統計的仮説検定

パーセント点とCDFとは|正規分布での求め方

記事内に広告が含まれています。

この記事でわかること

  • CDF(累積分布関数)の意味とNORM.DIST・NORM.S.DISTでの求め方
  • パーセント点(分位点)の意味とNORM.INV・NORM.S.INVでの逆算
  • 規格を超える不良率の見積もりや3σルールとの関係

📌 前提知識:Zスコアと偏差値の求め方正規分布とはを読んでいると理解しやすくなります

引張強度の上限規格が550MPaの製品を作っているとします。工程の平均は520MPa、標準偏差は15MPa。この工程で作ったとき、上限規格を超えてしまう製品はどれくらいの割合になるでしょうか。平均や標準偏差の数字だけを眺めていても、この問いには答えられません。

そこで使うのがCDF(累積分布関数)です。「ある値以下になる確率」を返してくれます。逆に「上位◯%に入るのは何MPa以上か」を知りたいときに使うのがパーセント点(分位点)です。この記事ではCDFとパーセント点の考え方を、正規分布の例題で整理します。

CDF・パーセント点を使う場面

  • ある値以下(または以上)になる確率を知りたいとき(規格を超える不良率の見積もり)→CDF
  • ある確率に対応する値を知りたいとき(上位5%に入るのは何MPa以上か)→パーセント点

NG例(△): 確率密度(後述のFALSE指定)を「その値になる確率」だと思い込んで使うのは誤りです。連続分布では1点の確率は常にゼロで、意味を持つのは範囲の確率だけです。

CDFとは|F(x)=P(X≤x)

CDF(累積分布関数)は、ある値x以下になる確率を返す関数です。

\[F(x) = P(X \le x)\]

標準正規分布(平均0、標準偏差1)のCDFはΦ(ファイ)と書かれることが多く、Excelでは次の関数が対応します。

=NORM.S.DIST(z, TRUE)(標準正規分布のCDF)

=NORM.DIST(x, 平均, 標準偏差, TRUE)(平均・標準偏差をそのまま使う場合のCDF)

ここで最後の引数をTRUEにすることが重要です。TRUEは累積確率(CDF)、FALSEは確率密度(グラフの高さそのもの)を返します。確率が欲しいときは必ずTRUEです。

例題|上限規格550MPaを超える割合

工程の平均は520MPa、標準偏差は15MPaです。上限規格550MPaに対するZスコアを求めます。

\[Z = \frac{550 – 520}{15} = 2.0\]

標準正規分布でZ=2.0以下になる確率は次のとおりです。

=NORM.S.DIST(2.0, TRUE) → 0.9772

つまり、製品の97.72%は550MPa以下(規格内)です。規格を超える割合は、全体から引いて求めます。

\[1 – 0.9772 = 0.0228\]

上限規格を超える製品はおよそ2.28%です。この計算はZスコアに標準化しなくても、NORM.DIST関数に平均・標準偏差を直接渡せば一発で求まります。

=NORM.DIST(550, 520, 15, TRUE) → 0.9772(結果は同じ)

ppm換算や不良率の見方は不良率の計算方法|%・ppm・DPMOの違いで解説しています。

パーセント点(分位点)とは|CDFの逆

パーセント点は、CDFの逆の問いに答えるものです。「確率pに対応する値xはいくつか」を求めます。

\[x = F^{-1}(p)\]

Excelでは次の関数が対応します。

=NORM.S.INV(p)(標準正規分布のパーセント点。zの値が返る)

=NORM.INV(p, 平均, 標準偏差)(平均・標準偏差をそのまま使う場合のパーセント点)

先ほどの工程で「上位2.5%に入るのは何MPa以上か」を求めてみます。上位2.5%は、下から数えると累積確率97.5%の点にあたります(p=0.975)。

=NORM.S.INV(0.975) → 1.96

これを実際のMPaに戻します。

\[x = 520 + 15 \times 1.96 = 549.4\]

549.4MPa以上の製品が、上位2.5%に入る計算です。Excelなら平均・標準偏差を直接渡して一度に求められます。

=NORM.INV(0.975, 520, 15) → 549.4

ここで出てきたz=1.96は、両側検定の棄却域でおなじみの値です。詳しくは片側検定と両側検定の違いで解説しています。

3σルールとの関係

CDFを使うと、平均±3σの範囲に収まる確率も計算できます。

\[P(-3 \le Z \le 3) = \text{NORM.S.DIST}(3,\text{TRUE}) – \text{NORM.S.DIST}(-3,\text{TRUE})\]

Excelで計算すると 0.99865 − 0.00135 = 0.9973。平均±3σの範囲に収まる確率は99.73%、外れる確率は0.27%です。この数字は3シグマとは|68-95-99.7ルールで扱っている値そのもので、CDFの計算から導かれています。工程能力指数Cp・Cpkの合格ラインも、根っこはこのCDFの考え方です。詳しくは工程能力指数(Cp・Cpk)の計算を参照してください。

よくある質問

Q. NORM.DISTの「累積」をTRUEにするかFALSEにするか迷います。

「ある値以下になる確率」を求めたいときは必ずTRUEです。FALSEにすると確率密度(面積ではなく高さ)が返り、そのまま確率として使うと桁違いの誤った値が出ます。CDF・パーセント点の計算では基本的にTRUEを使うと覚えておくと安全です。

Q. パーセント点は「上位」と「下位」のどちらから数えますか?

関数はどちらも「累積確率p以下になる値」を返す設計です。「上位2.5%点」を求めたいときは、下から数えた累積確率97.5%点(p=0.975)を計算します。「上位」と言われたら1から引いてpに変換する、という手順を挟むと混同しません。

Q. 標準正規分布のNORM.S.DISTと通常のNORM.DIST、どちらを使えばよいですか?

平均と標準偏差をそのまま使いたいならNORM.DIST、Zスコアに標準化したあとならNORM.S.DISTです。どちらを使っても、標準化の手順を挟むかどうかの違いだけで結果は同じです。実務ではNORM.DISTに平均・標準偏差を直接渡すほうが手間が省けます。

まとめ

  • CDF:F(x)=P(X≤x)。Excelは=NORM.DIST(x,平均,σ,TRUE)(標準正規なら=NORM.S.DIST(z,TRUE)
  • パーセント点:CDFの逆。確率から値を求める。Excelは=NORM.INV(p,平均,σ)(標準正規なら=NORM.S.INV(p)
  • 累積(TRUE)と密度(FALSE)を混同しない。確率が欲しいときは必ずTRUE
  • 上限規格を超える割合の見積もりや、上位◯%点の算出に使える
  • ±3σ以内に収まる確率99.73%も、この考え方から導かれる

規格を超える割合など「ある値から確率」を知りたいときはCDF、上位◯%点など「ある確率から値」を知りたいときはパーセント点を使います。この2つは同じ関係を逆から見ているだけです。Zスコアの基本はZスコアと偏差値の求め方、分布の全体像は確率分布の種類一覧で解説しています。さらに体系的に学びたい方向けに、レベル別のおすすめ書籍を統計学・実験計画法のおすすめ本まとめで紹介しています。

タイトルとURLをコピーしました