部分配置実験

混合水準直交表(L18)の使い方と解析手順

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実験で調べたい因子のうち、「水準を2つにしたい因子」と「水準を3つにしたい因子」が混在することがあります。 たとえば原材料のサプライヤーを2社で比較しながら、温度・時間・圧力はそれぞれ3段階で検討したい、というケースです。 こうした場面で使うのが混合水準直交表、代表的なものが L18 直交表です。 この記事では L18 の仕組みと、Excelで主効果を計算する手順を示します。

混合水準計画とは:L8・L9との違い

これまでの記事で扱った L8 は2水準専用(各因子を「低・高」の2段階で評価)、 L9 は3水準専用(各因子を「低・中・高」の3段階で評価)の直交表でした。 L18 はその両方を1つの表に組み込んだ混合水準直交表で、次の構成になっています。

直交表実験数列構成用途
L88回2水準 × 7列2水準因子のみ
L99回3水準 × 4列3水準因子のみ
L1818回2水準 × 1列 + 3水準 × 7列2水準因子と3水準因子の混合
L2727回3水準 × 13列3水準因子のみ(多因子)

L18 で評価できる因子は最大8個(2水準が1列、3水準が7列)。 全組み合わせの完全実施なら 2 × 3⁷ = 4,374 通りになるところを、わずか18回に圧縮できます。

L18 直交表の構造

L18 の列割り付けの標準形は以下のとおりです。1列目が2水準(1・2)、2〜8列目が3水準(1・2・3)です。

実験 No.列1(2水準)列2列3列4列5列6列7列8
111111111
211222222
311333333
412112233
512223311
612331122
713121323
813232131
913313212
1021133221
1121211332
1221322113
1322123132
1422231213
1522312321
1623132312
1723213123
1823321231

各列について任意の2行を選ぶと、水準の組み合わせが均等に現れる(直交性)のが直交表の特徴です。 この構造のおかげで、18回の実験で各因子の主効果を独立に推定できます。

例題:塗装工程の密着強度を改善する

自動車部品の塗装工程で、密着強度(N/mm²)に影響する因子を調べます。 材料のサプライヤーは2社から選ぶので2水準、他の4因子は3水準で評価します。

割り付け列因子水準1水準2水準3
列1(2水準)A:材料サプライヤー社X社Y
列2B:焼付温度(℃)140160180
列3C:焼付時間(分)203040
列4D:前処理方法脱脂A脱脂B脱脂C
列5E:塗布厚さ(μm)203040
列6〜8(空列・誤差推定用)

5因子を調べるのに18回の実験で済みます。全組み合わせ(2×3⁴ = 162通り)の約11%です。 残り3列(列6〜8)は因子を割り付けず、誤差の推定に使います。

実験結果データ

No.A(サプライヤー)B(温度)C(時間)D(前処理)E(塗布厚)密着強度 y
1111118.2
2112229.4
31133310.1
4121129.8
51222310.5
61233111.2
71312110.8
81323211.5
91331312.1
10211338.8
11212119.1
12213229.7
132212310.2
142223110.6
152231211.3
162313211.0
172321311.8
182332112.4

Excelで主効果を計算する

2水準因子(A:サプライヤー)の主効果

2水準因子はこれまでの L8 と同じ方法です。水準1の平均と水準2の平均の差を求めます。\[ \text{主効果}_A = \bar{y}(A=2) – \bar{y}(A=1) \]

Excelの数式:=AVERAGEIF(A列の範囲, 2, y列の範囲) - AVERAGEIF(A列の範囲, 1, y列の範囲)

水準1(社X)の9実験(No.1〜9)の平均:(8.2+9.4+10.1+9.8+10.5+11.2+10.8+11.5+12.1)÷9 = 10.40
水準2(社Y)の9実験(No.10〜18)の平均:(8.8+9.1+9.7+10.2+10.6+11.3+11.0+11.8+12.4)÷9 = 10.54
主効果A = 10.54 − 10.40 = +0.14 N/mm²

3水準因子の主効果:水準ごとの平均を比較する

3水準因子は「水準1・2・3それぞれの平均値」を並べて比較します。 差が大きいほど影響力が強い因子です。

ExcelのAVERAGEIF式で各水準の平均を計算します(因子Bの例):

  • =AVERAGEIF(B列の範囲, 1, y列の範囲) → 温度140℃の平均
  • =AVERAGEIF(B列の範囲, 2, y列の範囲) → 温度160℃の平均
  • =AVERAGEIF(B列の範囲, 3, y列の範囲) → 温度180℃の平均

全因子の水準別平均と主効果一覧

因子水準1の平均水準2の平均水準3の平均最大−最小(効果の幅)
A:サプライヤー10.4010.540.14
B:焼付温度9.2210.6011.602.38
C:焼付時間9.8010.4811.131.33
D:前処理10.3810.5010.530.15
E:塗布厚さ10.3810.4510.560.20

効果の幅(最大水準の平均 − 最小水準の平均)が大きい順に並べると、
B(焼付温度:2.38)> C(焼付時間:1.33)> E(塗布厚さ:0.20)>D(前処理:0.15)> A(サプライヤー:0.14)

焼付温度が圧倒的に影響が大きく、水準3(180℃)で密着強度が最も高くなっています。 前処理方法(D)とサプライヤー(A)はほとんど影響がないと判断できます。

主効果プロット(効果グラフ)の作り方

水準別平均値の表をExcelで折れ線グラフにすると、各因子の影響の大きさと方向が一目でわかります。

  1. 水準別平均の表(3行×5列程度)を作成
  2. 表を選択して「挿入」→「折れ線グラフ」
  3. X軸を水準(1・2・3)、各因子を1系列として重ねて表示
  4. 傾きが急な系列ほど影響が大きい因子

分散分析で重要因子を統計的に判断する

主効果の幅だけでは「偶然の誤差でその差が生じた可能性」が残ります。 空列(列6〜8)を誤差の推定に使って分散分析を実施し、各因子の効果が有意かどうかを確認します。

3水準因子の変動(SS)は次の式で計算できます。\[ SS_B = \frac{n}{3} \left[ (\bar{y}_{B1} – \bar{\bar{y}})^2 + (\bar{y}_{B2} – \bar{\bar{y}})^2 + (\bar{y}_{B3} – \bar{\bar{y}})^2 \right] \times 3 \]

ここで \(\bar{\bar{y}}\) は全体平均(= 10.47)、\(n = 18\)(実験数)、各水準の繰り返し数は6です。 自由度は(水準数 − 1)= 2 です。

要因変動 SS自由度 df分散 MSF値判定
A(2水準)0.0910.0901.3有意でない
B(3水準)22.07211.035162.3有意 ✔
C(3水準)5.3222.66039.1有意 ✔
D(3水準)0.0220.0100.1有意でない
E(3水準)2.2921.14516.8有意 ✔
誤差(空列より)0.4160.068
合計30.2017

F分布表より自由度(2, 6)の5%点は F = 5.14、自由度(1, 6)の5%点は F = 5.99 です。 B(焼付温度)・C(焼付時間)・E(塗布厚さ)が有意、A(サプライヤー)・D(前処理)は有意でない結果です。

最適条件の決定と推定

有意な因子について、密着強度が最大になる水準を選びます。

  • B:焼付温度 → 水準3(180℃)が最大(11.60)
  • C:焼付時間 → 水準3(40分)が最大(11.13)
  • E:塗布厚さ → 水準3(40μm)が最大(10.53)

最適条件での予測値は次の式で計算します。\[ \hat{y}_{\text{opt}} = \bar{\bar{y}} + (\bar{y}_{B3} – \bar{\bar{y}}) + (\bar{y}_{C3} – \bar{\bar{y}}) + (\bar{y}_{E3} – \bar{\bar{y}}) \] \[ = 10.47 + (11.60 – 10.47) + (11.13 – 10.47) + (10.53 – 10.47) = 10.47 + 1.13 + 0.66 + 0.06 = \mathbf{12.32} \]

最適条件での予測密着強度は 12.32 N/mm² です。 実際にこの条件で確認実験を行い、予測値と一致するかを検証します。

L18 を使うときの注意点

  • 2水準の列は1列のみ:L18 で2水準として使える列は列1だけ。2水準因子が2つ以上ある場合は、L18 ではなく別の直交表(L36 など)を検討する
  • 交互作用の評価は原則しない:L18 は主効果の推定に特化した計画で、交互作用を正確に評価するには別途計画が必要
  • 確認実験は必ず実施:直交表実験で求めた最適条件は、あくまで推定値。予測値と実測値のずれが大きい場合は、交互作用の影響を疑う
  • 空列は誤差として使う:因子を割り付けない列は分析時に誤差項として活用できるため、あえて空けておくことが多い

まとめ

  • L18 直交表は2水準因子と3水準因子が混在する場合に使う混合水準直交表で、最大8因子を18回の実験で評価できる
  • 2水準因子の主効果は水準平均の差、3水準因子の主効果は水準別平均を比べて「効果の幅」で判断する
  • Excel では AVERAGEIF 関数で水準別平均を計算し、空列の変動を誤差として分散分析を実施する
  • 有意な因子の最適水準を選んで予測値を計算し、確認実験で検証するまでが一連の流れ

直交表への因子割り付けの基礎は2水準直交表(交互作用なし)の記事を参照してください。 2^(k-p)計画との使い分けについては一部実施要因配置実験(2^k-p計画)の設計と解析もあわせて読むと整理しやすくなります。 分散分析の計算手順の詳細はExcelで分散分析を参照してください。

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