この記事でわかること
- ロットの意味と、区切り方・ロット番号の付け方
- ロットの大きさを決めるときに比べる2つのこと(異常時の影響と検査の手間)
- 抜取検査でロットを混ぜてはいけない理由(合格確率の計算・Excel対応)
📌 前提知識:トレーサビリティとは|ロット管理と追跡の仕組みで、ロットを使って製品を追いかける仕組みを押さえておくと理解しやすくなります
月産2万個のシャフトを作るラインで、ロットの大きさを決め直すことになりました。今は1ロット5,000個です。製造課からは「ロットを小さくすると段取りや検査が増える」、品質保証からは「大きすぎると、何かあったときに疑わしい数が多すぎる」と意見が分かれています。
ロットは毎日使う言葉ですが、その大きさは意外と根拠なく決まっていることが多いものです。この記事では、ロットの意味と区切り方を整理し、大きさを決めるときに何を比べればよいかを数字で示します。
ロットを使う場面
ロットとは、同じ条件で作られ、品質が同じだとみなせる製品のまとまりです。生産の単位であり、記録や検査の単位でもあります。次のような場面で使います。
- 製品を追いかけるとき。不具合が見つかったら、ロット番号から材料・設備・作業者・作った日をたどります
- 検査で合否を決めるとき。抜取検査は、ロットから試料を取り、ロット全体を合格か不合格かで判定します
- 異常の影響範囲を絞るとき。疑わしい製品を、ロット単位で隔離・再検査します
NG例(△)として、1個ずつの履歴が必要な製品には、ロット管理だけでは足りません。安全部品などは個体ごとのシリアル番号で管理します。ロット単位と個体単位の使い分けは前提知識の記事で整理しています。
ロットの区切り方とロット番号
ロットは「品質に影響する条件が変わったところ」で区切ります。条件が同じあいだは同じロット、変わったら新しいロットです。
| 区切る条件 | 例 |
|---|---|
| 材料が変わる | 材料メーカーのロットが切り替わった |
| 設備・型が変わる | 別の号機で作った、金型や刃具を交換した |
| 人・時間が変わる | シフトが変わった、日付が変わった |
| 方法が変わる | 加工条件を変えた、段取り替えをした |
見てのとおり、ロットの区切りの中心は4M(材料・設備・人・方法)の変化点です。加えて、日付やシフトで区切る運用もよく使われます。変更の管理は4M変更管理とは|変更届の基準と初物確認で解説しています。
ロット番号は、区切りの条件が読み取れる形にすると後で追いやすくなります。たとえば「261012-A-03」なら、2026年10月12日・Aライン・その日の3ロット目、という具合です。材料のロット番号は製品のロット番号とひもづけて記録し、どの材料がどの製品に使われたかを両方向からたどれるようにします。
例題|ロットの大きさを決める
冒頭のラインで、ロットの大きさを5,000個・1,000個・500個の3案で比べます。条件は次のとおりです。
- 月産20,000個。刃具の欠けなどの異常が起きると、その後の製品の3%が不良になる
- 異常はロットの最後に行う検査(1回10分)で見つかる。見つかったら、そのロット全体を疑わしい製品として隔離する
- 異常がロットのどこで起きるかは分からないので、平均するとロットの半分が異常のあとに作られる
- 隔離したロットの全数検査は、5,000個で480分(1個あたり約6秒)かかる
異常時の影響と検査の手間を並べる
Excelでは、A列にロットの大きさを入れ、2行目に次の式を入れて下へコピーします。
=20000/A2(B列:月のロット数)
=A2/2*0.03(C列:異常1回あたりの不良の見込み)
=B2*10(D列:月の検査時間〈分〉)
| ロットの大きさ | 異常時に隔離する数 | 不良の見込み | 月の検査時間 |
|---|---|---|---|
| 5,000個(月4ロット) | 5,000個 | 75個 | 40分 |
| 1,000個(月20ロット) | 1,000個 | 15個 | 200分 |
| 500個(月40ロット) | 500個 | 7.5個 | 400分 |
ロットを5,000個から1,000個にすると、異常が起きたときに隔離して全数を確かめる数は5分の1に減ります。その代わり、検査の時間は月40分から200分に増えます。ロットの大きさは、異常時の損失と、ふだんの手間の釣り合いで決めるものです。
では、どこまで小さくすれば割に合うのでしょうか。5,000個から1,000個にすると、異常1回あたりの全数検査は480分から96分へ、384分減ります。ふだんの検査の増加は月160分なので、異常が月0.42回(年5回)以上起きる工程なら、1,000個のほうが手間の合計は少なくなります(160÷384=0.42)。
さらに500個にすると、全数検査の減り方は異常1回あたり48分しかないのに、ふだんの検査は月200分増えます。割に合うのは異常が月4回以上起きる工程だけです。この例のラインは刃具の欠けが年に6回ほどあったので、1,000個を選びました。手間に加えて、不良が客先へ流れたときの損失も大きいなら、ロットはさらに小さい側に寄せます。
異常が起きたらすぐ止まる仕組み(工程内のセンサーなど)があれば、ロットを大きくしても影響は広がりません。ロットを小さくする前に、異常に早く気づく手を打てないかも考えます。
抜取検査でロットを混ぜてはいけない理由
抜取検査は「ロットの中の品質はそろっている」ことを前提にしています。条件の違うロットを1つにまとめて検査すると、悪いロットが通りやすくなります。
例:良いロットと悪いロットを混ぜる
不良率0.5%のロットAと、4%のロットB(同じ数)があるとします。試料50個を取り、不良が1個以下なら合格(n=50、Ac=1)という検査です。合格する確率は二項分布で求め、Excelでは次の式です。
=BINOM.DIST(1,50,0.04,TRUE)(不良率4%のとき)
| 検査の仕方 | 不良率 | 合格する確率 |
|---|---|---|
| ロットAだけを検査 | 0.5% | 97.4% |
| ロットBだけを検査 | 4% | 40.0% |
| AとBを混ぜて検査 | 2.25% | 68.9% |
分けて検査すれば、悪いロットBは6割近くの確率で止められます。ところが混ぜると、Bを含んだまとまり全体が約7割の確率で合格し、Bの不良品もそのまま出荷されます。逆に不合格になれば、良いロットAまで巻き添えで選別しなければなりません。
抜取検査の合格確率の考え方は抜取検査とOC曲線|合格確率の計算とExcel手順、抜取表の使い方はAQLとは|JIS Z 9015の抜取表と検査の切替で解説しています。
よくある失敗
- 条件が変わってもロット番号を変えない。刃具を替えた前後が同じロットだと、不具合の原因を切り分けられません
- ロットの大きさを「いつもの数」で決める。異常時の影響と検査の手間を並べると、見直す余地が見つかります
- 検査の都合でロットをまとめる。例題のように、悪いロットが通りやすくなります
- 材料のロット番号を記録しない。材料が原因の不具合で、どの製品に使ったかたどれなくなります
よくある質問
Q. ロットとバッチの違いは何ですか?
A. どちらも製品のまとまりを指し、ほぼ同じ意味で使われます。化学・医薬品など、1回の仕込みで一度に作る工程では「バッチ」と呼ぶことが多く、組立や加工では「ロット」がよく使われます。社内でどちらを使うかを決めて、記録の呼び方をそろえておくと混乱しません。
Q. ロットサイズと最小ロットは違いますか?
A. ロットサイズは1つのロットに含まれる数です。最小ロットは、取引で「この数以上でないと作らない・売らない」という注文の最小単位を指すことが多く、品質管理でいうロットの大きさとは意味が違います。
Q. ロットの大きさはどう決めればよいですか?
A. 例題のように、異常が起きたときに隔離する数と、ロットごとにかかる検査や段取りの手間を並べて比べます。加えて、材料のロットや設備の切り替えなど、品質に影響する条件の区切りと合わせることが大切です。
Q. ロットごとの不良率をまとめるにはどうしますか?
A. ロットごとの不良率を単純に平均せず、不良個数の合計を生産数の合計で割ります。ロットの大きさが違うときは、生産数で重み付けした加重平均にあたる計算です。
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まとめ
- ロットは、同じ条件で作られ品質が同じだとみなせる製品のまとまり。主に4M(材料・設備・人・方法)が変わったところで区切る
- ロット番号は区切りの条件が読み取れる形にし、材料のロット番号とひもづける
- ロットの大きさは、異常時に隔離する数と検査の手間の釣り合いで決める。例題では5,000個→1,000個で隔離の数が5分の1、検査は月40分→200分
- 抜取検査でロットを混ぜると、悪いロットの合格確率が40.0%から68.9%に上がる
まとめると、ロットは「条件で区切り、損失と手間で大きさを決め、検査では混ぜない」が基本です。まずは自分の工程で、今のロットの区切りが4Mの変化点とそろっているかを確かめてみてください。
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