この記事でわかること
- ダネットの方法(Dunnett法)が何をする検定か
- 対照群と複数の処理群を比べる場面での使い方
- 計算の考え方・例題と、Tukey法との使い分け
「標準の製造条件に対して、新しく試した3つの条件のうち、どれが本当に効果ありと言えるのか」——基準となる対照と、複数の新条件を比べたい。こんな場面で使うのがダネットの方法(Dunnett法)です。この記事では、Dunnett法をどんなときに使い、どう考えるのかを例題つきで解説します。
ダネットの方法を使う場面・条件
ダネットの方法は、1つの対照群(コントロール)と、複数の処理群をそれぞれ比較する多重比較法です。次のような場面に向いています。
- 標準条件(対照)に対して、改良案A・B・Cが効果を持つか確かめたいとき
- 無処理・プラセボなどの基準と、各処理を比べたいとき
- 処理群どうしの比較は不要で、対照との比較だけに関心があるとき
適用の前提は分散分析と同じで、各群が正規分布に従い、分散がほぼ等しいことです。3群以上を扱うので、まず一元配置分散分析で全体に差があるかを確認してから使うのが基本の流れです。
Tukey法との違い(なぜ検出力が高いのか)
TukeyのHSD法がすべての群の総当たり(全ペア)を比較するのに対し、ダネットの方法は対照群との比較だけに絞ります。比較の回数が少ないぶん検定の調整がゆるくて済むため、対照との比較に限ればTukey法より差を検出しやすい(検出力が高い)のが特長です。
| 項目 | ダネットの方法 | Tukey法 |
|---|---|---|
| 比較する組 | 対照群 vs 各処理群のみ | すべての群の総当たり(全ペア) |
| 向いている目的 | 基準と各条件の比較 | どの群どうしにも差があるか |
| 検出力 | 対照との比較では高い | 標準的 |
計算の考え方
処理群iと対照群の平均の差を、ばらつき(標準誤差)で割ってt値を求め、ダネット専用の臨界値と比べます。
t = (x̄ᵢ − x̄_対照) / √(Vₑ(1/nᵢ + 1/n_対照))
Vₑは分散分析で求めた誤差分散(級内分散)、nはサンプル数です。求めたtの絶対値が、群数・自由度・有意水準で決まるダネットの臨界値表の値を超えれば「対照と有意差あり」と判断します。臨界値表はTukeyやBonferroniとは別の専用表を使う点に注意してください。
例題:標準条件と3つの新条件を比べる
標準条件(対照)と、新条件A・B・Cで収率を比較しました。分散分析の結果、全体には有意差があり、誤差分散から求めた差の標準誤差は 1.5 だったとします。各群の平均と、対照との差は次のとおりです。
| 群 | 平均収率(%) | 対照との差 | t値(差÷1.5) |
|---|---|---|---|
| 対照(標準) | 80 | — | — |
| 新条件A | 82 | +2 | 1.33 |
| 新条件B | 85 | +5 | 3.33 |
| 新条件C | 81 | +1 | 0.67 |
このケースのダネットの臨界値を約2.5とすると、t値がこれを超えるのは新条件Bだけです。つまり「標準より有意に収率が高いと言えるのはBのみ」と結論できます。AとCは差が見られても、偶然の範囲を超えるとは言えません。
Excelの標準の分析ツールにはダネットの方法は用意されていません。実務ではダネットの臨界値表を使うか、RやPythonなどの統計ソフトで計算します。Pythonでの多重比較はPythonで多重比較法で扱っています。
まとめ
ダネットの方法のポイントを整理します。
- ダネットの方法は対照群と各処理群を比較する多重比較法
- 比較を対照との組に絞るため、Tukey法より検出力が高い
- 前提は分散分析と同じ(正規分布・等分散)。まず分散分析で全体差を確認する
- 判定は t値 とダネット専用の臨界値表を比較する
- 「基準と各条件の比較」ならDunnett、「全ペア比較」ならTukey
多重比較法は目的に応じて使い分けます。手法の全体像と選び方は多重比較法の種類と選び方、全ペア比較はTukeyのHSD法、比較数が少ないときのBonferroni補正もあわせてご覧ください。

