この記事でわかること
- 因子と水準とは何か、決め方の手順
- 制御因子・誤差因子の洗い出し方と水準の設定の考え方
- 因子水準表の作り方と、必要な実験回数の見積もり
📌 前提知識:実験計画法とはを読んでおくと全体像がつかめます
「収率を上げたいけれど、温度・圧力・添加剤のどれをどこまで振って実験すればいいのか」——実験計画でいちばん最初に決めるのが、この因子と水準です。ここを適当に決めると、後の解析がうまくいかず実験もやり直しになります。この記事では、因子と水準の決め方と、計画の出発点になる因子水準表の作り方を、製造業の例で解説します。
因子と水準を決めるのはどんな場面か
因子と水準を決めるのは、実験を計画する一番最初のステップです。次のような場面で必要になります。
- 製品の特性(収率・強度・寸法など)を改善したいが、何をどう変えれば効くのか知りたいとき
- 複数の条件が結果に影響していて、効いている要因を絞り込みたいとき
- 直交表や分散分析を使う前に、実験の枠組みを固めたいとき
ここで枠組みを誤ると、実験データを取り直すことになります。先に因子と水準をていねいに決めることが、結果的に実験回数の節約につながります。
因子と水準とは
因子とは、結果(特性値)に影響しそうな条件のことです。温度・圧力・材料・作業者などが因子にあたります。水準とは、その因子を実験で振る値や区分のことです。たとえば温度という因子に対して「160℃」「180℃」という2つの水準を設定します。
因子は性質によって次の2種類に分けて考えると整理しやすくなります。
- 制御因子:温度や圧力など、こちらで意図的に設定・調整できる因子。実験計画の主役
- 誤差因子(ノイズ因子):気温・ロット差など、制御しにくい因子。ばらつきの原因になる
誤差因子のばらつきにも強い条件を探したいときは、ロバスト設計のタグチメソッドが役立ちます。
因子と水準の決め方(手順)
因子と水準は、次の手順で決めます。
- 特性値(測りたい結果)を決める:収率・強度・寸法など。測定方法と測定の誤差も確認する(ゲージR&R)
- 因子を洗い出す:特性に効きそうな条件を、現場のメンバーで幅広く挙げる(ブレインストーミング)
- 因子を絞る:効果が大きそうな制御因子を3〜4個に絞る。多すぎると実験回数が爆発する
- 水準を設定する:各因子に2〜3水準を設定する。現実的に再現できる範囲で、効果が出る程度に離す
- 因子水準表にまとめる:因子と水準を表に整理し、実験の枠組みを固める
水準の幅は「広すぎると現実離れ、狭すぎると差が出ない」のバランスが大切です。迷ったら、ふだんの操業条件を中心に、その上下に1水準ずつ取ると扱いやすくなります。
因子水準表の作り方(例)
収率を上げる実験を例に、因子水準表を作ってみます。効きそうな制御因子を3つ、それぞれ2水準で設定しました。
| 記号 | 因子 | 水準1 | 水準2 |
|---|---|---|---|
| A | 温度 | 160℃ | 180℃ |
| B | 圧力 | 低 | 高 |
| C | 添加剤 | 無 | 有 |
この表が因子水準表です。実験の設計図にあたり、ここから「どの組み合わせで実験するか」を決めていきます。
必要な実験回数の見積もりと直交表
すべての組み合わせを試す「完全実施」では、実験回数は水準数の因子数乗になります。先ほどの3因子2水準なら 2³=8通りです。因子や水準が増えると回数は急増します。
- 3因子・2水準:2³ = 8通り
- 4因子・2水準:2⁴ = 16通り
- 3因子・3水準:3³ = 27通り
回数が現実的でなくなったら、組み合わせを間引いて効率よく評価する一部実施要因配置実験(直交表)を使います。たとえばL8直交表なら2水準の因子を最大7個まで8回の実験で評価できます。因子水準表ができていれば、そのまま直交表への割り付けに進めます。
因子を1つずつ動かす単一因子実験と、複数を同時に動かす要因実験の違いは要因実験と単一因子実験で解説しています。実験後の解析は分散分析で行います。
まとめ
因子と水準の決め方のポイントを整理します。
- 因子=結果に効きそうな条件、水準=その因子を振る値
- 因子は制御因子と誤差因子に分けて整理する
- 手順は「特性値→因子の洗い出し→絞り込み(3〜4個)→水準設定(2〜3水準)→因子水準表」
- 完全実施の実験回数は水準数の因子数乗。増えすぎたら直交表で間引く
因子水準表は実験計画の出発点です。ここが固まれば、直交表での割り付けや分散分析による解析へスムーズに進めます。実験計画法の全体像は実験計画法とはで確認できます。

