この記事でわかること
- シェッフェの方法(Scheffe法)が何をする検定か
- 群をまとめた「任意の対比」を検定する使い方
- F分布を使った臨界値の求め方(Excel対応)と例題
「既存の2つの製法をまとめた平均と、新製法を比べたい」——個々の群どうしではなく、群をグループにまとめて比較したい場面があります。こうした任意の対比を検定できるのが、シェッフェの方法(Scheffe法)です。この記事では、Scheffe法の使いどころと、F分布を使った判定のしかたを例題で解説します。
シェッフェの方法を使う場面・条件
シェッフェの方法は、3群以上で任意の対比(群の線形結合)を検定できる多重比較法です。次のような場面に向いています。
- 個々のペアではなく、群をまとめた比較をしたいとき(例:A・Bの平均 vs C)
- 事前に決めていない、いろいろな対比を後から検討したいとき
- とにかく安全側(保守的)に判定したいとき
前提は分散分析と同じで、各群が正規分布に従い分散がほぼ等しいことです。まず一元配置分散分析で全体差を確認してから使います。Scheffe法は適用範囲が広い反面、もっとも保守的(差を検出しにくい)な手法でもあります。
Tukey・Dunnettとの使い分け
全ペアを比べるだけならTukey法、対照との比較ならDunnett法が向きます。Scheffe法は「群をまとめた対比」など複雑な比較が必要なときに選びます。
臨界値の求め方(F分布・Excel対応)
対比 L は、各群平均に係数 cᵢ(合計が0になるように決める)を掛けて足したものです。たとえば「C vs A・Bの平均」なら係数は C=+1、A=−0.5、B=−0.5 です。
L = Σ cᵢ x̄ᵢ / 対比の標準誤差 SE = √(Vₑ × Σ(cᵢ²/nᵢ))
Vₑは分散分析の誤差分散です。Scheffe法の臨界値 S は、群数 k と自由度からF分布で求めます。
S = √((k−1) × F(α, k−1, N−k))
このF値はExcelで =F.INV.RT(0.05, k−1, N−k) として求められます。|L| ÷ SE が S を超えれば、その対比は有意と判断します。
例題:2つの従来製法の平均と新製法を比べる
従来製法A・Bと新製法Cの収率を、各5サンプル(n=5)で測定しました。分散分析の誤差分散は Vₑ=3 とします。
| 群 | 平均収率(%) | 対比の係数 |
|---|---|---|
| 従来A | 80 | −0.5 |
| 従来B | 82 | −0.5 |
| 新製法C | 88 | +1 |
対比は L = 88 − (80+82)/2 = 88 − 81 = 7。標準誤差は SE = √(3 × ((1²+0.5²+0.5²)/5)) = √(3 × 0.3) = √0.9 ≒ 0.95 です。よって |L|÷SE = 7 ÷ 0.95 ≒ 7.38。
臨界値は、群数 k=3・全体 N=15・誤差自由度 N−k=12 から、F(0.05, 2, 12)=3.89 を使って S = √(2 × 3.89) ≒ 2.79 です。7.38 は 2.79 を大きく超えるので、「従来2製法の平均より新製法Cの収率は有意に高い」と結論できます。
Excelの標準の分析ツールにシェッフェの方法はありません。上記のようにF.INV.RTで臨界値を出して手計算するか、RやPythonを使います(Pythonで多重比較法)。
まとめ
シェッフェの方法のポイントを整理します。
- Scheffe法は任意の対比(群をまとめた比較も)を検定できる多重比較法
- もっとも汎用的だが、もっとも保守的(差を検出しにくい)
- 臨界値は S = √((k−1)・F(α, k−1, N−k))。FはExcelの =F.INV.RT() で求まる
- |対比|÷標準誤差 が S を超えれば有意
- 全ペアはTukey、対照比較はDunnett、複雑な対比はScheffe
手法の全体像と選び方は多重比較法の種類と選び方にまとめています。あわせてTukeyのHSD法・ダネットの方法・Bonferroni補正もご覧ください。

