この記事でわかること
- 繰り返しのある二元配置分散分析を使う場面(繰り返しなしとの違い)
- 主効果に加えて「交互作用」を検定する考え方と計算手順
- Excelのデータ分析ツールでのやり方と交互作用グラフの読み方
「成形温度を上げると強度が出る。ただし、それは使う樹脂材料によって変わるらしい」——現場ではこんな”組み合わせ次第”の話がよくあります。2つの要因が単独で効くだけでなく、組み合わせ方で効果が変わるかどうかを調べたいとき、繰り返しのある二元配置分散分析が役に立ちます。この記事では、その中心となる交互作用の検定を、製造現場の例題で解説します。
繰り返しのある二元配置分散分析を使う場面・条件
この手法は、2つの要因(因子)を組み合わせた各条件でデータを複数回(繰り返して)測定しているときに使います。次のような場面に向いています。
- 2つの要因が強度や収率にそれぞれ影響するかを同時に調べたいとき
- 要因の組み合わせによって効果が変わるか(交互作用)を確認したいとき
- 各条件(セル)で2回以上の測定データがあるとき
逆に、各条件のデータが1個ずつしかない場合は交互作用を分離できないため、繰り返しのない二元配置分散分析を使います。前提は分散分析共通で、各群が正規分布に従い分散がほぼ等しいことです(分散分析の前提条件を参照)。
名前が似ていますが、同じ対象を時間をおいて繰り返し測る繰り返し測定分散分析とは別物です。こちらは「各条件を独立に複数サンプル測る」点が違います。
交互作用とは何か(繰り返しなしとの最大の違い)
交互作用とは、一方の要因の効果が、もう一方の要因の水準によって変わることです。たとえば「材料Xと材料Yのどちらが強いか」が、低温か高温かで逆転するなら、そこには交互作用があります。
繰り返しのない二元配置では、データのばらつき(誤差)と交互作用を区別できません。各条件を複数回測ることで初めて、純粋な測定誤差と「組み合わせによる効果」を切り分けられます。これが繰り返しを設ける最大の理由です。
そのため、変動(平方和)の分け方も増えます。全体のばらつきを、要因Aの効果・要因Bの効果・交互作用A×Bの効果・誤差の4つに分解します。
平方和の分解と計算の考え方(Excel対応)
要因Aの水準数を a、要因Bの水準数を b、各セルの繰り返し数を n とします。全データ数は N = a×b×n です。まず全体のばらつき(全平方和 ST)を求めます。
ST = Σx² − (Σx)² / N
第1項はExcelで =SUMSQ(データ範囲)、第2項の合計は =SUM(データ範囲) で求められます。次に、要因A・要因Bそれぞれの平方和を、水準ごとの合計から計算します。
SA = Σ(Aᵢの合計)² / (b·n) − (Σx)²/N
SB = Σ(Bⱼの合計)² / (a·n) − (Σx)²/N
さらに、各セル(A×Bの組み合わせ)の合計から「セル間平方和」を出し、そこからAとBを引いた残りが交互作用の平方和です。
Sセル間 = Σ(各セルの合計)² / n − (Σx)²/N / SA×B = Sセル間 − SA − SB
誤差(セル内のばらつき)は、全体から引き算で求めます。
SE = ST − Sセル間 (= ST − SA − SB − SA×B)
各平方和を自由度で割って分散(平均平方 MS)にし、誤差分散で割ったものがF値です。実務ではExcelの分析ツールが上の計算を自動でやってくれます。手計算の流れを理解したうえで、次の例題で実際に確かめましょう。
例題:成形温度と樹脂材料で引張強度を比べる
成形温度(A:低温/高温)と樹脂材料(B:材料X/材料Y)を組み合わせ、各条件で3個ずつ引張強度(MPa)を測定しました(n=3、全12データ)。
| 条件 | 測定値 | 合計 | 平均 |
|---|---|---|---|
| 低温・材料X | 10, 12, 14 | 36 | 12 |
| 低温・材料Y | 16, 18, 20 | 54 | 18 |
| 高温・材料X | 20, 22, 24 | 66 | 22 |
| 高温・材料Y | 14, 16, 18 | 48 | 16 |
全データの合計は Σx = 204、データ数 N = 12 なので、修正項は (Σx)²/N = 204²/12 = 3468 です。二乗和は Σx² = 3656 なので、全平方和は次のとおりです。
ST = 3656 − 3468 = 188
要因A(温度)は、低温の合計=36+54=90、高温の合計=66+48=114。b·n=6 で割って修正項を引きます。
SA = (90²+114²)/6 − 3468 = 3516 − 3468 = 48
要因B(材料)は、材料Xの合計=36+66=102、材料Yの合計=54+48=102。両方とも102なので、平均では材料差はありません。
SB = (102²+102²)/6 − 3468 = 3468 − 3468 = 0
セル間平方和は4つのセル合計から求めます。
Sセル間 = (36²+54²+66²+48²)/3 − 3468 = 3624 − 3468 = 156
よって交互作用は次のとおりです。
SA×B = 156 − 48 − 0 = 108、誤差 SE = 188 − 156 = 32
分散分析表とF検定
自由度は、要因A=a−1=1、要因B=b−1=1、交互作用=(a−1)(b−1)=1、誤差=ab(n−1)=4×2=8 です。平方和を自由度で割って平均平方(MS)を出し、誤差分散 MSE=4 で割ってF値を求めます。
| 要因 | 平方和S | 自由度df | 平均平方MS | F値 | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|
| 温度A | 48 | 1 | 48 | 12.0 | 有意 |
| 材料B | 0 | 1 | 0 | 0.0 | 有意でない |
| 交互作用A×B | 108 | 1 | 108 | 27.0 | 有意 |
| 誤差E | 32 | 8 | 4 | — | — |
| 全体 | 188 | 11 | — | — | — |
判定の基準となる臨界値は、Excelで =F.INV.RT(0.05, 1, 8) として求めると 5.32 です。各F値とこの値を比べます。
- 温度A:F=12.0 > 5.32 → 有意。温度は強度に影響する
- 材料B:F=0.0 < 5.32 → 有意でない。平均では材料差なし
- 交互作用A×B:F=27.0 > 5.32 → 有意。温度と材料の組み合わせで効果が変わる
ここがこの手法の肝です。材料Bは単独(主効果)では効いていないのに、交互作用は強く出ています。「材料はどっちでも同じ」と早合点せず、組み合わせを見る必要があるとわかります。p値の考え方はp値とはもあわせてご覧ください。
交互作用グラフの読み方
交互作用は数値だけでなく、グラフで見ると一目でわかります。横軸に温度、縦軸に平均強度をとり、材料ごとに線を引きます。
| 低温 | 高温 | |
|---|---|---|
| 材料X | 12 | 22 |
| 材料Y | 18 | 16 |
低温では材料Y(18)が材料X(12)より強く、高温では逆に材料X(22)が材料Y(16)を上回ります。2本の線が交差し、優劣が入れ替わります。線が平行なら交互作用なし、交わったり傾きが大きく違ったりすると交互作用ありと読みます。
このケースの結論は「材料はどちらが良いと一概に言えず、低温なら材料Y、高温なら材料Xを選ぶべき」です。交互作用が有意なときは、主効果だけで判断せず、条件ごとに最適な水準を選びます。
Excelのデータ分析ツールでのやり方
手計算の流れがわかれば、あとはExcelに任せられます。分析ツールでの分散分析の手順に沿って操作します。
- データを「行=要因A、列=要因B」の形に並べる。各セルに繰り返しデータを縦に積む(例:低温の3行×材料X・Yの2列…を温度ごとにブロックで配置)
- 「データ」タブ →「データ分析」→「分散分析:繰り返しのある二元配置」を選ぶ
- 入力範囲にラベルを含めて指定し、「1標本あたりの行数」に 3(繰り返し数n)を入力
- 有意水準 α=0.05 を確認してOK
出力された分散分析表の「標本」が要因A、「列」が要因B、「交互作用」がA×Bに対応します。F値とP値、F境界値が表示されるので、P値が0.05未満かどうかで判定できます。上の例題と同じF値(12.0/0.0/27.0)になることを確認してみてください。
各セルのデータ数が異なる(不釣り合い型)と、この分析ツールは使えません。その場合はRやPythonを使います(Pythonで分散分析)。
まとめ
繰り返しのある二元配置分散分析のポイントを整理します。
- 各条件を複数回測ることで、主効果に加えて交互作用を検定できる
- 全変動を要因A・要因B・交互作用A×B・誤差の4つに分解する
- 各F値を臨界値(=F.INV.RT(0.05, df1, df2))と比べて判定する
- 主効果がなくても交互作用が出ることがある。交互作用グラフで優劣の入れ替わりを確認する
- 交互作用が有意なら、条件ごとに最適な水準を選ぶ
各条件のデータが1個ずつなら繰り返しのない二元配置分散分析、要因が1つなら一元配置分散分析を使います。どの検定を選ぶか迷ったら統計的検定の選び方も参考にしてください。
交互作用そのものの意味や、主効果だけでは判断を誤るケースは交互作用とは|主効果との違いと交互作用図の読み方で解説しています。


