この記事でわかること
- 加重平均の意味と、単純平均では誤る場面
- ExcelのSUMPRODUCTで加重平均を求める手順
- ロット別の不良率、材料の平均単価、平均サイクルタイムの計算例
- 重みに何を選ぶかの判断基準
📌 前提知識:平均・中央値・最頻値の求め方と使い分け|Excelで計算を読んでいると理解しやすくなります
月次の品質会議の資料で、3つのロットの不良率が並んでいました。2.0%、8.0%、1.0%。担当者はこの3つをAVERAGE関数で平均し、「今月の不良率は3.67%」と報告しました。先月は1.5%前後だったので、会議室がざわつきます。
ところが実際に不良品を数え直すと、今月の不良は6,000個中84個で1.40%でした。8.0%だったロットは200個しか作っていない小さな試作ロットだったのです。この記事では、個数や量の違いを平均に反映させる加重平均の考え方と、Excelでの求め方を整理します。
加重平均を使う場面
加重平均は、それぞれの値に「重み」を掛けて合計し、重みの合計で割った平均です。重みには、個数・量・時間など、その値がどれだけの分量を代表しているかを使います。
次のような場面で使います。
- すでに率や平均になっている値を、さらに平均するとき。ロット別の不良率、ライン別の稼働率、班別の平均寸法など、元の分母が違う値をまとめる場面です
- 量の違う仕入れの単価をまとめるとき。材料の平均単価や在庫の評価額を求める場面です
- 品種ごとに生産数が違うとき。平均サイクルタイムや平均工数を、実際の生産構成に合わせて求めます
NG例(△)として、個々の測定値(1個ずつの寸法や重さ)をそのまま平均するときは、加重平均は要りません。1個が1つの値なので、すべての重みが同じになり、普通の平均と一致します。加重平均が必要になるのは、1つの値の後ろに、個数や量の違うかたまりがあるときです。
加重平均の式と単純平均との違い
値を \( x_i \)、重みを \( w_i \) とすると、加重平均は次の式で求めます。
\[ \bar{x}_w = \frac{\sum w_i x_i}{\sum w_i} = \frac{w_1 x_1 + w_2 x_2 + \cdots + w_n x_n}{w_1 + w_2 + \cdots + w_n} \]Excelでは、値をC列、重みをB列に入れて、次の式で求めます。Excelには加重平均専用の関数がないため、SUMPRODUCT(掛けて合計)とSUMを組み合わせます。
- 加重平均:
=SUMPRODUCT(B2:B4,C2:C4)/SUM(B2:B4)
単純平均(AVERAGE)は、すべての重みを1にした加重平均と同じです。重みがそろっていれば両者は一致し、重みの差が大きいほど結果が離れます。
計算例1|ロット別の不良率をまとめる
冒頭の3つのロットです。
| ロット | 生産数(個) | 不良数(個) | 不良率 |
|---|---|---|---|
| A | 1,000 | 20 | 2.0% |
| B(試作) | 200 | 16 | 8.0% |
| C | 4,800 | 48 | 1.0% |
| 合計 | 6,000 | 84 |
不良率を単純に平均すると、(2.0+8.0+1.0)÷3=3.67%です。これは「3つのロットが同じ個数だったら」という前提の値で、200個のロットBが4,800個のロットCと同じ重さで数えられています。
生産数を重みにした加重平均は次のとおりです。
\[ \bar{p} = \frac{1000 \times 0.020 + 200 \times 0.080 + 4800 \times 0.010}{1000 + 200 + 4800} = \frac{84}{6000} = 0.0140 \]1.40%です。分子の84は不良数の合計そのものなので、不良率の加重平均は「不良数の合計÷生産数の合計」と同じです。B列に生産数、C列に不良率を入れた表なら =SUMPRODUCT(B2:B4,C2:C4)/SUM(B2:B4)、不良数がD列にあるなら =SUM(D2:D4)/SUM(B2:B4) で求められます。
3.67%と1.40%では、報告の意味がまったく違います。単純平均は小さな試作ロットの8.0%に引っ張られ、工場全体の実態より2.6倍も悪く見せていました。p管理図の中心線 \( \bar{p} \) も、同じく不良数の合計を検査数の合計で割った加重平均です。作り方はp管理図・np管理図の作り方と見方|不良率・不良個数の管理手順で解説しています。
計算例2|材料の平均単価を求める
月初に在庫があり、月の途中で単価の違う材料を2回仕入れました。
| 区分 | 数量(kg) | 単価(円/kg) | 金額(円) |
|---|---|---|---|
| 月初在庫 | 400 | 500 | 200,000 |
| 仕入1 | 1,000 | 530 | 530,000 |
| 仕入2 | 600 | 560 | 336,000 |
| 合計 | 2,000 | 1,066,000 |
数量で重み付けした平均単価は、1,066,000÷2,000=533円/kgです。単価を単純に平均した530円とは3円の差ですが、今月1,500kgを使ったとすると、材料費は533円で799,500円、530円で795,000円となり、4,500円ずれます。原価計算では、この数量で重み付けした平均単価(総平均法)を使います。
Excelでは、B列に数量、C列に単価を入れて =SUMPRODUCT(B2:B4,C2:C4)/SUM(B2:B4) で533が求まります。計算例1とまったく同じ式です。
計算例3|品種が混ざるラインの平均サイクルタイム
1本のラインで3品種を作っています。1日の生産数とサイクルタイムは次のとおりです。
| 品種 | 生産数(個/日) | サイクルタイム(秒) |
|---|---|---|
| X | 600 | 30 |
| Y | 300 | 45 |
| Z | 100 | 90 |
サイクルタイムの単純平均は(30+45+90)÷3=55秒ですが、生産数で重み付けすると(30×600+45×300+90×100)÷1,000=40,500÷1,000=40.5秒です。
Excelでは、B列に生産数、C列にサイクルタイムを入れて =SUMPRODUCT(B2:B4,C2:C4)/SUM(B2:B4) で40.5が求まります。計算例1・2と同じ式です。
1日の生産に必要な時間を見積もるなら、40.5秒×1,000個=40,500秒(11.25時間)が正しい値です。単純平均の55秒で見積もると55,000秒(約15.3時間)となり、ラインの能力を3割近く低く見てしまいます。必要な時間から人員や段取りを決めるときは、生産構成で重み付けした値を使います。
重みに何を選ぶか
加重平均でいちばん迷うのは、重みの選び方です。基本は「平均したい値の分母にあたる量」を重みにします。
| 平均したい値 | 値の中身 | 重みにするもの |
|---|---|---|
| 不良率 | 不良数÷生産数 | 生産数(検査数) |
| 平均単価 | 金額÷数量 | 数量 |
| 1個あたりの時間 | 時間÷個数 | 個数 |
| 設備の稼働率 | 稼働時間÷計画時間 | 計画時間 |
分母を重みにすれば、加重平均は「分子の合計÷分母の合計」と一致します。迷ったら、元の数(不良数や金額)に戻して合計してから割る、と考えると間違えません。
反対に、分子にあたる量が同じで分母が違う値(同じ距離を違う速さで走ったときの平均速度など)は、加重平均ではなく調和平均を使います。使い分けは幾何平均・調和平均の求め方|算術平均との使い分けで解説しています。
よくある失敗
- 率の列をAVERAGEで平均する。表計算で率の列の下にAVERAGEを置くのは、いちばん多い間違いです。率を並べた表では、合計の行に「分子の合計÷分母の合計」を置きます
- 重みの列を範囲からずらす。SUMPRODUCTの2つの範囲の行がずれると、別の行の値どうしを掛けてしまいます。行を追加したときは、両方の範囲がそろっているかを確かめます
- 重みにゼロや空白が混ざっているのに気づかない。生産数が空白の行は、重み0として扱われ、平均から消えます。空白が「未入力」なのか「生産なし」なのかを先に確認します
- 加重平均だけを報告する。1.40%という全体の値の中に、8.0%のロットが隠れています。全体は加重平均で示し、ロットごとの値も並べて、悪いロットを見逃さないようにします
よくある質問
Q. Excelに加重平均の関数はありますか?
A. 専用の関数はありません。=SUMPRODUCT(重みの範囲,値の範囲)/SUM(重みの範囲) で求めます。Googleスプレッドシートには AVERAGE.WEIGHTED という関数がありますが、Excelで開くと使えないので、共有するファイルではSUMPRODUCTで書いておくほうが安全です。
Q. 加重平均と単純平均はどちらを報告すべきですか?
A. 全体の実績を示すなら加重平均です。不良率なら「全体で何個作って何個不良だったか」が実態だからです。一方、ロットやラインごとの状態を比べたいときは、それぞれの値を並べて見ます。単純平均が役に立つ場面は、重みがすべて同じ場合を除くと多くありません。
Q. 移動平均や加重移動平均とは何が違いますか?
A. 移動平均は、時系列のデータで直近の何点かを平均し、その範囲をずらしていく方法です。加重移動平均は、そのうち新しいデータほど重みを大きくしたものです。この記事の加重平均は、時間の流れではなく、値ごとの分量の違いを反映させるものです。
Q. 重みの合計が1にならなくてもよいのですか?
A. かまいません。式の最後で重みの合計で割るので、重みは個数や数量のままで使えます。重みをあらかじめ割合(合計1)に直した場合は、SUMPRODUCTの結果がそのまま加重平均です。
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まとめ
- 加重平均は、値に重み(個数・量・時間)を掛けて合計し、重みの合計で割った平均
- Excelでは
=SUMPRODUCT(重み,値)/SUM(重み)。専用の関数はない - 例題では、ロット別不良率の単純平均3.67%に対し、加重平均は1.40%。小さなロットの値に引っ張られない
- 重みには、平均したい値の分母にあたる量を選ぶ。そうすれば「分子の合計÷分母の合計」と一致する
- 全体は加重平均で示し、ロットごとの値も並べて悪いかたまりを見逃さない
まとめると、1つの値の後ろに分量の違うかたまりがあるなら加重平均、1個ずつの測定値を平均するなら普通の平均、分子が同じで分母が違う値なら調和平均、という使い分けです。
平均の種類と使い分けは平均・中央値・最頻値の求め方と使い分け|Excelで計算、不良率の単位の換算は不良率の計算方法|%・ppm・DPMOの違いと換算で解説しています。あわせてご確認ください。

