この記事でわかること
- 識別・隔離・記録という3要素の具体的な進め方
- 手直し・再検査・特別採用・廃棄の使い分け
- 隔離が遅れると何個が後工程へ流れるかの試算
- QC検定での問われ方とオリジナル例題
📌 前提知識:検査の種類|受入・工程内・出荷の違いと使い分けを読んでいると理解しやすくなります
不適合品管理が必要になる場面
仕組みとして整えておくべきなのは、次のような場面です。- 工程内検査や出荷検査で規格外が見つかったとき。もっとも一般的な入り口です
- 客先から返品や苦情を受けたとき。手元にない製品まで追う必要が出ます
- 設備の異常や4M変更のあとで、疑わしいロットが特定できないとき。良品と混ざる前に押さえます
3つの要素:識別・隔離・記録
不適合品管理は、この3つで成り立っています。順番にも意味があります。識別:ひと目でわかる状態にする
見つけた瞬間に、その品物が不適合だとわかる表示をつけます。赤いタグ、専用のラベル、指定色の容器などです。 ポイントは離れた場所から、誰が見てもわかること。伝票にだけ書いて現品には何もつけない運用は、次の直の作業者には伝わりません。夜勤者が「置いてあるから使っていいものだ」と判断してしまう事故は、この形で起きます。隔離:物理的に分ける
識別しただけでは不十分で、良品と同じ場所に置かない状態にします。仕切られた不適合品置き場、施錠された棚、別フロアなど、間違って持ち出せない場所へ移します。 隔離は「誤使用を防ぐ」ためだけではありません。処置が決まるまで現品を保全する意味もあります。原因調査のあいだに誰かが手直ししてしまうと、証拠が消えます。記録:あとから追えるようにする
最低限、次の項目を残します。| 項目 | なぜ必要か |
|---|---|
| 発見日時・発見者・工程 | 影響範囲の起点を決めるため |
| ロット番号・数量 | 同じロットの所在を追うため |
| 不適合の内容と判定基準 | あとから妥当性を検証するため |
| 処置の区分と承認者 | 誰が何を決めたかを残すため |
⭐ 隔離の遅れは何個の流出になるか
「まず隔離」と言われても、原因調査を優先したくなるのが現場の心理です。遅れの代償を数字にしてみます。 ある工程の条件です。- 生産速度:60個/時
- 不適合の発見から隔離完了まで:45分
- 後工程での検出率:70%
=60*(45/60) → 45このうち後工程で70%が捕まるとすると、すり抜けて客先まで到達しうるのは残りの30%です。 \[ 45 \times (1 – 0.70) = 13.5\ \text{個} \]
=45*(1-0.70) → 13.5隔離を45分から15分に短縮した場合はどうなるか。 \[ 60 \times \frac{15}{60} = 15\ \text{個} \quad \Rightarrow \quad 15 \times 0.30 = 4.5\ \text{個} \]
=60*(15/60) → 15 =15*0.30 → 4.530分早く隔離するだけで、客先へ届きうる数が13.5個から4.5個へ、9個減ります。原因調査を30分早めても、この9個は減りません。順番の問題です。 この試算は、後工程の検出率をどう見積もるかで結果が変わります。検出率を実力より高く見ていると、流出リスクを過小評価します。不良率や流出率の数え方は不良率の計算方法|%・ppm・DPMOの違いと換算を参照してください。
処置区分の使い分け
隔離したあと、その品物をどうするかを決めます。区分は社内で定義しておき、担当者の判断で増やさないようにします。| 区分 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 手直し | 規格に入るよう修正する | 手直し後に再検査が要る |
| 再検査・選別 | 全数確認して良品を取り出す | 判定基準のばらつきに注意 |
| 特別採用 | 規格外のまま使用を認める | 客先承認が要る場合がある |
| 廃棄 | 使用せず処分する | 誤って戻らない処分方法にする |
QC検定での問われ方と例題
QC検定の実践分野では、品質保証の一項目として出題されます。問われ方は「用語の定義」よりも手順の順序や処置区分の区別が中心です。特別採用と手直しの違い、是正処置との関係を整理しておくと答えやすくなります。 オリジナルの例題を1問用意しました。【例題】工程内検査で不適合品が発見された。次のうち、最初に行うべき行動として最も適切なものはどれか。 (ア)不適合が発生した原因を調査する (イ)現品を識別し、良品と分けて隔離する (ウ)再発防止のための是正処置を立案する (エ)客先へ発生の事実を報告する解答:(イ) 理由は、ほかの3つがいずれも時間の経過とともに価値が下がらないのに対し、隔離だけは遅れるほど取り返しがつかなくなるためです。原因調査(ア)も是正処置(ウ)も、30分後に始めても内容は変わりません。客先報告(エ)は、影響範囲が特定できてからのほうが正確に伝えられます。 一方、隔離が30分遅れれば、その30分ぶんの製品が後工程へ流れます。順序を決める基準は「遅れによる損失が時間とともに増えるかどうか」だと理解しておくと、応用問題にも対応できます。
よくある誤解とNG例
誤解①:不適合品管理は是正処置の一部である。別物です。不適合品管理は「すでに存在する不適合品をどう扱うか」、是正処置は「二度と作らないために何を変えるか」を扱います。前者を飛ばして後者だけ立派に書いた報告書は、現物の行方が不明なまま残ります。 誤解②:識別すれば隔離は省略できる。赤タグをつけただけで良品の隣に置いてある状態は、隔離ではありません。人は急いでいるときほど表示を見落とします。物理的に取れない場所に置くところまでが1セットです。 NG例(△):判定が決まるまで記録を書かない。処置区分が決まってからまとめて記入する運用にすると、発見日時が後追いの記憶で埋められます。影響範囲の起点がずれるので、追跡そのものが狂います。発見の記録と処置の記録は分けて、発見時点で先に残してください。 NG例(△):不適合品置き場が満杯のまま放置されている。処置が決まらない品物が溜まっている状態は、隔離ではなく先送りです。滞留日数の上限を決め、超えたものは強制的に処置を決める運用にしないと、置き場そのものが機能しなくなります。どの工程で何を管理するかはQC工程図に落とし込んでおくと、運用が属人的になりません。よくある質問
Q. 不適合と不良は同じ意味ですか?
A. 厳密には違います。不適合は「決められた要求事項を満たしていない状態」を広く指し、製品だけでなく手順や記録の不備にも使います。不良は製品が使用目的を果たせない状態を指す、より狭い言い方です。規格や社内文書では不適合という語を使うのが一般的ですが、現場では不良品と呼ばれることが多く、どちらが正しいというより文書の中で用語を統一することが大切です。Q. 隔離場所は施錠が必要ですか?
A. 必須ではありません。要件は「誤って使われないこと」なので、仕切りや専用棚で十分な場合もあります。ただし高価な部品や、見た目では良品と区別がつかない品物では施錠が有効です。過去に誤使用が起きた品目から優先して厳しくする、という決め方が現実的です。Q. 客先から返品された品物も同じ扱いでよいですか?
A. 同じ枠組みで扱いますが、記録項目は増えます。返品の場合は客先での使用状況や返却の経緯が原因調査の手がかりになるため、受領時に聞き取って残してください。また、自社で作ったものかどうかの確認(現品の識別が消えている場合がある)を先に行う必要があります。📚 この記事の内容をもっと深く学ぶ
まとめ
- 不適合品管理は識別・隔離・記録の3要素で成り立ち、原因調査より先に行う
- 識別は離れた場所から誰にでもわかる形に、隔離は物理的に取れない場所へ
- 記録は発見時点で先に残す。処置が決まってからまとめて書かない
- 隔離が45分から15分に縮むだけで、客先へ届きうる数は13.5個から4.5個へ減る
- 処置区分は手直し・再検査・特別採用・廃棄の4つに整理し、担当者が増やさない


