この記事でわかること
- ピアソン・スピアマン・偏相関・相関行列をどう使い分けるか
- 相関係数を求めたあと、次に何を確認すべきか
- 目的別にどの記事を読めばよいかの一覧
📌 前提知識:散布図の作り方(Excel)を読んでいると理解しやすくなります
「温度と収率の相関係数を出してほしい」と言われて、CORREL関数で数値を出してみたものの、それが強いのか弱いのか、この数値をそのまま報告してよいのか、判断に迷った経験はないでしょうか。相関分析は関数一つで数値が出る手軽さの一方で、「その数値をどう扱うか」を整理しないまま報告すると、誤った結論につながることがあります。
この記事は、DOE labにある相関分析まわりの記事を目的別に整理した総まとめです。どの手法を使うべきか、数値を出したあと何を確認すべきかを一つずつ確認していきます。
相関分析を使う場面
相関分析は、次のような場面で使います。
- 2つの数値データに直線的な関係があるかを確かめたいとき(温度と収率、経験年数と不良率など)
- 複数の特性間の関係を一度に見渡したいとき(測定項目が多い工程で、どの項目同士が連動しているか)
- 出てきた相関係数が、たまたまなのか意味のある関係なのかを確かめたいとき
NG例(△): 相関があるからといって、一方がもう一方の原因だとは限りません。「気温が上がるとアイスの売上もクレームも増える」ように、両方とも第三の要因(この場合は夏)に影響されているだけのこともあります。相関は「関係の強さ」を示すだけで、「原因」を示すものではありません。
4つの手法の使い分け
「相関分析」とひとくくりにされがちですが、データの性質によって使うべき手法は変わります。
| 手法 | 向いているデータ | 記事 |
|---|---|---|
| ピアソンの相関係数 | 2変数が直線的な関係にあり、外れ値が少ない | 相関係数の読み方|強弱の目安 |
| スピアマンの順位相関係数 | 外れ値がある、または関係が直線的でない(順位関係は保たれる) | スピアマン順位相関係数の求め方 |
| 偏相関係数 | 2変数の関係に第三の変数(交絡変数)が影響していそうなとき | 偏相関係数の求め方 |
| 相関行列 | 3つ以上の特性間の関係を一度に見渡したいとき | 相関行列の作り方 |
迷ったらまずピアソンの相関係数で計算し、散布図で外れ値や曲線的な関係が疑われたらスピアマンに切り替える、という順番が実務的です。
相関係数を求めたあとに確認すること
CORREL関数などで数値を出しただけでは、報告としては不十分なことがあります。次の2つを確認する習慣をつけます。
- 散布図で形を見る:相関係数は直線的な関係しか捉えられません。数値が小さくても、U字型など別の関係が隠れていることがあります
- その相関がたまたま出た数値でないかを確かめる:サンプル数が少ないと、本当は関係がなくても相関係数が大きく出ることがあります。相関係数の有意性検定で確認します
また、相関分析と回帰分析は混同されがちですが目的が異なります。「関係の強さを知りたい」なら相関分析、「一方の値から他方を予測したい」なら回帰分析です。詳しい違いは相関分析と回帰分析の使い分けで解説しています。
現場での判断フロー
製造現場で相関分析が使われる典型的な場面を例に、判断の流れを見てみます。ある工程で「加工温度と製品寸法にばらつきの関係があるのでは」という仮説が出たとします。まず散布図を描き、直線的な関係が見えればピアソンの相関係数を計算します。次に、そのサンプル数(例えば15ロット分)で出た相関係数がたまたまではないかを有意性検定で確認します。さらに「加工温度以外に、原料ロットの違いが両方に影響していないか」が気になれば、原料ロットを制御変数とした偏相関係数を計算します。測定項目が温度・湿度・圧力など複数あるなら、相関行列で一度に見渡してから、気になる組み合わせだけを個別に深掘りする、という流れが効率的です。
現場でありがちな誤解の実例
ある工場で「作業者の勤続年数と不良発生率に強い負の相関(r=−0.75)が見られた」という報告が上がってきたことがありました。一見すると「経験を積むほど不良が減る」というもっともらしい結論に見えます。ところが散布図を確認すると、勤続年数の長い作業者2名だけが極端に不良率が低く、それ以外の大多数の点にはほとんど関係が見られませんでした。外れ値2点に引っ張られて相関係数が大きく見えていただけだったのです。
この例のように、相関係数という1つの数値だけを見て結論を出すと、実態とは異なる報告をしてしまうことがあります。数値を出したら必ず散布図で形を確認する、という手順を省略しないことが重要です。
QC検定での出題ポイント
QC検定2級では、相関係数の解釈や散布図の読み方が出題されます。典型的な出題パターンは「相関係数が0.3程度と小さいときの解釈として正しいものはどれか」という選択式で、正解は「直線的な関係は弱いが、無関係とは言い切れない(曲線的な関係の可能性がある)」という趣旨の選択肢です。「相関係数が小さい=無関係」と単純に結びつけると誤答になりやすいので、この記事で整理した「散布図で形を確認する」という視点を覚えておくと得点につながります。
よくある質問
Q. 相関係数はどのくらいの値であれば「強い」と言えますか?
分野によって目安は異なりますが、製造業のデータでは目安として0.7以上を強い相関とすることが多いです。ただし絶対的な基準ではなく、サンプル数や分野によって変わります。詳しい目安は相関係数の読み方|強弱の目安で解説しています。
Q. ピアソンとスピアマン、両方計算してもよいですか?
問題ありません。両方を計算して値が大きく異なる場合は、直線的でない関係や外れ値の影響が疑われるサインです。散布図と合わせて確認すると、データの性質をより正確に把握できます。
Q. 相関係数が0に近ければ「関係がない」と言い切れますか?
言い切れません。相関係数が捉えるのは直線的な関係だけです。U字型やV字型など曲線的な関係がある場合、相関係数はゼロに近い値になることがあります。必ず散布図で形を確認してください。
Q. 偏相関係数は毎回計算すべきですか?
毎回は必要ありません。2変数の相関に「もっともらしい第三の変数」が思い当たる場合にだけ計算すれば十分です。たとえば「原料ロットの違いが両方の特性に影響していないか」といった仮説があるときに使います。心当たりがない場合は、通常のピアソンかスピアマンの相関係数で報告して問題ありません。
まとめ
- 直線的な関係で外れ値が少なければピアソン、外れ値や非直線的な関係が疑われればスピアマン
- 第三の変数の影響を除きたいときは偏相関係数、3つ以上の特性を一度に見渡したいときは相関行列
- 相関係数を出したら、散布図で形を確認し、有意性検定でたまたまでないかも確認する
- 相関は関係の強さを示すだけで、原因を示すものではない
「関係の強さを知りたい」なら相関分析、「値から予測したい」なら回帰分析です。まずは相関係数の読み方|強弱の目安から、自分のデータに当てはめて確認してみてください。さらに体系的に学びたい方向けに、レベル別のおすすめ書籍を統計学・実験計画法のおすすめ本まとめで紹介しています。

