実験計画法

応答曲面法(RSM)とは?基礎と実験計画への応用を解説

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直交表による実験計画法は「どの因子が効くか」を効率よく絞り込む手法でした。では、「その因子の最適値はいくつか」を知りたいときはどうすればいいか。そのために使うのが応答曲面法(Response Surface Methodology、RSM)です。

直交表実験との違い

実験計画法の直交表は、因子を「水準」として離散的に扱います。たとえば温度を「160℃・180℃・200℃」の3水準で設定するイメージです。これで「どの温度帯が良いか」の傾向は掴めます。

でも「最適温度は175℃なのか192℃なのか」という連続的な最適値を求めるには、直交表実験だけでは限界があります。RSMは因子を連続量として扱い、応答(目的変数)の形を曲面としてモデル化して最適条件を特定します。

応答曲面法の基本的な考え方

RSMでは、応答 \(y\) を因子 \(x_1, x_2, \ldots\) の二次多項式でモデル化します。2因子の場合の式はこちらです。\[ y = \beta_0 + \beta_1 x_1 + \beta_2 x_2 + \beta_{11} x_1^2 + \beta_{22} x_2^2 + \beta_{12} x_1 x_2 + \varepsilon \]

各項の意味はこちら。

  • \(\beta_0\):切片(全体の基準値)
  • \(\beta_1, \beta_2\):主効果(各因子の一次の効果)
  • \(\beta_{11}, \beta_{22}\):二次効果(曲率。「山型か谷型か」を決める)
  • \(\beta_{12}\):交互作用効果

このモデルから「応答が最大(または最小)になる \(x_1, x_2\) の値」を数学的に求めるのがRSMの核心です。

端的に言うと、”結果 y を、条件 x1・x2 の組み合わせで表す式を作り、最も良い条件を探す方法”です。

RSMの実験計画:どの点でデータを取るか

二次モデルを推定するには、格子点だけでなく軸上の点や中心点も含めた実験計画が必要です。代表的な計画が2つあります。

中心複合計画(Central Composite Design、CCD)

最もよく使われる計画です。2水準の完全要因計画(または一部実施計画)に、軸点(star points)と中心点を追加して構成します。2因子の場合、実験点は次のようになります。

点の種類位置のイメージ役割
角点(factorial points)正方形の4頂点主効果・交互作用の推定
軸点(axial points)各軸上の±α点(4点)二次効果(曲率)の推定
中心点(center points)中央(3〜5回繰り返し)純誤差の推定・モデルの適合度確認

Box-Behnken計画(BBD)

軸点の代わりに「辺の中点」を使う計画です。CCDと異なり、因子の極端な組み合わせ(全因子が最大値・最小値)の実験点がありません。実験条件の組み合わせに物理的な制約がある場合に向いています。

具体例:温度と圧力の最適条件を求める

樹脂の成形工程で、温度(\(x_1\))と圧力(\(x_2\))が製品の引張強度(MPa)に与える影響を調べます。CCDで13点の実験を行い、重回帰分析で応答モデルを推定します。

実験番号温度 \(x_1\) (℃)圧力 \(x_2\) (MPa)引張強度 \(y\)
11604.052
22004.058
31606.055
42006.070
51525.050
62085.065
71803.654
81806.462
9〜13180(中心)5.0(中心)61〜63

このデータに二次モデルを当てはめると、たとえば次のような式が得られます(係数は回帰分析で推定)。\[ \hat{y} = -198.5 + 1.82 x_1 + 12.3 x_2 – 0.0045 x_1^2 – 0.85 x_2^2 + 0.018 x_1 x_2 \]

この式を偏微分してゼロと置くことで、応答が最大になる条件(定常点)を求めます。\[ \frac{\partial \hat{y}}{\partial x_1} = 0, \quad \frac{\partial \hat{y}}{\partial x_2} = 0 \]

連立方程式を解くと、たとえば最適条件が「温度 189℃、圧力 5.6 MPa」と得られます。直交表実験では到達できなかった連続的な最適値が特定できます。

応答曲面法の実施ステップ

  1. スクリーニング実験2水準直交表や要因実験で、効いている因子を2〜3個に絞る
  2. 実験計画の選択:CCD or BBD を決め、実験点を設定する
  3. 実験の実施:各実験点でデータを取得する
  4. モデルの推定:重回帰分析で二次モデルを推定する(Excelの回帰分析ツールで実行できます)
  5. モデルの検証:決定係数・残差・適合度検定でモデルの良さを確認する
  6. 最適条件の決定:定常点を求め、実験で確認する

Excelでできること・できないこと

Excelでも二次モデルの回帰分析(ステップ4)は実行できます。回帰分析のやり方と結果の見方の手順で、\(x_1, x_2, x_1^2, x_2^2, x_1 x_2\) を説明変数として投入すれば係数が推定できます。

ただし応答曲面の3Dグラフや最適点の自動探索はExcelでは手間がかかります。本格的なRSM解析はJMP・Minitab・Rなどの統計ソフトを使うのが現実的です。

まとめ

直交表実験が「効く因子を探す」手法なら、RSMは「最適値を見つける」手法です。製品開発や工程最適化の最終段階で使います。

実務での流れとしては、まず要因実験直交表で重要因子を絞り込んでからRSMに進む、という順序が一般的です。一度に全部やろうとすると実験回数が膨大になるので、スクリーニング→RSMの2段階で進めるのがコツです。

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