品にかけていました。
2つの案を採用すると、1個あたりのコストは 1,200円 → 930円(270円、22.5%の削減)です。全体の価値指数は 830÷1,200=0.692 から 830÷930=0.892 に上がります。月産5,000個なら月135万円、年1,620万円の削減で、プレス型の改修に80万円かかっても1か月かからずに回収できます。購買が出した材料変更の案では届かなかった2割を、機能の見直しで超えられました。
コストの数字を品質・納期と並べてどう扱うかはQCDとは|品質・コスト・納期の測り方と優先順位、作業の工数から削る方法はECRSとは|改善の4原則と工数の計算例で扱っています。
よくある失敗
- 部品の値下げ交渉で終わる。機能を書き出さないと、今の部品構成のままの改善にとどまります
- 機能の要求レベルを確かめない。例題の防錆のように、使われ方を確かめると、必要以上の仕様が見つかります
- 価値指数の順だけで決める。削減余地 C−F の金額もあわせて見ます
- 信頼性の確認を省く。方法を変えたら、試作品で機能が守られているかを必ず確かめます。設計の変更点の確認はデザインレビューとは|DRの進め方とチェックリストの場で行います
よくある質問
Q. VEとVAの違いは何ですか?
A. もともとは同じ考え方で、VA(価値分析)は1940年代に米国のGE社で生まれました。日本では、量産中の製品や購入品を見直すときに VA、設計段階から取り組むときに VE と呼び分けることが多く、今は両方をまとめて VE と呼ぶのが一般的です。
Q. VEとコストダウンは何が違いますか?
A. 一般的なコストダウンは、今の部品や工程を前提に値段を下げようとします。VE は「何のためにあるか(機能)」から出発し、機能を守ったまま果たし方そのものを変えます。機能を上げる方向の改善も含む点も違います。
Q. 機能評価値はどうやって決めますか?
A. その機能を最も安く果たす方法のコストを見積もるのが基本です。社内の類似品の実績、別の方法の見積もり、他社品の分解調査などを使います。最初から精密な値は出ないので、チームで根拠を話し合いながら決め、改善が進むたびに見直します。
Q. 価値指数が1を超えたらどう考えますか?
A. 現状コストが機能評価値より低いということなので、見積もりが高すぎた可能性と、必要な機能が足りていない可能性の両方を確かめます。後者なら、コストをかけて機能を上げるのが価値の向上につながる場合もあります。
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まとめ
- VE(価値工学)は、価値を V=F÷C(機能÷コスト)とし、機能を守ったまま果たし方を変えて価値を高める手法
- 手順は機能定義→機能評価→代替案作成。部品ではなく「名詞+動詞」の機能から考える
- 見直す順番は、価値指数 V の低さと削減余地 C−F の大きさの両方で決める
- 例題では「位置を決める」「錆を防ぐ」を見直し、1,200円→930円(22.5%減)、価値指数は0.692→0.892に上がった
まとめると、材料や購入先の見直しで届かない原価低減は、機能の見直しから考えるのが VE です。まずは対象の部品を1つ選び、果たしている機能を「名詞+動詞」で書き出すところから始めてみてください。
顧客の要求を品質特性に落とし込み、どの機能に力を入れるかを決める方法はQFDとは|品質機能展開と品質表の作り方で解説しています。あわせてご確認ください。

