この記事でわかること
- 親和図の意味と、使う場面・使わない場面
- カードづくりから見出しづけまでの7つの手順
- 作業者の声18枚をまとめる作成例と、枚数・投票で重点を決める方法(Excel対応)
- KJ法・特性要因図との違い
📌 前提知識:新QC七つ道具とは|7手法の使い方と図の作り方で7つの手法の全体像を押さえておくと理解しやすくなります
新しい組立ラインが立ち上がって1か月。取り違えの手直しが続くので、班長が作業者に「作業でやりにくいこと」を書いてもらいました。集まったのは18件の自由記述です。「部品箱が遠い」「照明が暗い」「手順書が古い」と、中身はばらばらでした。
1件ずつ対策していくと、18件に18個の対策が並んでしまいます。何が根っこの問題なのかは見えません。こうした言葉のデータを、意味の近いものどうしで寄せ集め、問題の形を浮かび上がらせるのが親和図です。この記事では、書き方の手順と、18件の声を実際にまとめる例を追います。
親和図を使う場面
親和図は、まとまりのない言語データ(数値にならない言葉の情報)を、内容の近いものどうしでグループにまとめ、問題の全体像をつかむ手法です。新QC七つ道具の1つで、親和図法とも呼ばれます。次のような場面で使います。
- 何が問題なのかが、まだはっきりしないとき。困りごとや意見は出ているが、テーマを1つに決められない段階です
- 手元にあるのが言葉のデータだけのとき。アンケートの自由記述、クレームの文面、ブレーンストーミングのメモなどです
- 関係者の見方がばらばらなとき。全員の意見をカードにして並べると、立場による見え方の違いを1枚の図で共有できます
NG例(△)として、不良の件数のように数値で集計できるデータがあるなら、先に数値で見ます。件数の偏りはExcelでパレート図を作る方法|不良モード別の改善優先度を見える化する手順のほうが速く、はっきり出ます。問題がすでに1つに決まっていて原因を洗い出したいときは、特性要因図とは|書き方のルールと作り方・記入例を使います。
書き方の7つの手順
- テーマを決める:「組立作業でやりにくいこと」のように、何についての声を集めるかを1文にする
- 言語データを集めてカードにする:1枚に1つの内容だけを書く。「〜が〜で困る」のように、事実を具体的に書く
- カードを全部広げて読む:分類を考える前に、まず全員ですべてのカードに目を通す
- 近いカードを2〜3枚ずつ寄せる:「言いたいことが似ている」と感じるものを小さく集める。分類の箱を先に決めない
- グループに見出しをつける:集めたカードに共通する言い分を、短い文で1枚のカードに書いて上に載せる
- 見出しどうしをさらにまとめる:見出しを1枚のカードとみなして、手順4と5を繰り返す。最終的に3〜5グループ程度にする
- 図にして結論を書く:グループを枠で囲み、関係を線や矢印で示す。図から読み取れることを文章にまとめる
いちばん大事なのは手順4です。「設備」「人」「材料」のような箱を先に用意して振り分けると、それは分類であって親和図ではありません。箱に入れた時点で、箱の外にある問題の形が見えなくなります。カードの言い分どうしが近いかどうかだけを見て、下から積み上げるのが親和図の考え方です。
手順5の見出しも、「設備」のような単語ではなく、「部品を取る動きにむだが多い」のように文で書きます。単語にすると、元のカードが言っていた困りごとが消えてしまうためです。
作成例|作業者の声18枚をまとめる
冒頭の18件をカードにし、班長と作業者6人で手順3〜6を進めました。まず近いものを寄せて見出しをつけた結果が次の表です。
| 見出し(1段目) | カード | 枚数 |
|---|---|---|
| G1 部品や道具を取る動きにむだが多い | 部品箱が奥にあり腕を伸ばさないと取れない/検査治具を隣の工程まで取りに行く/作業台の高さが合わず腰が痛い/トルクドライバーのコードが作業台に引っかかる | 4 |
| G2 似たものを目で見分けにくい | 形の似たワッシャーが2種類ある/部品の色が似ていて暗いと見分けにくい/部品箱のラベルが小さい/夜勤は照明が暗く刻印が読みにくい | 4 |
| G3 正しい手順の情報が現場で食い違う | 締付けトルクの値が作業標準書と画面で違う/標準書が改訂されたのに現場の紙が古い/手順書の図が小さく部品の向きがわからない/新人への教え方が人によって違う | 4 |
| G4 補充と置き場所が決まっていない | 部品の補充が遅れて手待ちが出る/前工程の仕掛品の置き場所が毎回違う/補充の合図が口頭なので聞き逃す | 3 |
| G5 異常に気づいて止める仕組みがない | ねじの供給機がときどき2本出す/警告音が隣のラインと同じで気づかない/異常時に誰を呼ぶか決まっていない | 3 |
「夜勤は照明が暗く刻印が読みにくい」は、最初は「職場環境」の話として別に置かれていました。読み直すと、言いたいことは「刻印が見分けられない」です。そこでG2に入れました。こうした置き直しは、親和図づくりの途中で何度も起きます。
次に、5つの見出しをさらにまとめます(手順6)。
- G1とG4 → 「モノの置き方と流れが、作業する人に合わせて決まっていない」
- G2とG3 → 「正しい部品と正しい手順を判断するための情報が弱い」
- G5 → どこにも近くないので、無理に入れずに単独で残す
G2とG3を合わせると8枚で、18枚の44.4%を占めます。取り違えの手直しは、作業者の不注意と見られがちでした。ところが声を寄せ集めると、「見分けにくい」と「手順の情報が食い違う」という、判断の材料側の問題として形が見えてきました。これが手順7で文章にまとめる結論です。
枚数と投票で重点を決める
図ができたら、どのグループから手を付けるかを決めます。まず各グループの枚数を数えます。表計算で、A列にカードの文、B列にグループ名(G1〜G5)を入れておくと、次の式で数えられます。
- グループの枚数:
=COUNTIF($B$2:$B$19,"G1") - 全体に占める割合:
=E2/COUNTA($B$2:$B$19)(E2に枚数)
ただし、枚数は「多くの人が書いたこと」であって、「重要なこと」とは限りません。そこで、よく使われる方法の1つが投票です。6人が1人3票ずつ、重要だと思うグループに票を入れました。
| グループ | 枚数(割合) | 票数(割合) |
|---|---|---|
| G1 取る動きにむだが多い | 4(22.2%) | 2(11.1%) |
| G2 似たものを見分けにくい | 4(22.2%) | 5(27.8%) |
| G3 手順の情報が食い違う | 4(22.2%) | 6(33.3%) |
| G4 補充と置き場所が決まっていない | 3(16.7%) | 1(5.6%) |
| G5 異常に気づいて止める仕組みがない | 3(16.7%) | 4(22.2%) |
票の割合は、票数を総票数18で割って求めます。Excelでは =F2/SUM($F$2:$F$6)(F列に票数)です。
枚数ではG1〜G3が4枚で並んでいました。投票すると、G3とG2に票が集まり、枚数の少ないG5が3番目に上がりました。G5は、ねじが2本出たまま流れれば客先への流出につながるため、件数が少なくても重く見られたわけです。G1はつらさは大きいものの、取り違えとの関係は薄いと判断されました。
この結果から、改善テーマを「部品と手順を正しく判断できる情報を現場に置く」に決めました。ここから先は、原因を特性要因図で洗い出し、対策を系統図で展開する流れに入ります。問題解決の流れ全体はQCストーリーとは|問題解決型の8ステップと事例で解説しています。
KJ法・特性要因図との違い
親和図は、文化人類学者の川喜田二郎氏が考案したKJ法をもとにしています。KJ法は、野外調査で集めたまとまりのない情報から発想を得るための方法として生まれました。一般には、カードのグループ化に加えて、図解と文章化までを含む一連の方法として説明されます。親和図法は、その考え方を品質管理の問題整理に取り入れたもので、新QC七つ道具の1つとして使われています。考え方が共通なので、「親和図法(KJ法)」と並べて書かれることも多く、日常の会話ではほぼ同じ意味で使われています。なお、「KJ法」は株式会社川喜田研究所の登録商標です。
特性要因図とは、出発点が違います。
| 手法 | 出発点 | 進め方 |
|---|---|---|
| 親和図 | 問題がまだ決まっていない | ばらばらの声を下から寄せて、問題の形を見つける |
| 特性要因図 | 問題(特性)が1つに決まっている | 5Mなどの大骨から、原因を上から枝分かれさせて洗い出す |
| 連関図 | 問題は決まっているが原因がからみ合っている | 要因どうしを矢印でつなぎ、因果の順番を整理する |
親和図で問題を見つけ、特性要因図や連関図で原因を探す、という順に使うのが基本です。
よくある失敗
- 分類の箱を先に決めてしまう。4Mや部署名で振り分けると、手順を踏んでも「いつもの分け方」しか出てきません
- 1枚のカードに2つの内容を書く。「照明が暗く、部品も似ている」は2枚に分けます。1枚に2つあると、どちらのグループにも入れられなくなります
- 見出しを単語で書く。「環境」「教育」と書くと、元のカードの困りごとが消えます。「〜が〜で困る」の形で残します
- どこにも入らないカードを無理に押し込む。例のG5のように、単独で残ったカードが大事な問題を指していることがあります
- 枚数だけで重点を決める。書きやすいことほど枚数が増えます。投票や、流出・安全への影響で重みを見直します
よくある質問
Q. 親和図とKJ法は同じものですか?
A. 親和図法はKJ法をもとにした手法で、考え方は共通しています。KJ法は川喜田二郎氏が発想法として考案したもので、図解と文章化まで含む一連の方法として説明されます。品質管理では、言語データをまとめて問題の全体像をつかむ新QC七つ道具の1つとして、親和図法の名前で使われています。
Q. カードは何枚くらい集めればよいですか?
A. 決まりはありません。少なすぎるとグループができず、多すぎると1回で扱いきれません。現場の問題整理なら、20〜50枚ほどが1回の会議で扱いやすい量です。それより多いときは、似た内容のカードを先にまとめるか、テーマを分けます。
Q. 1人で作ってもよいですか?
A. 作れますが、親和図の良さが半分に減ります。カードを寄せる判断に、作る人の思い込みが出るためです。立場の違う3〜6人ほどで、声に出しながら寄せていくと、1人では気づかない組み合わせが出てきます。
Q. QC検定ではどう問われますか?
A. 新QC七つ道具の1つとして、ほかの手法との使い分けが問われやすいところです。「混沌とした状態の言語データを、親和性によってまとめ、問題の構造を明らかにする手法はどれか」のように、目的から手法名を選ばせる形が典型です。7つの手法の違いは新QC七つ道具の総論記事で整理しています。
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まとめ
- 親和図は、ばらばらの言語データを内容の近いものどうしでまとめ、問題の全体像をつかむ新QC七つ道具の手法
- 分類の箱を先に決めず、カードの言い分が近いかどうかだけで下から寄せる
- 見出しは単語でなく、元の困りごとが残る短い文で書く
- 例では作業者の声18枚を5グループにまとめ、取り違えの問題を「判断の材料が弱い」(8枚・44.4%)という形でとらえ直した
- 重点は枚数だけで決めず、投票や影響の大きさで見直す(枚数3枚のG5が票数では3番目)
まとめると、問題がまだ決まっていないときは親和図、問題が決まっていて原因を探すときは特性要因図や連関図、という使い分けです。まず全員の声をカードにして並べ、箱を用意せずに寄せてみてください。
親和図で見つけた問題の原因を掘り下げる方法はなぜなぜ分析のやり方|5回のなぜで真因にたどり着く手順で解説しています。顧客の声を品質特性につなげる使い方は狩野モデルとは|魅力的品質と当たり前品質もあわせてご確認ください。

