この記事でわかること
- なぜなぜ分析を使う場面と、使うべきでない場面
- 「なぜ」を5回繰り返す手順と、メッキ工程での記入例
- 犯人捜し・論理の飛躍など、失敗する5つのパターン
📌 前提知識:改善活動全体の進め方はQCストーリーとは|問題解決型の8ステップを読んでいると位置づけがつかめます
「原因は作業者の確認不足でした。教育を徹底します」——不具合報告書でこの一文を見たことがある方は多いと思います。ところが半年後、同じ不良がまた出る。担当者を替えても、朝礼で注意喚起しても再発する。それは、対策の相手が原因ではなく人になっているからです。
なぜなぜ分析は、目の前の現象から「なぜ」を繰り返して、対策を打てば二度と起きない原因=真因までたどり着くための手法です。特別な道具は要りません。必要なのは、事実で裏を取りながら1段ずつ降りていく進め方です。この記事では、手順とメッキ工程の記入例、そして現場で形骸化しやすいポイントを整理します。
なぜなぜ分析を使う場面
なぜなぜ分析は、すでに起きてしまった不具合の再発防止に使います。次のような場面が該当します。
- 工程内不良や客先クレームが発生し、原因を突き止めて対策を打つとき
- 一度対策したはずの不良が再発したとき(前回の対策が真因に届いていない)
- 管理図で異常を検出し、応急処置のあとに恒久対策を決めるとき
3つ目は管理限界を超えたときの対応手順とつながります。異常が出たらまず応急処置で流出を止め、そのうえで原因を掘り下げる。この掘り下げの部分がなぜなぜ分析です。
一方、次の場合はほかの手法が向いています。
なぜなぜ分析は未然防止の手法ではありません。起きた事実を出発点にする以上、事実がなければ掘りようがないためです。
なぜなぜ分析とは|「なぜ」を5回繰り返す意味
なぜなぜ分析は、発生した現象に対して「なぜそうなったのか」を繰り返し問い、原因の階層を下へたどっていく手法です。5why(ファイブホワイ)とも呼ばれます。
ポイントは、原因には深さの違いがあることです。
- 現象——測定した結果、見えている事実(膜厚が下限を割った)
- 直接原因——現象を直接引き起こしたもの(めっき液の濃度が低かった)
- 真因——そこを直せば二度と起きない、仕組み側の原因(補給の判断基準が標準にない)
直接原因で止めて対策すると、その場は収まります。濃度を戻せば今日の不良は止まる。けれど判断基準がないままなら、来月また同じことが起きます。仕組みに手が届くまで降りる。これが「5回」の意味です。
逆に言えば、5回は回数のノルマではありません。3回で仕組みに届くこともあれば、7回必要なこともあります。5という数字は「1〜2回でやめると人の話に着地しがちだから、それくらいは掘りなさい」という経験則です。回数を埋めることが目的になった瞬間、この手法は形だけのものになります。
なぜなぜ分析の手順5ステップ
ステップ1:事象を事実で書く
出発点の一文を、だれが読んでも同じ絵が浮かぶ形で書きます。「不良が出た」では掘れません。いつ・どの工程・どの特性が・どうなったかを入れて、「7月20日の第2ロットで、めっき膜厚が下限8μmに対し6.5μmだった」と書きます。
対象を選ぶ段階で迷うときは、パレート図で不良モードを並べ、件数や金額の大きいものから取り上げます。すべての不良を同じ深さで掘る時間はありません。
ステップ2:「なぜ」を1段ずつ下ろす
1段につき1つの理由だけを書きます。複数の理由が浮かんだら枝を分けて、それぞれ別に掘ります。ここで2段まとめて飛ばすと、あとで筋が通らなくなります。
ステップ3:各段で事実を確認する
書いた「なぜ」が推測なのか、確認できた事実なのかを1段ごとに区別します。記録・現物・現場で裏が取れないものは、いったん「未確認」と印を付けて確認しに行きます。ここを飛ばした分析は、あとで対策が空振りします。
ステップ4:真因かどうかを判定する
下まで降りたら、その原因が真因かどうかを2つの問いで確かめます。ひとつは「これを直せば再発しないか」。もうひとつは「自分たちの手で直せるか」。どちらも満たすところが、対策を打つべき層です。
ステップ5:対策と歯止めを決める
真因への対策に加えて、元に戻らないようにする歯止めをセットで決めます。標準類の改訂、チェックシートへの項目追加、治具や設備側での作り込み。歯止めのない対策は、担当者が替わった時点で消えます。
現場の記入例|メッキ工程の膜厚不良を5回掘り下げる
実際の展開を見てみましょう。部品のめっき膜厚が規格下限を割った例です。
| 段 | 内容 | 確認方法 |
|---|---|---|
| 事象 | 第2ロットの膜厚が下限8μmに対し6.5μm | 膜厚計の測定記録 |
| なぜ1 | めっき液の金属イオン濃度が下がっていた | 液分析の結果 |
| なぜ2 | 補給が必要な状態のまま処理を続けた | 補給記録と処理時刻の突き合わせ |
| なぜ3 | 補給のタイミングを作業者の判断に任せていた | 現場でのヒアリング |
| なぜ4 | 作業標準に補給の判断基準が書かれていない | 作業標準書の現物確認 |
| なぜ5 | 標準制定時、濃度管理は経験でわかる前提だった | 標準の制定記録 |
真因は「作業標準に濃度の管理基準が明文化されていないこと」です。ここまで来ると、対策は自然に決まります。標準に「濃度が規定値を下回ったら補給する」という判断基準を明記し、日常点検のチェックシートに濃度の記録欄を追加する。これが歯止めです。
もし「なぜ2」で止めて「補給を忘れないよう注意する」を対策にしていたら、どうなっていたか。おそらく数か月後に同じ報告書を書くことになります。
失敗するなぜなぜ分析の5パターン
この手法が現場で形骸化するとき、原因はだいたい次の5つのどれかです。
1. 人に向けてしまう(犯人捜し)
「確認不足だった」「気が緩んでいた」で降りるのが止まるパターンです。人の注意力を対策にすると、再発防止になりません。人が出てきたら、そこで一段ずらします。なぜその人はそう判断したのか、判断のよりどころは示されていたのか、と仕組み側へ問いを移します。
2. なぜが飛ぶ(論理の飛躍)
2段まとめて降りると、あとで筋が通らなくなります。確認方法は簡単で、下から上へ「だから」でつなげて読み返すことです。「判断基準がない、だから作業者任せになる、だから補給が遅れる」と読めれば、つながっています。読めない箇所には抜けた段があります。
3. 推測で埋める
「たぶん温度が高かったのだろう」と書いた時点で、そこから下はすべて想像の産物です。記録・現物・現場で裏を取ってから次へ進みます。裏が取れないなら、取れないと書いて確認に行くほうが早い。
4. 5回に合わせようとする
3回で仕組みに届いたのに、体裁のために2段足す。あるいは5段目でまだ人の話をしているのに、5回やったから終わりにする。回数は目安であって、判定基準は「直せば再発しないか」です。
5. 対策が打てない粒度で止める
「教育を徹底する」「意識を高める」で終わる報告書は、真因まで届いていないサインです。だれが・いつ・何を変えるのかが書けるところまで降りているかを確認します。
特性要因図・FTAとの使い分け
原因を追うための手法はほかにもあります。役割が違うので、順番に使うのが実際的です。
| 手法 | 役割 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 特性要因図 | 候補を広げる | 原因の見当がつかず、4Mで漏れなく洗い出したいとき |
| なぜなぜ分析 | 1本を深く掘る | 有力な原因が見えていて、仕組みまで降りたいとき |
| FTA | 論理で構造化する | 複数の要因の組み合わせや発生確率を扱いたいとき |
広げてから掘る、が基本の流れです。特性要因図で要因を洗い出し、有力なものを選んでなぜなぜ分析で掘り下げる。要因がAND・ORで絡み合う設備故障のような対象なら、FTA(故障の木解析)のほうが扱いやすくなります。
よくある質問
Q. なぜは必ず5回繰り返さないといけませんか?
いいえ。5回は目安です。判定の基準は回数ではなく、「そこを直せば再発しないか」「自分たちで直せるか」の2点です。3回で仕組みに届けば3回で終わりますし、7回必要な場合もあります。回数合わせが目的になると分析が形だけになります。
Q. なぜなぜ分析と特性要因図はどちらを先にやるべきですか?
原因の見当がついていないなら特性要因図が先です。4Mの視点で候補を広げ、有力なものを選んでからなぜなぜ分析で深く掘ります。逆に、原因がほぼ絞れている場合は最初からなぜなぜ分析で構いません。
Q.「作業者の確認不足」という答えが出たときはどうすればいいですか?
そこで止めず、仕組み側へ問いを移します。なぜ確認しなかったのかではなく、確認する基準が示されていたか、確認しにくい作業になっていなかったか、確認しなくても次工程へ流れる仕組みだったのかを問います。人の注意力を対策にしても再発は防げません。
なぜなぜ分析で掘り下げる材料は、重大なクレームだけでなく、ヒヤリとした軽微な事象にも眠っています。この「見えている不具合は氷山の一角」という見方はハインリッヒの法則とは|1:29:300とヒヤリハット活用で解説しています。
対策が「教育を徹底する」「注意する」で終わりそうになったら、人の意識に頼らず構造で防ぐ方法としてポカヨケとは|人のミスを止める仕組みと現場の事例を検討します。
なぜなぜ分析の各段が推測ではなく事実に基づいているかを確かめる手段が三現主義です。現場・現物・現実の確かめ方は三現主義とは|現場・現物・現実で原因をつかむ進め方で解説しています。
まとめ
- なぜなぜ分析は、起きた不具合の再発防止に使う(未然防止はFMEAの領域)
- 現象→直接原因→真因と降り、仕組みに手が届くまで掘る
- 5回は目安。判定基準は「直せば再発しないか」「自分たちで直せるか」
- 各段で事実の裏を取り、下から「だから」で読み返して筋を確認する
- 人に向かったら仕組み側へずらす。対策には必ず歯止めをセットにする
まとめると、原因の見当がつかないうちは特性要因図で広げ、絞れたらなぜなぜ分析で深く掘る。この使い分けが出発点です。分析を改善活動として回すための全体の流れはQCストーリーとは|問題解決型の8ステップで、決めた対策を工程の管理に落とし込む方法は管理限界を超えたときの対応手順で解説しています。品質管理の手法を体系的に学びたい方は、レベル別のおすすめ書籍を統計学・実験計画法のおすすめ本まとめで紹介しています。


