実験計画法

混合物計画とは|配合実験に直交表が使えない理由

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この記事でわかること

  • 配合実験に直交表や要因配置が使えない理由
  • 単体格子計画で実験点を決める手順
  • Scheffeの多項式の係数をExcelで求める方法
  • 配合でしか出ない相乗効果の見つけ方

📌 前提知識:実験計画法とは?3原則と手法の選び方を読んでいると理解しやすくなります

樹脂コンパウンドの配合を見直すことになりました。ベース樹脂A、フィラーB、添加剤Cの3成分で、引張強度を上げたい。実験計画法の本を開いて、3因子3水準ならL9直交表だと当たりをつけました。

ところが割り付けようとして手が止まります。A=60%、B=20%、C=20%という行はよいとして、次の行がA=80%、B=40%、C=20%になってしまう。合計が140%です。

配合では成分を独立に動かせません。ひとつ増やせば、どれかが必ず減ります。この制約がある実験は、直交表とは別の組み方が要ります。

混合物計画を使う場面

混合物計画(mixture design)が必要になるのは、水準の合計が一定に固定される実験です。次のような場面が該当します。

  • 樹脂・塗料・接着剤の配合比を決めるとき。成分比の合計は必ず100%です
  • 合金や薬剤の組成を最適化するとき
  • 複数の原料をブレンドして特性を出すとき。原料の産地違いをブレンドする場合も同じです

逆に、温度・圧力・時間のように独立に動かせる因子は通常の実験計画法で扱います。NG例(△)として、配合比のうち2成分だけを因子にして「残りはAで調整」とするやり方は避けてください。それはAを含めた3成分を動かしているのと同じで、結果をAの効果として読めなくなります。

判断の分かれ目は単純です。ある成分を増やしたとき、他の成分を変えずにいられるか。いられないなら混合物計画です。

なぜ直交表が使えないのか

3成分の配合比には次の制約があります。

\[ x_1 + x_2 + x_3 = 1, \quad x_i \geq 0 \]

Excelでは、3成分目を残りから求める形にしておくと入力ミスを防げます。

=1-B2-C2   ← B2にA、C2にBを入れ、D2にCを計算させる

この式があるため、3つのうち2つが決まれば残りは自動的に決まります。動かせる自由度は3ではなく2です。

項目通常の要因配置混合物計画
因子の動かし方独立に設定できる合計が固定される
3因子の自由度32
実験点の置き方直交表・格子単体(三角形)の上

実験できる領域は、立方体ではなく正三角形の面です。3つの頂点が各成分100%、辺が2成分の配合、内部が3成分の配合です。

もうひとつ、定数項を置けないという事情もあります。通常の回帰式には切片がありますが、混合物では \( x_1+x_2+x_3=1 \) なので切片と各項が重なってしまいます。そこで切片を外した形を使います。

この制約の扱いは多重共線性と同じ問題です。説明変数が完全に従属しているので、そのままでは係数が決まりません。

単体格子計画で実験点を決める

三角形の上に実験点を規則的に置く方法が単体格子計画です。2次の式を当てるなら、3つの頂点+3つの辺の中点=6点を取ります。

点A(x1)B(x2)C(x3)
頂点1100
頂点2010
頂点3001
辺の中点0.50.50
辺の中点0.500.5
辺の中点00.50.5

ここに重心(1/3ずつ)を1点足すのが実務での定番です。7点目は係数の計算には使わず、式のあてはまりを確認する検証点として働きます。確認のしかたは確認実験と同じ考え方です。

当てる式はScheffeの2次多項式です。切片がなく、2乗項もありません。

\[ y = b_1x_1 + b_2x_2 + b_3x_3 + b_{12}x_1x_2 + b_{13}x_1x_3 + b_{23}x_2x_3 \]

Excelでは係数を$G$1:$G$6に置き、SUMPRODUCTで1行にまとめられます。

=SUMPRODUCT($G$1:$G$3, B2:D2)+$G$4*B2*C2+$G$5*B2*D2+$G$6*C2*D2

\( b_i \) は成分iだけを100%にしたときの値、\( b_{ij} \) は2成分を混ぜたときに単純な足し算からどれだけずれるかを表します。

例題|3成分コンパウンドの引張強度

ベース樹脂A、フィラーB、添加剤Cの3成分で、単体格子計画の6点+重心を実験しました。引張強度(MPa)です。

配合A / B / C引張強度
A単独1 / 0 / 032.0
B単独0 / 1 / 025.0
C単独0 / 0 / 118.0
A・B等量0.5 / 0.5 / 034.0
A・C等量0.5 / 0 / 0.527.0
B・C等量0 / 0.5 / 0.523.0

単独成分の係数は、そのまま測定値です。

\[ b_1 = 32.0, \quad b_2 = 25.0, \quad b_3 = 18.0 \]

この3つは単独実験の測定値そのものなので、Excelでは該当セルを参照するだけです。

=D2   → 32.0   (b1・A単独)
=D3   → 25.0   (b2・B単独)
=D4   → 18.0   (b3・C単独)

交互作用にあたる係数は、辺の中点の値から次の式で求まります。単体格子計画では連立方程式を解かずに直接計算できます。

\[ b_{ij} = 4y_{ij} – 2y_i – 2y_j \]

Excelではセル参照の引き算だけです。

=4*D5-2*D2-2*D3   → 22.0   (b12)
=4*D6-2*D2-2*D4   → 8.0    (b13)
=4*D7-2*D3-2*D4   → 6.0    (b23)

確かめます。A・B等量の点は \( 32 \times 0.5 + 25 \times 0.5 = 28.5 \) のはずが、実測は34.0。5.5も上振れしています。この差を拾っているのが \( b_{12} = 22.0 \) です。

重心で式の精度を確認します。

\[ y = \frac{32.0 + 25.0 + 18.0}{3} + \frac{22.0 + 8.0 + 6.0}{9} = 25.0 + 4.0 = 29.0 \]
=(32+25+18)/3+(22+8+6)/9  → 29.0

実験で得た重心の値がこれに近ければ、2次の式で足りていると判断できます。大きく外れるなら3次の項を足すか、実験点を増やします。

⭐ 単独最良の成分より、配合のほうが強い

係数を並べると、A・Bの組み合わせだけ突出しています。

組み合わせ係数意味
A・B+22.0強い相乗効果
A・C+8.0弱い相乗効果
B・C+6.0弱い相乗効果

A・Bの辺の上だけを見ます。\( x_3 = 0 \) として \( x_2 = 1 – x_1 \) を代入すると、1変数の2次式へ変わります。

\[ y = 25.0 + 29.0x_1 – 22.0x_1^2 \]

頂点を求めます。微分して0になる点です。

\[ x_1 = \frac{29.0}{2 \times 22.0} = 0.6591 \]
=29/(2*22)  → 0.6591
=25+29*0.6591-22*0.6591^2  → 34.557

A 65.9%・B 34.1%の配合で34.56 MPa。単独で最良のA(32.0)より2.5MPa高く、等量配合(34.0)も上回ります。

⭐ここが混合物計画の効きどころです。最良の答えが、どの単独成分でもなく、等量配合でもない場所にある。成分を独立に動かせる実験なら、各因子の最良水準を組み合わせれば最適解に近づきます。配合ではその考え方が通用しません。

直交表で「Aを増やす方向が良い」と読み取って、A単独まで振り切れば32.0です。配合特有の山を見逃します。応答曲面法が連続量の曲面を扱うのと同じ発想を、三角形の領域に持ち込んだものだと捉えてください。

なお、実務では成分に下限や上限があります。「フィラーBは20%以上」のような制約がつくと、三角形の一部しか使えません。その場合は制約領域の頂点と辺の中点を実験点にする極値配合計画へ切り替えます。

よくある質問

Q. 成分が4つ以上でも同じ方法が使えますか?

A. 使えます。三角形が四面体、さらに高次元の単体に変わるだけで、考え方は同じです。ただし2次の式に必要な点数は成分数をkとしてk(k+1)/2で増えます。3成分なら6点、4成分なら10点、5成分なら15点です。成分が多いときは、影響の小さい成分を固定して次元を下げるほうが現実的です。

Q. 配合比以外に温度などの因子も同時に変えたい場合は?

A. 混合物計画と通常の要因配置を組み合わせます。配合の各点で温度を2水準振る、という形です。実験回数は掛け算で増えるので、配合側の点数を絞ってから組みます。配合の効果と温度の効果が独立でない場合は、その交互作用も式に入れる必要があります。

Q. Excelのソルバーで最適配合を探せますか?

A. 探せます。目的セルにScheffeの式を組み、変数セルを3成分の比率、制約条件に「合計=1」と「各成分≧0」を入れて最大化します。今回のように辺の上に答えがある場合でも、内部に答えがある場合でも同じ手順で求まります。ただし式自体が2次なので、解析的に微分して解くほうが速い場面も多いです。

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まとめ

  • 成分比の合計が固定される配合実験では、直交表も要因配置も使えない。自由度が成分数−1になるため
  • 実験点は三角形(単体)の上に置く。2次の式なら頂点3点+辺の中点3点、検証用に重心を1点
  • Scheffeの多項式には切片も2乗項もない。b_ij = 4y_ij − 2y_i − 2y_j で直接求まる
  • 今回の例ではA・Bの係数が+22.0と突出し、A 65.9%の配合が34.56MPaで単独最良のA(32.0)を上回った
  • 成分に下限・上限がある場合は極値配合計画へ切り替える

まとめると、独立に動かせる因子は直交表、合計が固定される配合は混合物計画、という使い分けです。そして配合の答えは、単独成分の良し悪しを足し合わせた先にはありません。三角形の内側を実際に測ってください。

この記事で扱った実験点の選び方の全体像は因子と水準の決め方、連続量の最適化は応答曲面法で解説しています。あわせてご確認ください。

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