部分配置実験

一部実施要因配置実験(2^k-p計画)の設計と解析

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因子が4つあって、全組み合わせで実験すると16通りになる。時間もコストも足りない、でも全因子の影響は確認したい。 そんなときに使うのが一部実施要因配置実験(部分実施計画、2^(k-p)計画)です。 この記事では、なぜ実験回数を減らせるのかという仕組みを整理したうえで、 Excelを使って主効果を計算し、重要因子を特定するまでの手順を順番に示します。

完全実施との違い:なぜ半分の実験でいいのか

2水準の因子が \(k\) 個あるとき、全組み合わせを実施する完全実施要因配置実験の実験数は \(2^k\) です。 因子が4つなら16回、5つなら32回と、因子が1つ増えるだけで倍になります。

一部実施要因配置実験(2^(k-p)計画)では、この \(2^k\) 回の実験を \(2^{k-p}\) 回に減らします。 \(p=1\) なら半分、\(p=2\) なら4分の1です。実験を省略できる理由は「高次の交互作用は小さいことが多い」という経験則にあります。

たとえば因子A・B・C・Dの4因子があるとき、A×B×C×Dの4因子交互作用が製品品質に強く影響することは現実にはまれです。 この高次交互作用をあえて「どうせ小さいだろう」と仮定して実験を省略し、その分の情報を主効果の推定に使うのが部分実施計画の考え方です。

解像度(Resolution):交絡の程度を表す指標

実験を省略すると、ある効果の推定値に別の効果が混じります。これを交絡(aliasing)と呼びます。 交絡がどのくらい深刻かを示す指標が解像度(Resolution)です。

解像度記号意味実用性
Resolution IIIIII主効果が2因子交互作用と交絡スクリーニング(重要因子の絞り込み)向け
Resolution IVIV主効果は2因子交互作用と非交絡。2因子交互作用どうしが交絡主効果の推定は信頼できる。実務でよく使う
Resolution VV主効果・2因子交互作用ともに3因子以上の交互作用としか交絡しない2因子交互作用まで安心して推定できる

4因子2水準で8回実験する 2^(4-1) 計画 は Resolution IV です。 主効果は独立に推定できるので、「どの因子が効いているか」を判断するには十分な精度があります。

直交表との関係でいうと、L8直交表を4因子に割り付けたものが 2^(4-1) 計画に相当します。 割り付けの具体的な手順はエクセルでL8直交表の記事を参照してください。

今回の例題:樹脂部品の引張強度

熱可塑性樹脂の射出成形品について、引張強度(MPa)に影響する4因子を調べる実験です。 予算と設備の制約から、全16回の完全実施ではなく8回の 2^(4-1) 計画で実施します。

記号因子低水準(−1)高水準(+1)
A金型温度180℃210℃
B射出速度低速高速
C保圧時間10秒20秒
D材料ロットロットXロットY

実験計画表と結果

2^(4-1) 計画の設計生成子は D = ABC です。 A・B・C の水準をすべて組み合わせた8通りの実験に、D = A×B×C の符号を割り当てます。

実験 No.A(金型温度)B(射出速度)C(保圧時間)D=ABC(材料ロット)引張強度 y(MPa)
1-1-1-1-141.2
2+1-1-1+145.8
3-1+1-1+143.1
4+1+1-1-147.5
5-1-1+1+144.0
6+1-1+1-148.3
7-1+1+1-144.7
8+1+1+1+150.2

Excelで主効果を計算する

主効果の計算式

各因子の主効果は「高水準のときの平均」と「低水準のときの平均」の差です。\[ \text{主効果}_A = \bar{y}(A=+1) – \bar{y}(A=-1) \]

因子Aが +1 の実験は No.2・4・6・8、−1 の実験は No.1・3・5・7 です。\[ \bar{y}(A=+1) = \frac{45.8 + 47.5 + 48.3 + 50.2}{4} = 47.95 \] \[ \bar{y}(A=-1) = \frac{41.2 + 43.1 + 44.0 + 44.7}{4} = 43.25 \] \[ \text{主効果}_A = 47.95 – 43.25 = +4.70 \text{ MPa} \]

金型温度を低から高に変えると、引張強度が平均 4.70 MPa 上がることを意味します。

Excelでの計算手順

A列〜F列に実験計画表を入力し、G列以降に主効果を計算します。

  1. A1〜F9 に上記の実験計画表(ヘッダー含む)を入力
  2. H2セルに「=AVERAGEIF(B$2:B$9,1,$F$2:$F$9)-AVERAGEIF(B$2:B$9,-1,$F$2:$F$9)」と入力 → 因子Aの主効果
  3. I2・J2・K2 に同様の式で因子B・C・Dの主効果を計算($B を対応する列に変える)

AVERAGEIF関数の構文は =AVERAGEIF(水準の列, 条件値, 応答値の列) です。 高水準(+1)の平均から低水準(−1)の平均を引くだけなので、Excel操作としては難しくありません。

全因子の主効果まとめ

因子主効果(MPa)解釈
A:金型温度+4.70温度を上げると強度が上がる
B:射出速度+1.55やや影響あり
C:保圧時間+2.40時間を長くすると強度が上がる
D:材料ロット+0.35ほぼ影響なし

主効果の絶対値の大きい順に A(4.70)> C(2.40)> B(1.55)> D(0.35)となります。 金型温度と保圧時間が引張強度に強く影響していることがわかります。

効果プロット(主効果プロット)の作り方

主効果を棒グラフや折れ線グラフで可視化すると、因子の影響度が一目で比較できます。 Excelでは次のように作ります。

  1. 各因子の低水準・高水準の平均値をまとめた表を作成(2行×4列)
  2. この表を選択して「挿入」→「折れ線グラフ」を挿入
  3. X軸を水準(−1・+1)、各因子を1系列として並べる
  4. 傾きが急な因子ほど影響が大きい

グラフを見ると、Aの折れ線が最も急で、Dがほぼ水平になります。 「どの因子を重点的に管理すべきか」を技術資料として提示するとき、この図は説明の助けになります。

Excelのデータ分析ツールで分散分析を実施する

主効果の大小は計算できましたが、「その差が偶然の範囲なのか」は分散分析で確認します。 一部実施計画の場合、反復がないため誤差の自由度が少なくなりますが、重要でない因子の効果を誤差に繰り入れることで対応します。

今回は主効果の小さい因子D(0.35 MPa)を誤差項に繰り入れ、残り3因子(A・B・C)を分散分析にかけます。

分散分析の手順

  1. 「データ」タブ → 「データ分析」→「分散分析:一元配置」を選択
  2. ただし一元配置では対応できないため、手動で分散分析表を作成する方が確実です

各因子の変動(SS)は主効果と実験数から次の式で計算できます。\[ SS_A = \frac{n}{4} \times (\text{主効果}_A)^2 \]

\(n = 8\)(実験数)なので:\[ SS_A = \frac{8}{4} \times (4.70)^2 = 2 \times 22.09 = 44.18 \]

要因変動 SS自由度 df分散 MSF値判定(F₀.₀₅)
A:金型温度44.18144.1852.6有意 ✔
B:射出速度4.8114.815.73有意でない
C:保圧時間11.52111.5213.7有意 ✔
誤差(D繰り入れ)0.84 + D の変動40.84
合計7

F分布表より自由度(1, 4)の5%点は F = 7.71 です。 A(F=52.6)と C(F=13.7)は有意、B(F=5.73)は有意でないという結果になります。

交絡の取り扱い:結果を解釈するときの注意点

Resolution IV の 2^(4-1) 計画では主効果は独立に推定できますが、2因子交互作用どうしが交絡しています。 具体的には次の交絡構造があります。

  • AB ⇔ CD(AとBの交互作用は、CとDの交互作用と交絡)
  • AC ⇔ BD
  • AD ⇔ BC

たとえば「金型温度と射出速度の交互作用(AB)が大きい」という推定値は、 実は「保圧時間と材料ロットの交互作用(CD)」が混じった値です。 どちらの交互作用が本当に効いているかは、今回の8回の実験だけでは区別できません。

重要な因子が特定されたら、交絡を解消する追加実験(折り畳み実験、フォールドオーバー)を行うか、 完全実施計画に切り替えて2因子交互作用を個別に評価する方が確実です。

一部実施計画を使うときの判断基準

  • スクリーニング段階(多くの因子を持ち込んで重要因子を絞り込む)に適している
  • Resolution III は主効果のスクリーニングのみ。主効果が交互作用と交絡するため、詳細解析には使わない
  • Resolution IV 以上なら主効果の評価は信頼できる
  • 2因子交互作用を正確に推定したい場合は Resolution V 以上の計画か、完全実施を選ぶ
  • 重要因子が2〜3つに絞り込めたら、そこからは完全実施(2²〜2³)または応答曲面法に進む

まとめ

  • 2^(k-p) 計画は「高次交互作用は小さい」という仮定のもとで実験を省略する。スクリーニング段階で有効
  • 解像度は交絡の深刻さを示す。Resolution IV 以上なら主効果の推定は信頼できる
  • 主効果は AVERAGEIF 関数で計算できる。高水準平均 − 低水準平均の差が主効果
  • 分散分析は効果の小さい因子を誤差に繰り入れて実施する
  • 2因子交互作用まで評価したい場合は、追加実験またはより高次の計画が必要

直交表への割り付け方についてはエクセルでL8直交表2水準直交表(交互作用なし)を参照してください。 実験後の解析をさらに詳しく知りたい場合はExcelで分散分析もあわせて読むと、分散分析表の作り方の理解が深まります。

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