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”実験計画法とは”初めての人にも概要をわかりやすく解説

科学的な研究や実験を行う上で、まず理解したいのは「実験計画」と「実験計画法」という二つの概念です。これらは似ているようで実際には異なる意味を持っています。この記事では、数式や細かい技術的な詳細に入る前に、これらの基本的な概念について解説します。

”実験計画法”とは

実験計画法とは、多数の実験条件の組み合わせの中から、一部の組み合わせで実験を行い、最適な条件を見つける手法です。直交表を使用すると、全ての組み合わせを試す必要がなくなります。

実験計画法の目的は、時間や場所、予算などの制約の中で、実験の検出力を最大にすることです。フィッシャーが提唱した反復、無作為化、局所管理の3原則に基づいています。

フィッシャーの3原則

実験計画法の祖であるR.A.フィッシャーは、科学的研究において信頼性の高いデータを収集するための三つの基本原則を提唱しました。

1. 反復の原則(Replication)

データのばらつきを小さくするため、可能な限り多くの実験を行います。例えば、異なる条件下で同じ実験を行うことで、偶然の誤差を最小限に抑えます。反復によってデータのばらつきや外れ値を評価しやすくなります。

具体例
農業の研究で、特定の肥料の効果を評価する際に、異なる地域や季節で繰り返し実験を行うことで、肥料の効果が一貫しているかを確認できます。このように、反復することで、得られたデータの信頼性が向上します。

2. 無作為化の原則(Randomization)

サンプリングや条件設定をランダムに行うことで、系統的な誤差を偶然誤差に変え、系統誤差の影響を最小化し、結果の信頼性を高めることができます。

具体例
例えば、医薬品の効果を調べる臨床試験では、被験者を無作為に治療群と対照群に分けます。これにより、各群における年齢や性別などの影響を均等にし、治療の効果を正確に評価することが可能です。

3. 局所管理の原則(Local Control)

実験規模の拡大を抑えるため、実験をブロックに分けて管理することで、実験条件の均一化を図る方法です。ブロック内で条件を無作為に割り当てることで、ブロック間の変動を抑え、精度の高い結果を得ることができます。

具体例
農業試験で、異なる土壌条件の影響を最小限にするために、農地を小さな区画に分け、それぞれの区画内で肥料の種類をランダムに割り当てます。これにより、各区画内での土壌条件のばらつきを抑え、肥料の効果を正確に評価できます。

フィッシャーの原則の応用:乱解法

フィッシャーの三つの原則を実践することで、実験計画の効率と精度が飛躍的に向上します。

これらの原則を組み合わせた実験デザインとして「乱塊法」があります。乱塊法は、実験全体を無作為化するのではなく、実験をブロックに分け、それぞれのブロック内で無作為化を行う方法です。これにより、環境要因やその他の外部変数の影響を最小限に抑えることができます。

直交表とは

直交表は実験計画法の一環として、多数の実験条件の組み合わせを効率的に選定するための実験方法です。直交表を使うことで、全ての組み合わせを試す必要がなく、一部の組み合わせで十分な情報を得ることができます。

直交表の具体例

例えば、製品の品質管理で、温度、圧力、時間の3つの因子がそれぞれ3つのレベル(例えば、低、中、高)を持つ場合、全ての組み合わせを試すと3×3×3で27通りの実験が必要になります。しかし、直交表を使うと、例えば9通りの実験で各因子の影響を評価することができます。これにより、時間とコストを大幅に削減できます。

直行表のメリット
効率的: 少ない実験回数で多くの情報を得ることができる。
バランスの取れた検証: 全ての因子の影響を均等に評価できる。
簡便な解析: 結果の解析が比較的簡単で、直感的に理解しやすい。

”実験計画”とは

次に、実験計画 についてです。実験計画とは、実験全般をどう進め、結果をどう解析し、次にどう展開するかという計画のことです。実験計画の重要性は、科学的に意味があるかどうかを考えて実験を行わないと、時間と予算を無駄にすることになります。統計学でよく言われる“Garbage in, garbage out”と同じ意味。

実験計画の具体例①|肥料効果の検証

農業分野での実験計画の例として、ある肥料の効果を評価するための実験を考えます。この実験では、異なる肥料の種類とその使用量が作物の収穫量に与える影響を調べます。肥料A、肥料B、肥料Cの3種類と、それぞれの使用量を0kg/ha、50kg/ha、100kg/haの3レベルで設定し、各条件で作物を育てます。

  1. 反復: 各条件下で複数のプロット(例えば、各条件ごとに5つのプロット)を設けて実験を行い、データのばらつきを小さくします。
  2. 無作為化: 各プロットに肥料と使用量の組み合わせを無作為に割り当てることで、系統誤差を最小化します。
  3. 局所管理: 全体の畑をいくつかのブロックに分け、各ブロック内で無作為化を行うことで、土壌や気候の変動を考慮します。

実験結果の解析と仮説検証

実験結果を解析する際には、収穫量のデータを集計し、各肥料と使用量の組み合わせが収穫量に与える影響を統計的に評価します。具体的には、分散分析(ANOVA)を用いて、肥料の種類や使用量の効果を検証します。仮説が検証され、どの肥料が最も効果的かが明らかになります。

▶一元配置分散分析を例題の手順
▶繰り返しのある二元配置分散分析の手順
▶繰り返しのない二元配置分散分析の手順

実験計画の具体例②|新薬開発の検証

新薬の開発において、薬剤Aの効果を検証するための実験を行います。この実験では、薬剤Aを投与する群とプラセボ(偽薬)を投与する群を設け、効果を比較します。各群に50名ずつの被験者を無作為に割り当て、投与前後の症状改善度を測定します。

  1. 反復: 被験者数を多くすることで、データのばらつきを小さくします。
  2. 無作為化: 被験者を無作為に2つの群に割り当て、偏りを最小化します。
  3. 局所管理: 実験場所や環境条件を統一することで、外的要因の影響を抑えます。

実験結果の解析と仮説検証

投与前後の症状改善度を統計的に解析し、薬剤Aの効果を検証します。例えば、t検定を用いて、薬剤A投与群とプラセボ群の間に有意差があるかを確認することで、薬剤Aの有効性が科学的に証明されます。

▶t検定とは?具体例でわかりやすくやり方を解説

実験計画の具体例③|教育方法の検証

教育方法AとBの効果を比較するために、小学校のクラスを対象に実験を行います。各クラスを無作為に2つのグループに分け、一方には教育方法Aを、もう一方には教育方法Bを適用します。学期末にテストを実施し、両グループの成績を比較します。

  1. 反復: 多くのクラスで実験を行い、データの信頼性を高めます。
  2. 無作為化: クラスを無作為に2つのグループに分け、偏りを最小化します。
  3. 局所管理: 学校や学年などのブロックに分けて実験を行い、外的要因の影響を抑えます。

実験結果の解析と仮説検証

テスト結果を統計的に解析し、教育方法AとBの効果をt検定を使って分析することで、どちらの教育方法がより効果的かが明らかになります。

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