品質管理

特性要因図とは|書き方のルールと作り方・記入例

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この記事でわかること

  • 特性要因図の構造(特性・大骨・中骨・小骨)と4M・5Mの考え方
  • 書き方の7つのルールと、作り方の6ステップ
  • めっきの膜厚不良を例にした記入例
  • 洗い出した要因をデータで絞り込む方法と、なぜなぜ分析との使い分け

📌 前提知識:QC七つ道具の全体像を押さえておくと位置づけがわかります

あるめっき工程で、膜厚不良が先月から急に増えました。原因を話し合う改善会議では「液が悪い」「いや作業のやり方だ」と意見が飛び交い、論点が定まらないまま時間だけが過ぎていきます。声の大きい人の意見で対策が決まり、翌月も不良は減りませんでした。

こうした場面で、考えられる原因を1枚の図に並べ、全員で同じものを見ながら議論できるようにするのが特性要因図です。魚の骨のような形から、フィッシュボーン図とも呼ばれます。

形そのものは単純ですが、書き方にはいくつかのルールがあり、それを外すと「きれいな図はできたのに原因にたどり着かない」という結果に終わります。この記事では、書き方のルールと作り方を、めっき不良の記入例で確かめます。

特性要因図とは|使う場面

特性要因図は、ひとつの結果(特性)と、それに影響しうる原因(要因)の関係を、系統立てて整理した図です。QC七つ道具のひとつで、品質管理の分野では石川馨氏が考案したとされ、石川ダイアグラムと呼ばれることもあります。次のような場面で使います。

  • 不良やクレームの原因をチームで洗い出すとき。思いつきを並べるのではなく、抜け漏れなく要因を出します
  • 意見が割れて議論がまとまらないとき。全員の意見を1枚の図に置くことで、論点の全体像を共有できます
  • 次に何をデータで確かめるかを決めるとき。図の中から検証すべき要因を選びます

NG例(△)として、原因がすでにデータではっきりしている場合に、わざわざ特性要因図を描く必要はありません。特性要因図は「原因の候補を広げる」道具で、候補を確かめる道具ではないからです。また、図の中に対策を書き込んでしまうと、原因の整理と対策の検討が混ざって議論が散らかります。

特性要因図の構造|特性・大骨・中骨・小骨

特性要因図は、次の要素でできています。

  • 特性(背骨の先)……解決したい結果。例:「めっきの膜厚不良」
  • 大骨……背骨から斜めに伸びる太い枝。要因の大分類で、製造業では4Mが定番です
  • 中骨・小骨……大骨から枝分かれする具体的な要因。「なぜ?」を繰り返して細かくしていきます

4Mは、要因を分類する4つの観点です。

分類英語例(めっき工程)
人Man作業者の習熟度・確認手順
機械Machine電流値の設定・装置の劣化
材料Materialめっき液の濃度・素材のロット差
方法Method浸漬時間・前処理の条件

4Mに測定(Measurement)を加えた5M、さらに環境(Environment)を加えた5M1Eという分け方もあります。不良を「測って」判定している工程では、測定を大骨に入れておくことをすすめます。測定器の狂いや測り方のばらつきが、不良が増えたように見せていることがあるからです。

なお、4Mという言葉は「変更したら届け出る対象」を洗い出す場面でも使われます。こちらは4M変更管理で扱っています。

書き方の7つのルール

使える特性要因図と、描いただけで終わる特性要因図の差は、次の7つのルールを守れているかどうかでほぼ決まります。

1. 特性は「悪さ」を具体的に書く

「品質を上げる」のような目標ではなく、「膜厚が規格下限を下回る」のように、何がどう悪いのかを具体的に書きます。数値で書けるなら「膜厚不良率が2%を超えた」とするとさらに良いです。特性がぼやけていると、出てくる要因もぼやけます。

2. 特性は1つに絞る

「膜厚不良とムラ」のように2つの結果を1枚にまとめると、どちらの要因なのかが混ざります。結果が違うなら図も分けます。

3. 大骨は4〜6本にする

4Mや5Mで分けるのが基本です。大骨を増やしすぎると、要因がどの骨に属するのか迷い、分類そのものに時間を取られます。工程の順(前処理→めっき→乾燥)で大骨を立てる方法もありますが、その場合も本数は抑えます。

4. 要因は「名詞+状態」で書く

「電流」ではなく「電流値が設定よりずれる」、「液」ではなく「めっき液の濃度が下がる」のように、何がどうなっているかまで書きます。状態まで書くと、あとで「本当にそうなっているか」をデータで確かめられます。

5. 対策や願望を書かない

「作業者を教育する」「点検を徹底する」は対策で、要因ではありません。要因として書くなら「作業者によって前処理の時間が違う」です。対策が図に入ると、原因の分析が済んだ気になってしまいます。

6. 「なぜ」を繰り返して小骨まで掘る

中骨で止めず、「なぜそうなる?」をもう一段掘ります。目安は、その要因に対してすぐ確かめる方法や手を打つ方法が思い浮かぶところまでです。

7. 事実と推測を区別する

現場で確かめた要因と、会議で思いついただけの要因を、印で区別しておきます。たとえば確認済みは◎、推測は○とします。現場・現物・現実を確かめる考え方は三現主義で解説しています。

作り方の6ステップと記入例

めっきの膜厚不良を例に、作る手順を追います。

  1. メンバーを集める……現場の作業者、設備の担当、品質保証など、工程を違う立場から知っている人を入れます
  2. 特性を決めて背骨を引く……右端に「膜厚が規格下限を下回る」と書き、左へ向かう太い矢印を引きます
  3. 大骨を置く……人・機械・材料・方法・測定の5本を、背骨に向けて斜めに引きます
  4. 要因を出し合う……付箋に1枚1要因で書き、該当する大骨の近くに貼っていきます。この段階では批判せず、数を出すことを優先します
  5. 中骨・小骨に整理する……似た付箋をまとめ、「なぜそうなる?」でつながるものを中骨→小骨の順に並べます
  6. 重要要因に印をつける……影響が大きそうなもの、データで確かめたいものに印をつけ、次の検証対象を決めます

完成した図を、大骨ごとに表で書き出すと次のとおりです。

大骨中骨小骨(なぜ?を掘った結果)
人作業者の習熟度新人が前処理の時間を短縮している
人確認手順液濃度の確認が日によって抜ける
機械電流値の設定整流器の設定値が品種切り替え時に戻っていない
機械装置の劣化電極の消耗で接触が不安定になる
材料めっき液の濃度補給のタイミングが担当者任せでばらつく
材料素材のロット差仕入先の変更で表面の粗さが違う
方法浸漬時間タイマーではなく目視で引き上げている
方法前処理の条件脱脂液の温度が季節で変わる
測定膜厚計の校正校正期限が切れたまま使われている
測定測定位置端部と中央で膜厚が違うのに測る位置が決まっていない

表にして眺めると、「確認が抜ける」「担当者任せ」「位置が決まっていない」のように、決め事がないことに起因する要因が大骨をまたいで並んでいることに気づけます。図の上では別々の骨に散らばっていても、根は共通している、という発見は特性要因図の大きな効用です。

重要要因を絞り込んで、データで確かめる

特性要因図で出した要因は、あくまで候補です。印をつけた重要要因は、次の順で確かめていきます。

  • 現場で事実を確かめる……「タイマーではなく目視」が本当かを、実際の作業を見て確認します
  • データで関係を確かめる……電流値と膜厚のように両方を数値で取れる要因は、散布図で関係の強さを見ます
  • 影響の大きさで順位をつける……不良を要因別に数え、パレート図で影響の大きいものから手を打ちます

絞り込んだ要因をさらに深く掘るときは、なぜなぜ分析に引き継ぎます。特性要因図で広げ、なぜなぜ分析で1本を掘る、という順番です。

よくある失敗

  • 要因が抽象的……「人」「管理不足」「ミス」のような言葉で止まっている。状態まで書かないと確かめようがありません
  • 人のせいで終わる……「作業者の不注意」が小骨の末端にある図は、まだ掘り足りていません。なぜ不注意が起きるのか、仕組みの側まで掘ります
  • 図を作って満足する……印をつけた要因を誰がいつまでに確かめるかを決めずに会議が終わると、図は壁に貼られたまま忘れられます
  • 声の大きい意見だけ印がつく……重要要因の選び方は、経験だけでなくデータで見直します

なぜなぜ分析・連関図との使い分け

原因を探る道具はほかにもあります。似た道具との違いを表にまとめます。

道具得意なこと向いている場面
特性要因図要因を広く、抜け漏れなく洗い出す原因の候補がまだ見えていない最初の段階
なぜなぜ分析1つの要因を深く掘り、真因にたどり着く候補が絞れた後、再発防止策を決める段階
連関図要因どうしの因果関係の絡み合いを表す要因が互いに影響し合っていて、4Mの枝に分けにくいとき

連関図は新QC七つ道具のひとつで、言葉のデータを整理する道具です。詳しくは新QC七つ道具で扱っています。工程全体の入力と出力を見渡したうえで要因を探したいときは、SIPOC図で工程の範囲を先に決めておくと、特性要因図の大骨を立てやすくなります。

よくある質問

Q. 特性要因図はExcelで作れますか?

A. 作れます。Excelには特性要因図の専用機能はありませんが、挿入メニューの図形から矢印とテキストボックスを組み合わせて描けます。背骨の矢印を1本引き、大骨の斜め線を上下に交互に置き、要因をテキストボックスで添えていきます。何度も使うなら、大骨まで描いた状態をひな形として保存しておくと、会議のたびにすぐ始められます。

Q. 4Mと5Mはどちらを使えばよいですか?

A. 迷ったら、測定を加えた5Mをすすめます。検査や測定で不良を判定している工程では、測定器や測り方のばらつきが不良に見えていることがあるからです。事務や設計の仕事のように4Mが当てはまりにくい場合は、仕事の手順や情報の流れを大骨にしてもかまいません。

Q. 特性要因図とパレート図はどちらを先に使いますか?

A. 多くの場合はパレート図が先です。まずパレート図で「どの不良から手をつけるか」を決め、その不良を特性にして特性要因図で原因を広げます。原因を絞り込む段階で、要因別に不良を数えて再びパレート図を使うこともあります。

Q. QC検定ではどう出題されますか?

A. QC七つ道具のひとつとして、3級を中心に出題されます。図の各部の名称、4Mの中身、特性要因図がどんな目的に向く道具かを問う問題が多いです。試験全体の出題範囲と勉強の進め方はQC検定3級 攻略ガイドでまとめています。

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まとめ

  • 特性要因図は、1つの特性に対して要因を4M・5Mで抜け漏れなく洗い出す図
  • 書き方のルールは、特性を具体的に1つ、大骨は4〜6本、要因は「名詞+状態」、対策を書かない、なぜを繰り返す、事実と推測を分ける
  • 作り方は、メンバー集め→特性→大骨→要因出し→中骨・小骨の整理→重要要因の印、の6ステップ
  • 図は候補の一覧にすぎない。印をつけた要因は現場とデータで確かめ、パレート図で順位をつける
  • 広く洗い出すなら特性要因図、1本を深く掘るならなぜなぜ分析

まとめると、原因の候補がまだ見えていないなら特性要因図、候補が絞れて真因を突き止めたいならなぜなぜ分析、という使い分けです。図を描き終えたら、印をつけた要因を誰がいつ確かめるかまで決めてから会議を終えてください。

特性要因図を含むQC七つ道具の全体像はQC七つ道具の使い方と選び方、絞り込んだ要因を深く掘る手順はなぜなぜ分析のやり方で解説しています。あわせてご確認ください。

要因どうしが互いに影響し合っていて、1つの枝に収まらないときは連関図を使います。部品の取り違え(月12件)の要因を16本の矢印でつなぎ、出る矢印と入る矢印の数から根本の原因の候補を読む例は連関図とは|書き方と読み方・特性要因図との違いで解説しています。

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