この記事でわかること
- PDCAの4ステップで、品質管理の現場では何をするか
- 維持のためのSDCAとの違いと、つなぎ方
- C(評価)で効果を数字で判定する方法(不良率の検定・Excel対応)
- PDCAが回らない5つの原因
📌 前提知識:方針管理と日常管理とは|違いと進め方を読んでいると、PDCAとSDCAの位置づけがつかみやすくなります
成形品のショート不良が続いたので、金型の温度条件を見直しました。対策後の1週間、不良率は3.00%から2.20%に下がっています。報告書に「効果あり」と書いて、テーマを完了にしました。
ところが課長からは「1週間で下がっただけで、本当に効いたと言えるのか」と聞き返されました。不良の数は、何もしなくても週ごとに上下します。0.8ポイントの差が対策の効果なのか、たまたまなのか。PDCAの「C」をどう判定するかで、この答えは変わります。この記事では、PDCAの基本を品質管理の現場に沿って整理したうえで、Cを数字で判定する計算まで追います。
PDCAとは|使う場面
PDCAは、計画(Plan)・実行(Do)・評価(Check)・処置(Act)の4つを順に回して、仕事の結果を良くしていく考え方です。1周で終わらせず、処置の結果を次の計画につなげて繰り返すので、「PDCAサイクル」とも呼ばれます。もとになったのはシューハートが示した管理のサイクルで、1950年代にデミングが日本の講演で紹介したことから広まったとされ、デミング・サイクルと呼ばれることもあります。
次のような場面で使います。
- 今の水準より良くしたいとき。不良率を下げる、段取り時間を縮めるといった改善テーマです
- 対策の効果がまだ分からないとき。やってみて確かめる、という前提で動くので、答えが決まっていない問題に向きます
- QCサークルや方針管理で、目標に向けて活動を進めるとき。進み具合をCで確かめ、Aで計画を直していきます
NG例(△)として、すでに決まったやり方を守る日常の作業には、PDCAよりSDCAが合います。毎日の作業で「計画を立て直す」ことはしないからです。また、効果を測る数字を決めないまま始めるPDCAは、Cで何も判定できません。
4つのステップで何をするか
| ステップ | やること | このとき決めておく数字・成果物 |
|---|---|---|
| P:計画 | 現状を数字でつかみ、目標と対策、確かめ方を決める | 現状値・目標値・期限、Cで使う指標と測る期間 |
| D:実行 | 計画どおりに対策を行い、記録を残す | 実施日、実施した条件、計画と違った点 |
| C:評価 | 対策の前後を同じ尺度で比べ、目標に届いたかを確かめる | 前後の値と、差が偶然でないかの判定 |
| A:処置 | 効果があれば標準化し、なければ原因を見直して次のPへ | 改訂した作業標準書、次の計画 |
表の右列で大事なのは、Cで使う指標と測る期間を、Pの段階で決めておくことです。対策を打ってから「何で効果を見ようか」と考えると、都合のいい数字を選んでしまいがちです。冒頭の例では、「不良率を対策前の4週間と対策後の4週間で比べる」とPで決めておけば、1週間で完了にすることはありませんでした。
現状を数字でつかむところはExcelでパレート図を作る方法|不良モード別の改善優先度を見える化する手順、対策を考える前に原因を掘り下げる方法はなぜなぜ分析のやり方|5回のなぜで真因にたどり着く手順で解説しています。
SDCAとの違い|改善と維持
SDCAは、標準化(Standardize)・実施(Do)・確認(Check)・処置(Act)のサイクルです。PDCAの「計画」が「標準化」に置き換わっています。
| 観点 | PDCA | SDCA |
|---|---|---|
| 目的 | 今より良くする(改善) | 今の水準を保つ(維持) |
| 出発点 | 計画(目標と対策) | 標準(決まったやり方) |
| Cで見るもの | 目標に届いたか | 標準どおりにできているか |
| 主な場 | 改善テーマ・方針管理・QCサークル | 日常管理・作業標準 |
2つは別々に回すものではなく、つながっています。PDCAで良くしたやり方をAで標準にし、そこからはSDCAで維持します。維持が安定したら、次の改善テーマでまたPDCAを回します。坂道で車輪を回し、止めたところに歯止めを置いて、また次を回すイメージです。
Aで標準にしないと、良くなった状態が維持の側に引き継がれず、担当が替わったり月日がたったりするうちに元の水準へ戻っていきます。標準にする中身は標準作業とは|三要素と作業標準書の違い、組織の中での両者の役割は方針管理と日常管理とは|違いと進め方で解説しています。
Cを数字で判定する|不良率の検定
冒頭の例に戻ります。対策の前後1週間ずつを比べると、次のとおりでした。
| 期間 | 生産数(個) | 不良数(個) | 不良率 |
|---|---|---|---|
| 対策前の1週間 | 1,500 | 45 | 3.00% |
| 対策後の1週間 | 1,500 | 33 | 2.20% |
0.80ポイント下がっていますが、不良は毎週ある程度ばらつきます。この差が対策の効果なのか、たまたまの揺れなのかを、2つの不良率の差の検定で確かめます。
\[ z = \frac{p_1 – p_2}{\sqrt{\bar{p}(1-\bar{p})\left(\frac{1}{n_1} + \frac{1}{n_2}\right)}} \]\( \bar{p} \) は2つの期間をまとめた不良率で、\( \bar{p} = (45+33)/(1{,}500+1{,}500) = 0.026 \) です。
\[ z = \frac{0.030 – 0.022}{\sqrt{0.026 \times 0.974 \times \left(\frac{1}{1500} + \frac{1}{1500}\right)}} = \frac{0.008}{0.005811} = 1.38 \]Excelでは、B2・C2に対策前の生産数と不良数、B3・C3に対策後の生産数と不良数を入れて、次の式で求めます。
- まとめた不良率:
=(C2+C3)/(B2+B3)→ 0.026(E1に入れる) - z:
=(C2/B2-C3/B3)/SQRT(E1*(1-E1)*(1/B2+1/B3))→ 1.38(E2に入れる) - p値(両側):
=2*(1-NORM.S.DIST(ABS(E2),TRUE))→ 0.169
zの絶対値は1.96に届かず、p値は0.169です。有意水準5%では「効果があったとは言えない」、正確には「1週間分のデータでは判定できない」という結果です。報告書に書くべきだったのは「効果あり」ではなく「判定保留、データを追加する」でした。
そこで、対策の前後4週間ずつで比べ直しました。
| 期間 | 生産数(個) | 不良数(個) | 不良率 |
|---|---|---|---|
| 対策前の4週間 | 6,000 | 174 | 2.90% |
| 対策後の4週間 | 6,000 | 120 | 2.00% |
同じ式で、\( \bar{p} = 0.0245 \)、標準誤差0.002823、\( z = 0.009 / 0.002823 = 3.19 \)、p値は0.0014です。今度は1.96を大きく超えており、対策の効果があったと判断できます。差の大きさは1週間のときとほぼ同じ0.9ポイント前後なのに、データが4倍に増えたことで、偶然の揺れと区別できるようになりました。
では、何週間分あれば判定できるのでしょうか。不良率3.0%を2.2%に下げる効果を、有意水準5%(両側)・検出力80%で見分けるのに必要な数を計算すると、各期間6,211個です。週1,500個の工程なら4.14週、切り上げて対策の前後5週間ずつです。この期間をPの段階で決めておけば、Cで迷いません。検定の手順は母比率の検定(不良率の検定)|Excelでのやり方、必要な数の考え方はサンプルサイズの決め方|t検定・分散分析に必要なn数の計算で解説しています(比率の場合も、効果の大きさ・有意水準・検出力から逆算する考え方は同じです)。
PDCAが回らない5つの原因
「うちはPDCAが回らない」という声はよく聞きます。回らない職場には、共通するつまずきがあります。
- Pが目標だけで、確かめ方がない。「不良半減」と決めても、何の数字をどの期間で比べるかがなければ、Cができません
- Cを1回きりの比較で済ませる。冒頭の例のように、短い期間の差を効果と見なしてしまう。ばらつきを考えずに判定すると、効いていない対策を標準にしてしまいます
- Aで標準にしない。効果があっても作業標準書を直さなければ、担当が替わったときに元に戻ります
- テーマが大きすぎる。「品質向上」のような大きなテーマでは1周に1年かかり、回っている実感が持てません。数週間で1周できる大きさに分けます
- Cが報告会になっている。結果を発表するだけで、うまくいかなかった理由を次のPに反映しない。Aの「次の計画」まで書いて初めて1周です
5つのうち最初の2つは、Cを数字で判定できるかどうかの問題です。PDCAが回らない職場の多くは、Dではなく、PとCでつまずいています。
QCストーリーとの関係
QCストーリーは、PDCAを問題解決の手順として8つのステップに展開したものです。対応は次のとおりです。
| PDCA | QCストーリー(問題解決型)のステップ |
|---|---|
| P:計画 | 1 テーマの選定、2 現状の把握、3 目標の設定、4 活動計画の作成、5 要因の解析、6 対策の検討(前半) |
| D:実行 | 6 対策の実施(後半) |
| C:評価 | 7 効果の確認 |
| A:処置 | 8 標準化と管理の定着 |
8ステップのうち6つ近くがPにあたります。PDCAでは計画にいちばん時間をかける、ということがこの対応からも分かります。各ステップの進め方と事例はQCストーリーとは|問題解決型の8ステップと事例で解説しています。
よくある質問
Q. PDCAとPDSAの違いは何ですか?
A. PDSAはCheck(評価)をStudy(学習)に置き換えたものです。結果を確かめるだけでなく、なぜそうなったかを学ぶことを強調するために、デミングが後年この呼び方を用いたとされています。中身は大きく変わらず、日本の品質管理ではPDCAの呼び方が定着しています。
Q. PDCAは古い、遅いと言われるのはなぜですか?
A. 1周に何か月もかかる大きなテーマで回すと、変化の速い状況についていけないためです。これはPDCAの問題というより、テーマの切り方の問題です。数週間で1周できる大きさに分け、Cの判定期間をPで決めておけば、速く回せます。
Q. 1サイクルの期間はどれくらいが適切ですか?
A. Cで効果を判定できるだけのデータが集まる期間が目安です。例題の工程では、判定に対策の前後5週間ずつが必要でした。生産数が多い工程ほど短く、少ない工程ほど長くなります。
Q. Cで効果がなかったら、そのテーマは失敗ですか?
A. 失敗ではありません。その対策では効かないと分かったことが成果で、Aで原因の見直しに戻り、次のPにつなげます。効果がないのに「効果あり」として標準にしてしまうほうが、後で高くつきます。
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まとめ
- PDCAは計画(P)・実行(D)・評価(C)・処置(A)を繰り返す改善の考え方。今の水準を保つ日常管理にはSDCAを使う
- PDCAで良くしたやり方をAで標準にし、SDCAで維持する。2つはつなげて回す
- Cで使う指標と測る期間は、Pの段階で決めておく
- 例題では、1週間の比較(3.00%→2.20%)はz=1.38・p=0.169で判定できず、4週間の比較(2.90%→2.00%)はz=3.19・p=0.0014で効果ありと判断できた
- 回らない原因の多くはPとCにある。確かめ方のない計画と、1回きりの比較を避ける
まとめると、今より良くしたいならPDCA、決まったやり方を守りたいならSDCA、という使い分けです。PDCAを回すときは、Cの判定方法と期間をPで決め、Aで標準にするところまでを1周と考えてください。
2つの不良率の比べ方は母比率の検定(不良率の検定)|Excelでのやり方、改善活動の全体の進め方はQCストーリーとは|問題解決型の8ステップと事例で解説しています。あわせてご確認ください。


