この記事でわかること
- Zスコアの意味と、偏差値との関係(偏差値=50+10Z)
- Zスコアから「上位何%か」を求める方法(Excel対応)
- 単位の違う特性を比べるコツと、|Z|>3による外れ値判定
📌 前提知識:標準偏差・分散の求め方を読んでいると理解しやすくなります
ある製品の寸法を測ったら53mmでした。規格の範囲には入っています。ではこの53mmは、工程全体の中で「良いほう」なのか「際どいほう」なのか。平均値や規格の上下限を眺めるだけでは、この製品が集団の中でどのあたりに位置するのかが見えてきません。
そこで使うのがZスコアです。測定値が平均から標準偏差いくつぶん離れているかに変換すると、集団の中での位置が一目で分かります。学校でおなじみの偏差値も、実はこのZスコアから作られています。
この記事では、Zスコアと偏差値の求め方、そして「上位何%か」への変換や単位の違うデータの比較まで、製造業の例題で整理します。
Zスコア・偏差値を使う場面
標準化の考え方が効いてくるのは、次のような場面です。
- 1つの測定値の位置を知りたいとき(この製品は集団の中で上位か下位か)
- 単位やスケールの違う特性を比べたいとき(寸法mmと硬度HRの「相対的な高さ」をそろえる)
- 外れ値かどうかを数値で判定したいとき(平均から何σ離れていれば異常とみなすか)
1つの値を集団の中に位置づけるのがZスコアの役割です。データ全体を機械学習の前処理などで一括変換する場合も同じ計算を使いますが、目的が違います。前処理としての標準化・正規化はデータの標準化・正規化で解説しています。
Zスコアとは|平均から何σ離れているか
Zスコアは、測定値 \(x\) が平均 \(\mu\) から標準偏差 \(\sigma\) 何個ぶん離れているかを表す値です。次の式で求めます。
\[Z = \frac{x – \mu}{\sigma}\]
Excelでは専用のSTANDARDIZE関数があります。平均と標準偏差を指定するだけです:
=STANDARDIZE(x, 平均, 標準偏差)(生データから直接なら =(x-AVERAGE(範囲))/STDEV.S(範囲))
Zスコアの読み方はシンプルです。
- Z=0:ちょうど平均(真ん中)
- Z=+1:平均より1σ上(上位のほう)
- Z=−2:平均より2σ下(下位のほう)
符号が位置の上下を、絶対値が平均からの距離を表します。単位が消えるので、mmでも硬度でも同じ物差しで語れます。
偏差値はZスコアを見やすくしただけ
学校の偏差値は、Zスコアを次の式で変換したものです。
\[\text{偏差値} = 50 + 10 Z\]
Excelなら =50+10*Z です。平均を50、1σぶんを10点に置き換えているだけで、中身はZスコアと同じです。Z=0が偏差値50、Z=+1が偏差値60、Z=−1.5が偏差値35。マイナスの値が出て直感的でないZスコアを、正の見やすい数字に直したものが偏差値です。
例題|寸法53mmは上位何%か
ある工程の製品寸法が、平均50.0mm、標準偏差2.0mmだったとします。ここで53mmの製品が出ました。Zスコアを求めます。
\[Z = \frac{53 – 50}{2} = 1.5\]
偏差値に直すと 50 + 10×1.5 = 65。平均より1.5σ上にある、上位寄りの製品だと分かります。
さらに「上位何%か」も求められます。寸法が正規分布に従うとすると、Zスコアから正規分布の割合を返すNORM.S.DIST関数が使えます。
=NORM.S.DIST(1.5, TRUE) → 0.9332
これは「53mm以下の割合が93.32%」という意味です。したがって53mmより大きい製品は 1 − 0.9332 = 約6.7%。この53mmは、上から数えて7%以内に入る値だったわけです。「規格内だが、かなり上寄り」という位置づけが数値で言えます。
単位の違う特性を比べる
Zスコアがいちばん役立つのが、単位もスケールも違う特性どうしの比較です。生の値では比べようがない2つを、Zに直すと横並びにできます。
同じ製品で、寸法と硬度を測ったとします。
| 特性 | 測定値 | 平均 μ | 標準偏差 σ | Zスコア | 偏差値 |
|---|---|---|---|---|---|
| 寸法 | 53 mm | 50 | 2 | 1.5 | 65 |
| 硬度 | 48 HR | 45 | 5 | 0.6 | 56 |
生の値だけ見ると、53と48で寸法のほうが大きい数字です。ですがそれは単位が違うだけで、比較になっていません。Zスコアに直すと、寸法は1.5σ上、硬度は0.6σ上。この製品は寸法のほうが、集団の中では相対的に高い位置にあると正しく言えます。
複数の測定値を標準化してから足し合わせれば、単位のばらばらな特性をまとめた総合スコアも作れます。工程能力の観点でどれだけσ内に収まっているかは工程能力指数(Cp・Cpk)とあわせて見ると理解が深まります。
外れ値の判定に使う||Z|>3の目安
Zスコアは外れ値の目安にも使えます。よく使われるのが|Z|>3という基準です。
正規分布では、平均±3σの外側に出る確率は約0.27%しかありません。ですから|Z|が3を超える値は「めったに出ない=外れ値の疑い」と判断します。この0.27%という数字は、管理図や工程能力の土台でもあります。詳しくは3シグマとは|68-95-99.7ルールで解説しています。
ただし注意もあります。データが少ないときや、分布が正規分布から大きくずれているときは、Zスコアだけの判定は当てになりません。平均と標準偏差そのものが外れ値に引っ張られるためです。より頑健な判定が必要なら、外れ値の検出方法|Grubbs検定・IQR法を併用します。
まとめ
- Zスコア=測定値が平均から何σ離れているか。Z=(x−μ)/σ(Excelは
=STANDARDIZE(x,平均,σ)) - 偏差値=50+10Z。Zを正の見やすい数字に直しただけで中身は同じ
- 正規分布なら
=NORM.S.DIST(Z,TRUE)で「上位何%か」が分かる - 単位の違う特性も、Zに直せば相対的な高さを横並びで比較できる
- |Z|>3は外れ値の目安(±3σ外0.27%)。少数・非正規データでは他手法と併用
平均や規格の合否だけでなく、「集団の中のどこにいるか」まで見る。Zスコアを1つ挟むだけで、データの読み方に位置の情報が加わります。標準偏差そのものの求め方は標準偏差・分散の求め方、Zスコアの土台になる分布は正規分布とはで解説しています。さらに体系的に学びたい方向けに、レベル別のおすすめ書籍を統計学・実験計画法のおすすめ本まとめで紹介しています。

